
(81)第542号ラグビー早明戦特集号 特別対談!~4年生編 小野史裕主務・國元駿太朗主務~
早大、明大という伝統校で主務を務める小野史裕(スポ4)と國元駿太朗(営4=明大八王子)。チームを支えるために日々邁進(まいしん)する2人にお互いの印象や、主務という立場から見た両チームの分析、早明戦への思いなどについて伺いました! (この取材は10月30日に行われたものです)
――他己紹介をお願いします。
國元(以下、國):早稲田大学主務の小野くんです。真面目そうだなっていう印象を持っていたんですけど、全然そんなこともなく結構砕けた感じで、すごくコミュニケーション能力が高くて、話してて面白い人だなっていう感じですね。彼は学生コーチを兼任していて、この前聞いたのはアップのコーチを担当しながら自分もメンバーに入ったみたいな、人がいなすぎて笛吹きながらラインアウトジャンプをしてたっていうのを聞いて、めっちゃ面白いなと思いました(笑)
小野(以下、小):明治の主務の國元くんで、学生コーチもやっています。いつも試合の時はウォーターをやってるんですけど、ウォーターの時は決まった格好があって、帽子を後ろにかぶってタオルを首に巻いてシャツの中に入れるっていう、本人的には願掛けみたいですね。もうトレードマークで、その姿を見たら遠くから見ても國元だって分かるようになっちゃいました(笑)。話してみたら結構面白い人です。アイデアマンっていうか、喋ってて面白いなと思っています
――最初に出会ったタイミングはいつになりますか。
國:出会いは難しいね。存在自体はホームページを見たりしてたので、こんな人がいるんだとかは知っていました。元々は僕が3年生になった時にジュニア(関東大学ジュニア選手権)のいろいろな調整というか、主務がやる仕事の引き継ぎを体験みたいな感じで担当してたんですけど、そこでちょっと連絡のやり取りをしていて。ただ、実際は僕がその週にコロナになってその仕事を全うできずに終わってしまったんで(笑)
小:そうそう結局國元って誰だよってなってね(笑)
國:なので、ちゃんと連絡を取ったのは今年度の新人早明戦の時。いつも上井草に行く時は観戦部員を自転車で向かわせてたので、今年もいつも通りやりたいと思ってたら意外と厳しいかもしれないみたいな感じになってやり取りをして。多分お互いをちゃんと知ったのはその場所かなと思います
小:ちゃんと喋ったのはそこだね。対面でちゃんと喋ったのは新潟での春の早明戦のファンクションの時。でもあの時は主務同士の会話だったね。お互い大変ですねみたいなこと言って(笑)。ファンクションでラーメンが出たんですけど、早稲田はすぐに帰らなきゃだったので僕は食べられなくて。先に帰ってる僕を尻目に國元がにやにやしながら食べてました(笑)
――出会った頃の印象はありますか。
國:本当に話しやすくて堅苦しい感じもなく、早稲田の主務が気軽に話せる人でよかったと思いました
小:早明戦もそうだし、春秋どっちもいろいろな試合で絶対に当たるので、そういった意味で僕もとっつきやすいやつでよかったなと思いました。やっぱ最初の自転車を置かせてくれっていう電話が軽かったから、もちろん主務同士なのである程度堅い会話もしてますけど、なんか軽いなと思ってました(笑)
國:だって(自転車置かせてもらうの)堅くお願いしたら断られるんじゃないかと思って頼んだから(笑)
小:軽く言ってきたのも戦略だったのね(笑)。まあそんなやり取りがあって、こっちとしてもせっかく同じ学生同士でやり取りするんだし、堅くなってもしょうがないなっていうところはあったので、お互いのニーズがマッチしたというか、とてもいい関係性だと思います
――早大、明大という伝統あるチームで主務を務めることにはどのような思いがありますか。
國:本当に貴重な経験をさせてもらっているなというところはあります。ただ、その中で変な重圧とかは特に感じてなくて、伝統校とか歴史とかそういうのを余計に感じてるわけではなく、本当に目の前のできることをしっかりとやって、それが結果的にチームの勝利だったり、得られるものっていうところにつながっていけばいいなと思って活動しています
小:僕も國元と一緒で、すごく貴重な経験をさせてもらっているなっていうふうには思っていて。伝統と知名度、ラグビーに限った話じゃなくて大学でスポーツをやるっていうところで、一つレベルの違う環境でやらせてもらっているというような自覚はあります。そういったところはもちろん大切にしつつも、國元が言ったように伝統だったり重圧っていうのにとらわれずに、今の早稲田ラグビーをつくっているのは自分たちなので、自分たちがどうしていきたいか、どうなりたいかっていうようなところを意識しながらやることができています
――お互いを漢字一文字で表すとどのような字になりますか。
國:『芯』ですかね。何をするにしても、やっぱり自分の大切にしてることとか、早稲田が大切にしていることとかはすごく意識してるなと思うし、そこの隠れた強い1本の『芯』みたいなところは持ってるのかなっていう印象があるので『芯』という漢字かなと思います
小:『愉』っていう字ですね。國元はとにかく愉しいやつなんです。早明戦を盛り上げるためにこういうことやりたいねみたいな場面でも、ぽんぽんアイデアが出てくるんですよ。そういうところもあって、同じたのしいでも普通の『楽』の方の楽しいじゃないなって。僕のニュアンス的な感じなんですけど、國元のたのしさを表すんだったら愉しいだなと思ったので、僕は『愉』しか思いつかなかったです。言葉にするなら『愉快』なやつですね(笑)
――尊敬している大学の先輩はいらっしゃいますか。
國:昨年度の主務の不京さん(大也・令6営卒)です。中学から一緒でずっと背中を見てきて、すごくストイックだし強い気持ちを持ってるし、行動っていうところでも見せてくれる先輩なので、僕は本当に尊敬しています
小:いろいろな人がいますけど、主務としてっていう観点からだと、僕が1年生の時の代の主務だった森谷隆斗さん(令4商卒)です。1年生と4年生ということもあって、当時は全然喋ってなくてどういう方か知らなかったんですけど、主務になってからお話をさせていただく機会があって。森谷さんの残した引き継ぎの資料だったりとか、そういうところをいろいろ見て、自分がやりたいことやなりたい姿にすごく近いことを体現されてた方なんだなっていうふうなところを感じているので、森谷さんかなと思います
――お互いのチームのいいところ自慢をお願いします。
國:一体感のところかなと思います。やっぱり去年、おととしの先輩方はすごく偉大な方々で、タレント性のある方が多くて。それに比べて自分たちの代はそこまでタレント性がある人が多いわけではなくて、その分しっかりと全員で戦うんだっていうマインドを持って、チーム全体で戦っていくんだっていうところはすごく今年感じています。そういったところは春からどんどんと伸びてきているところだと思うので、それは今年度の明治のさらにいいところにしていきたいところでもありますし、すでにいいところになってきているところかなと思います
小:早稲田のいいところは多様性っていうところだと思っています。早稲田は明治みたいにスポーツ推薦が多くいるチームではなくて。内部の学校だったりとか、一般受験でいろいろなところから来たりとか、長野から3浪して来るような人もいるくらい、本当にいろいろなバックグラウンドを持った選手がたくさんいるっていうところが、すごくチームの特色としてあると思っています。そこって十分強みになり得る特色だと思っていて、特に昨年度はあんまりそういうところにチームづくりの中でフォーカスし切れなかった部分で、下のチームの人たちが閉塞感であったりとか疎外感みたいなものを感じてしまうところがあって。今年になって僕らが特色として持っている多様性を強みに変えていけるように、一人一人が早稲田の部員で、自分たちが早稲田をつくってるんだよっていうようなところを感じられるようなチームづくりを(佐藤)健次(スポ4)と一緒にしてきました。そこがある程度形になっているんじゃないかなと感じているので、早稲田の強みとしては多様性の部分だと思います
――お互いのチームの注目している選手はいますか。
國:本当にいっぱいいますよね。日本代表っていうだけでもう2人いますから。強いて挙げるとするなら、FWは粟飯原くん(謙・スポ3)ですね。超ハードワーカーなイメージがあって、ボールキャリーもスピードありますし、ブレークダウン周りの仕事とかすごくするなっていう印象があって。相手にいたらすごい嫌だなっていうふうに思う選手です。BKは野中くん(健吾・スポ3)かなと。関東ラグビー協会100周年記念試合の時に一緒で、すごくうまいですし、10番も12番もできて、パスもできてキックもできて、その上身長も体重もあるので、早稲田のアタックのキーマンになるかなと僕の中ですごく警戒している選手の1人です
小:僕自身が元々FWの2、3列目の選手だったということもあって、田島貫太郎選手(政経4=東福岡)は注目しています。やっぱりラインアウトとか見ちゃうんですけど、あれだけの身長あったらいいなって、あれだけ僕も身長があったらよかったなって思います。早稲田の選手も田島くんと比べると全然大きい選手はいないので、どう対策しとけばいいんだろうなっていうところで、一つ注目選手を挙げるとしたら彼かなと思います
――過去の早明戦で印象に残っている試合はありますか。
國:2020年1月11日の全国大学選手権(選手権)決勝ですね。当時リアルタイムでは見られなかったんですけど、まず結果を見て一番に驚いて、当時高校生の僕は明治が対抗戦も結構圧勝してたので選手権もいけるだろうって思っていて、負けたのを見て驚きましたし、実際に試合もその後ちゃんと見て、(対抗戦の時とは)もう全然違うチームだなっていう印象を早稲田に受けて。あんな舞台でこういった試合をする両チームは本当にすごいなと思いましたし、大学ラグビーという舞台に興味を持ったタイミングの一つの試合なので、すごく印象深い試合だなと思います
小:僕は大学1年生の時の対抗戦・早明戦です。もちろん早明戦っていうのは一つのターゲットにしているゲームで、チームとしてもすごく一体となって気合を入れて臨んだ試合でしたし、僕にとっては部員として見る初めての早明戦で。そんな中で明治の圧倒的な攻撃力を完璧に封じ込めて、ロースコアで早稲田が競り勝ったっていうような試合で、本当に先輩たちの魂みたいなものを感じる試合。これが早稲田なのかっていうようなところで、 すごく印象に残っています
――早明戦は他の試合とどのような違いがあると思いますか。
國:会場の空気がちょっと違うなっていうところは思っていて、会場も国立競技場なので独特な雰囲気で、言葉では表現するのが難しいんですけど、その独特な緊張感やどきどき感みたいなのは他の試合と違うなと思います
小:僕も会場の独特の緊張感っていうか、注目度も他の試合とは違うなっていうところは試合前から感じます。本当に両校のラグビー部のOB・OGだけじゃなく、大学全体のプライドをかけて戦っているような雰囲気もあったりするので、そこが異様な雰囲気になる一つの要因かなとは思いますね
――100回目の早明戦への率直な気持ちをお聞かせください。
國:本当にこんな体験をさせてもらえるのは僕らの代しかないっていうところは光栄に思います。でも、試合になれば特に100回目というのはあまり意識せずに、しっかり目の前の相手に勝ちに行くってところをフォーカスしてやっていきたいです。そういった場所に立てるありがたさとうれしさっていうのを自分の中でかみしめて、その一瞬一瞬を大切にしていきたいなと思います
小:伝統ある、重みのある早明戦。ただでさえそういった試合で、その上100回目っていうようなところ。巡り合わせでそうなっただけですけれども、やっぱり自分がそういったところで主務という役職を任せてもらっているというところは、非常に光栄に感じてやっているところがあります。ただその反面、國元が言っていたみたいに一つの試合っていうところに関しては、いつも通りというか、選手が100パーセントのパフォーマンスを出せるように調整をして、キックオフの瞬間まで責任を持つっていうところが主務の役割だと思っています。もちろん意気込んでやるところはやりますけれども、第1優先は試合に勝つところにはなるので、そこに関しては変に力まず普段通りやっていきたいなと思います
――今年度の早明戦ではどのような点がパワーアップしたプレーを見せたいですか。
國:チームの強みで挙げた一体感っていうのは、皆さんに感じてほしいなと思います。本当に泥くさいプレーであったり一つのプレーに対する執着、見ている人たちを感動させるようなプレーっていうのは昨年よりもパワーアップできてると思っているので、そういったところはぜひ注目してほしいと思います
小:今年パワーアップしてるのはディフェンスの部分だと思っています。昨年の早明戦は大量得点を取られて、なんとか巻き返したけどやっぱり追い付かず負けてしまったという試合でした。でも、ここまでの対抗戦からもお分かりいただけるかと思うんですけど、ディフェンスっていうところはすごく強化して自信を持っている部分になるので、昨年のように明治にどんどん前に来られるような展開ではなく、しっかり早稲田が前に出て止めて勝利していけるような、そういったゲームにしていきたいと思います
――早明戦に向けて意気込みをお願いします。
國:早稲田はすごく今年いいチームで実際春は負けているので、まずは春のリベンジもそうですし、しっかりと自分たちのやってきたことをその場で出し切って、結果的に勝利っていうところと内容のところもいいものにしていきたいと思います。やっぱり100回目なので、記念試合を勝ちで締められるように頑張っていきたいと思います
小:まずは100回目ということで、観客の皆さんに少しでも楽しんでもらえるように準備もしていますので、ぜひ来てくださいっていうようなところ。あとは試合前後のイベントもそうですけど、何よりも試合の内容がすごく魅力のあるものになることは間違いないので、そこに向かって僕らは全力で準備をしますし、僕らも100回目という節目を勝利で飾れるように、精一杯努力をしていきたいと思っています
――ありがとうございました。
[久保田諒]
◆小野 史裕(おの・ふみひろ)スポ4、本郷高
プライベートでは小野主務、國元主務、北野匠海主務(帝京大)の3人で早明帝主務飲み会を行うことがあるそう。「この前もべろべろになりました(笑)。多分お酒は僕が一番弱いです。國元と北野が元からめっちゃ仲良くて、いつもこっちが寂しくなっちゃうくらい仲良しです(笑)。いつか3人で対談とかやれたら楽しいですね」
◆國元 駿太朗(くにもと・しゅんたろう)営4、明大八王子高
國元主務はお酒を飲んで酔うと楽しくなってしまうそう。「なんかもうよく分からないこと喋り出しちゃいます(笑)。1回眠くなる時期が来てまた戻るみたいな感じで。北野が一番お酒強くて信じられないスピードで空けてくので、それについていこうと思って飲んでたらべろべろになってましたね(笑)」
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