泰地陽詩 誓いを胸に世界女王へ 

2024.10.07

 漆黒の射撃スーツに身を包み、鋭いまなざしで的を狙う。泰地陽詩(商1=城南)は高校射撃の絶対女王。「ここしかない」と決めた明大進学後の初戦では、1年生ながら準優勝を勝ち取る大活躍を見せる。そんな彼女の強みは不撓不屈の精神にあった。

飛躍の幕開け
 射撃がお家芸の徳島県で生まれ育ち、競技経験者の姉の影響で高校1年にして初めて銃を握る。「1日でも早く勝つ」とハイスピードでトップまで駆け上がった。
 優勝街道の始発点は高校2年時の全国高校総合体育大会。徳島県高等学校総合体育大会での悔しい準優勝から得た優勝への強い気持ちを糧に挑んだ。自身初の全国大会であり、緊張で体が強張った。雰囲気も異なり、他の選手全員が強く見える。しかし彼女は強かった。少しの心臓の鼓動で影響が出る競技にもかかわらず、「ここで負けるわけにはいかない」とプレッシャーをかけて挑み、高校射撃の頂点に。射撃を始めてたった1年のことだった。この優勝経験は彼女に火をつけることとなる。

女王の精神論
 それ以降の高校時代の大会はほとんど制覇してきた。エンジン全開で進むが、試合を重ねるごとにのしかかるのは1位の座を守り続ける強者しか味わうことのない重圧。顧問からは「誰でもずっと勝ち続けることは難しい。勝ちにこだわりすぎることはない」と温かい言葉を掛けられるも、初めて銃を手にした瞬間に心に刻んだ「これで1番になる」という誓いに支えられ、強気でいることができた。「その時点で誰が強いかは毎度の試合で決まる。自分が1番だと証明するのは優勝することでしかできない」。トップであり続けることが彼女の定義である。常に自分自身を見つめ、自問自答を繰り返すことで進化を遂げてきた。日々の努力はもちろん、このマインドこそ女王たるゆえんであった。

明大を越えて
 徳島で生まれ、射撃に出会う。きっかけを与えてもらってから一心不乱に1位を追い求めてきた。パリ五輪代表・野畑美咲(商3=由布)ら実力者を擁する明大に入学し「さらに自分を高められる環境になった」と語る。「先輩方を追いかけるばかりではなくて、ちゃんと競える人になりたい」と気合い十分だ。
 目の前の試合を着実に自分のものにし、その先に目指すのは4年後のロサンゼルス五輪。高校射撃界の女王が射抜くのは世界女王の座だ。

[杉本菜緒]

泰地陽詩(たいちひなた)商1、徳島県立城南高。雪の妖精・シマエナガ愛好家でもあり、自室はシマエナガグッズで埋め尽くされているそう。155センチ。