(57)The final showdown ~奪還への戦い~ 西尾太良「個人的にも今までの生活を『奪還』したい」

2024.11.12

 「今年こそ絶対に優勝を取りにいく」。木戸大士郎主将(文4=常翔学園)が今年度のスローガン『奪還』に込めた意味だ。関東大学対抗戦(対抗戦)、そして日本一『奪還』へ。栄光を勝ち取るため闘球へと捧げた学生生活。最後の戦いに向かう4年生に明大での4年間とラストシーズンへの意気込みを伺った。1026日より連載していく。

18回は西尾太良学生S&Cコーチ(文4=城南)のインタビューをお送りします。(この取材は1018日に行われたものです)。

――4年間を振り返るといかがですか。
 「4年間を振り返ると、一般入試で入った学生の中では結構ハードな道を選んだのかなっていう気はします。でもやっぱりこの部活に入らなかったらできなかった経験もたくさんできました」

――入部したきっかけを教えてください。
 「僕は高校時代ラグビーをプレーヤーとしてやっていたので、大学入試で明治大学に入学することになって、高校時代までやっていたラグビーに関わることはやりたいなと思っていました。僕は浪人してるんですけど、昨年度4年生だった渡邉元隆(令6政経卒)とか、2年前に卒業した吉岡汰我(令5農卒)ともともと関わりがあって仲が良くて。せっかく知り合いがいるし、明治のラグビー部って入学する前からすごく強い印象があったので、チャレンジできるならスタッフとしてチャレンジしたいなと思って応募しました」

――入部当初はFWコーチでしたが、FWコーチをやる上で大変だったことを教えてください。
 「僕が今までやってきたラグビーと明治のラグビーはクオリティーが違くて、求められているコーチングが全くできなかったんですよね。FWコーチは1カ月とちょっとしかやってないですけど、FWコーチって選手とコミュニケーションを取るのも結構難しいなと感じていたし、自分のスキルを追い付かせるのがすごく大変でした。ラグビーの弱小校から入って、花園(全国高等学校大会)に出ている選手たちにマッチングさせるのが大変でした」

――S&Cコーチになったきっかけを教えてください。
 「もともと明治には学生のS&Cコーチはいなかったんですけど、神鳥監督(裕之・平9営卒)との面談の中でどういうのに興味があるのか聞かれた時に、ストレングスに少し興味がありますという話をして。その話をした1週間後ぐらいに、神鳥監督から夏合宿から学生S&Cの部門を新しく作って、それの1人目として1回活動してみようかっていう話をいただきました。もともと興味がある分野だったので『お願いします』って言って、1年の夏からS&Cをやっています」

――S&Cコーチの役割を教えてください。
 「簡単に言うとウォーミングアップの部分の主導ですね。トレーニング始まる前のウォーミングアップを担当してて、それで学生S&Cはそのマーカーの設置とかも担当してます。あとはフィットネスですね。シーズン始まるとなかなか出番は少なくなるんですけど、夏合宿前まではすごくたくさん走るので、そういったフィットネスのタイムを計ったり、準備をしたり、選手のディシプリンを見たりっていうのが仕事です。今学生2人体制でやっていて、今は僕の仕事ではないんですけど、GPSもS&Cの仕事です。毎日の練習で選手に着けさせているGPSのデータを抽出する仕事があります。グラウンドの部分はそんな感じで、あとはストレングスのセッション。2時と3時半と6時と8時の4セッションに出て、補助したり大人のS&Cの方の指示に従って指導を行ったり、必要であれば準備をしたりっていう感じです」

――S&Cコーチをやる上で、やりがいに感じる部分を教えてください。
 「2年生の時にフィットネスを吹く機会が多かったんですけど、その時に『太良の笛はやりやすい』って上級生から言ってもらえて、僕に『今日なにやるの』とか聞いてくれて、すごくみんなに信頼してもらってるなっていうのを実感できるのがやりがいです。あとは今リハビリのフィットネスは基本的に僕が見てるんですけど、リハビリ中の選手がどんどんウエートが伸びて成長していく姿を見るのがすごく楽しくて。明治のウエート場って活気があってコミュニケーションもすごく取れるので、ウエート場でしか知れない情報とかも知れて、すごくやりがいはありました(笑)」

――学生スタッフとして大人の方と関わる上で、どのような動きを心掛けていましたか。
 「やっぱり報連相は大事なので、グラウンドセッションは前日までに大人の方にしっかり確認することはマストでしていました。大人の方が求めているクオリティーの準備だったりセッションができるようにしていますし、その日の練習の動画を見て、もうちょっとマーカーの引き方変えればよかったかなとか自分で考えるようにしています。ストレングスの部分もセッションが多い分、クオリティーがすごく大事になると思うので、そういった中で大人のS&Cの方が言っているフォーカスの部分を選手にしっかり守らせるように見ています」

――4年間続けられた原動力を教えてください。
 「あまり4年間続けることに迷いはなくて、みんなから頼ってもらえていたことがうれしくて、部活に行くことが嫌になったことはないです。みんなから信頼されていたことが大きいです」

――一番印象に残っている試合を教えてください。
 「昨年度の(全国大学選手権の)決勝です。負けはしましたけど、雷で中断後も多くの観客の方が残ってくれて、応援していただけたのがうれしかったです。特に劣勢な状況でのスクラムで観客の方から明治コールが起こった際は、国立(国立競技場)は声がグラウンドに集まりやすいので、本当に地鳴りみたいに聞こえます。フィールドで聞いていて鳥肌が立ったし、愛されているチームだなと実感しました」

――改めて西尾学生S&Cコーチにとってスローガンである『奪還』の意味はどのようなものですか。
 「やっぱり明治はチャンピオンチームであるべきだと思いますし、そういった意味では初心に戻るじゃないですけど、日本一を目指すっていうことが当たり前になっていた部分を改めてスローガンにしているので、すごく初心に戻らされて、頑張ろうと思えるスローガンです。あと個人的には、実は現在、国指定の難病を患ってしまって、入院生活を送っていて、帝京ジュニア戦以降チームに帯同できていない生活が続いています。ラストイヤーの大事な時期にこんなことになるなんて正直困惑してしまってるんですけど、まずは今後続いていく早明戦、大学選手権に向けて、チームに戻って今まで通りの生活を個人的にも『奪還』したいなという気持ちがとても強いです。次の帝京戦までには退院はできないですけど、一時外出の許可はいただけたので少しずつ前へ進んでいる実感もあります。そういった意味で、チーム的にも個人的にもこの『奪還』という言葉が持つ意味がとても重たいです」

――ありがとうございました。

[森口絵美理]

◆西尾 太良(にしお・たろう)文4、城南高
オフには1人で海外旅行に行くほどアウトドアな西尾学生S&Cコーチ! 「韓国、台湾とか、アメリカも1人で行きました。LAからラスベガスの夜行バスでは、リュックを抱えて居眠りしていたら、外国人の方の手がリュックに伸びていて、イヤホンが取られていました(笑)。あそこを生き抜いた自信で、帰ってきた時はとても自信満々で部活に戻りました(笑)」西尾学生S&Cコーチがまた元気に海外旅行を楽しめるよう、明スポ一同応援しております!