
田村真優 夏に笑顔を
田村真優(営1=目黒日大)は明大水泳部唯一の女子ルーキー。両親の意向で始めた水泳に今もなお全力を注ぐ彼女の原動力は、大切な人が喜んでくれることへのうれしさにあった。辛酸をなめ続けた中高時代。苦い思い出ばかりの夏を塗り替えるべく今日も泳ぎ続ける。
涙にぬれた夏の思い出
幼少期は極度の人見知りで両親のそばを離れることができなかった。そんな性格を変えるために訪れたスイミングスクールから、田村の水泳人生は幕を開けた。当時のコーチに言われるがまま選手育成コースに所属し、小学1年生で競技として水泳を始める。物心ついた時から練習に励んできた田村は、中高時代に波乱万丈な夏を過ごした。
緊張のあまり全国への切符を逃した中学1年時。翌年度には念願かなって全国大会に出場するも、初めての大舞台に圧倒され、実力を発揮できずに終わった。中学3年間の集大成としてメダル獲得が現実味を帯びていた中学最後の大会はコロナ禍で中止に。気持ち新たに迎えた高校最初のインターハイでは、会場で足を滑らせ、靭帯(じんたい)を負傷。万全な状態で挑んだだけに、その夏が白紙となった絶望感は大きいものだった。災難は翌年度も続いた。「水泳人生の中で一番うれしかった」と語るジュニアパンパシフィック選手権の派遣選手団への選抜。しかし、派遣直前に新型コロナウイルス感染症にかかり、やっとの思いでつかみとった海外遠征の機会を自分のものにすることはできなかった。高校最後の1年はスランプに陥り、最も得意とする50メートル自由形のレースでまさかの予選落ち。その他のレースも取るに足らない結果となった。水泳に捧げた6年間、夏の女神が田村に微笑むことはなかった。
苦しさよりもうれしさ
勢いに陰りが出た昨年度は特につらい日々を過ごしたが、大学入学を機に水泳をやめる選択肢はみじんもなかった。「試合で結果が出る達成感が練習の苦しさを上回っている気がする。何より、結果が出ると両親やコーチが喜んでくれるのがうれしい」と話すその目には、水泳への愛と自身を支えてくれる存在への感謝があった。
見据える先は夏の笑顔
中高時代に悔しい思いをし続けてきた田村にとって、今年度の夏は何としても満足のいく結果を出したいところ。「目標は出場する2種目で決勝に残ることだが、それ以上に笑顔で終わることが一番」と日本学生選手権への意気込みを語った。緊張、ケガ、病気、スランプと試練の数だけ強くなったはずだ。くしゃっと笑う笑顔が印象的な田村。この笑顔を夏の終わりに見せてくれることを期待したい。
[寺井和奏]
◆田村 真優(たむら・まゆ)東京都出身。営1、目黒日大。高校から学校の水泳部に所属しているが、練習は学校外で行っており、学校練に憧れがある。162㌢。
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