(12)シーズン直前インタビュー 大島光翔

 長いオフシーズンを越え、ついにシーズンが開幕する。新たに明大の一員として氷上を舞う選手もいれば、今シーズンで引退となる選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。本インタビューではそれぞれの選手の思いをお届けする。

(この取材は9月19日に行われたものです)

第8回は大島光翔主将(政経4=立教新座)のインタビューです。

――現在のスケートの調子はいかがでしょうか。
 「体もいい感じに仕上がってきていて、本当にベストな状況でブロック(東京選手権)に臨めるのではないかなというふうに思います」

――今はどのような練習に取り組んでいらっしゃいますか。
 「今シーズンはミスなく安定した演技を見せられたらいいなと思うので、やはりプログラムの完成度を上げるところを意識して練習しています」

――SP(ショートプログラム)は『Flamenco』で、村元哉中さんの振り付けだと伺いました。
 「今まで自分がやったことのない曲調という感じで、自分が曲を選んだというよりも、村元哉中さんから見て自分に似合う曲だったり、自分も『かっこいい曲を演じたい』というふうに伝えた上で選んでいただいた曲なので、今シーズンのSPは一つ思い入れのあるプログラムになるのではないかなと思っています」

――異国情緒あふれるアップテンポな曲ですが、表現面で力を入れている部分はありますか。
 「今回のこのSPに関してはかっこいいをテーマに自分がやりたかったので、かっこよくというのを本当に第一の目標というか、それをテーマにSPを滑っています。力強く男らしいかっこいい姿を見せられるようなプログラムになったらいいなと思っています」

――サマーカップでは昨シーズンのFS(フリースケーティング)の衣装を着用されていましたが、衣装の方はいかがですか。
 「ブロックでお披露目になると思うので、そこは楽しみにしていただければいいのではないかなと思います」

――FSの『デスペラード』はお父様の淳さんがプロスケーターの時に最後のアイスショーで滑っていた曲だと伺いました。思い入れはございますか。
 「やはり、この曲は自分にとっても父親にとっても本当に特別な曲で、いつかは滑ろうと心の中では決めていましたが、どこかやはり照れくささもあって。なかなか滑る機会がなかったのですが、今シーズンは思い切って、学生最後でもありますし、自分にとっても節目のシーズンになるのかなというふうにも思っていて。でも、そういうわけというよりかは、父親に恩返しじゃないですけど、父親に一度はこの曲で滑っている姿を見せたかったのでそういう気持ちでこの曲を選びました」

――淳さんは大島選手にとってどのような存在ですか。
 「自分がスケートを始めるにあたっての原点でありますし、今も自分の一番目標とする選手像やスケーター像というのは、父親の姿です。やはりそういう存在が身近にいてくださったからこそ、ずっと支えてくださったからこそ、競技者としてここまで続けてこられたところもありますし、本当に父に憧れて今も頑張っているので、本当に自分の一番の憧れの存在という感じですかね」

――具体的にどのような部分に憧れているか教えてください。
 「見ている人を笑顔にしたり幸せな気持ちにさせるような、本当に誰が見ても、何がそうさせるのか分からないんですけど、人の心を動かす力のある演技をする方だと僕は思っています。見ていて元気をもらえる、そんなスケーターだなというふうに思っています」

――FSは紫色の衣装を着用していましたが、衣装のこだわりはありますか。
 「それこそ父親が最後に滑っていたプリンスアイスワールドでこのナンバーを滑っていた時の衣装が紫だったので、オマージュじゃないですけど、それがあったので紫色にしました」、

――SP、FSともに大人っぽいプログラムという印象を受けましたが、何か意識していることはありますか。
 「昨シーズンは、SPは全力でキャッチーな、誰にでも分かるような分かりやすいプログラムでしたが、今シーズンは先ほども言った通り、かっこいいをテーマに男らしさであったり、大人っぽさもそうですけど、技術とその雰囲気、かっこよさで勝負していけるような、そんなプログラムになればなというふうに思っています」

――サマーカップは総合5位でしたが、その結果についていかがですか。
 「正直夏の試合ということもあり、プログラムにもまだ慣れていないところが多々あったりして。少し不安を抱えた中での試合というか、初戦なので自分はどのぐらい今できるんだろう、と力量が分かった試合でもあったんですけれど、ひとまず自分がその時にできる一番いい演技ができたのではないかなと思っています。昨年よりも点数は上がっていますし、今も昨年よりは仕上がりがいい状態で来ているんじゃないかなと思っています」

――現在の演技の方の仕上がりは何パーセントですか。
 「ブロックの時に100%になるような、そんな状態で仕上げていければなというふうに思っているので。ブラッシュアップしていく部分はまだ多々ありますが、今できる一番いい状態というのをブロックに持っていこうかなというふうに思います」

――ブロックでの順位や点数について具体的な目標はありますか。
 「昨年はブロックから全日本(全日本選手権)までだんだん調子を上げることができなかったので、今シーズンはもうブロックから100%の演技をしたいなと思っています。200点超えるのはマストだと思っていますし、SPは75点、FSは145点。そこを目標にして頑張っていきたいなと思っています」

――4回転ジャンプの今の調子はいかがですか。
 「4回転も練習は普通に継続していて。本当にこのシーズン中にやはり口だけではなくて実行できたらいいなというふうに思っていますし、今の環境でも上位で戦っていくには絶対に必要な武器になってくると思うので、そこを自分のエレメンツの目標としては一番に重きを置いて練習しています」

――6月に出演したアイスショー『氷艶2024ー十字星のキセキー』では2月に『滑走屋』で共演した髙橋大輔さんともう一度同じ舞台に立ちました。
 「本当に『滑走屋』同様に、髙橋大輔さんの近くで過ごせたその1カ月間というか、リハーサル含めた本番までの1カ月間はスケーターとしての本気な部分の髙橋さんをあれだけ間近で見られて、自分のモチベーションにもつながりました。その他にもリハーサル期間中に現役のみの練習時間を設けてくださって、髙橋さんもその貸し切りに乗っていただいて。そこで本当に楽しみながらも、自分の限界にチャレンジしていく姿がありました。リハーサルがすごく大変で体力がしんどい中でも、自分たちの前では常に笑顔で本当に楽しそうにスケートを滑る姿を見て、改めてこういうスケーターになりたいなという目標というか、そういう姿が見えました」

――1カ月間のリハーサルや練習も含めて、特に印象に残っていることや思い出はありますか。
 「本番は横浜アリーナという大きな舞台で滑らせていただいて。これまでに埼玉スーパーアリーナもありましたけど、横浜アリーナという舞台で滑らせていただくことができて、あの幕から出てきた時にたくさんのお客さんがいる光景というのは自分の中でもすごく思い出に残っています」

――今シーズンは初のプログラム披露が浪速スケートフェスティバルでした。
 「そちらで初披露となって、正直あの時は作ってから1週間、2週間とかで本当に詰め詰めでのお披露目でしたけれども、お客さんと、試合やアイスショーよりも近い距離で本当にリンクサイドの壁を1枚挟んだだけの状態でお客さんの方々に見てもらえたので、そういう部分ではなかなか経験できないところでの演技披露で、参加させていただいて本当に感謝しかないです」

――明大の合宿はいかがでしたか。
 「今シーズンは自分が主将ということもあり、本当に責任感もありながら、でも最後の明治合宿ということで、切磋琢磨(せっさたくま)できる仲間たちも増えて、年々レベルも上がっていっていますし。やはり何よりも今シーズンは自分が主将という立場でまとめ上げなければいけないプレッシャーもありますが、本当に後輩一人一人が頼もしくていい子たちばかりなので、オンの時はしっかりみんなで練習してお互い高め合っています。オフになったらみんなで仲良く遊ぶじゃないですけど、オフの時間もみんなでよく楽しめた、団結力がまた一段と上がった合宿になったかなと感じます」

――合宿中、主将として部員に声を掛けたりしていましたか。
 「積極的に部員の全員と話をするようには心がけていたというか、コミュニケーションを取るのが元々好きなので、取っていきたいなというふうに思って参加していて。個人競技なので試合も違えばリンクも違うし、それこそ女子の選手は試合も時間や日にちが違うので、リンクも違ったらなかなか会う機会はないので、こういう機会が本当にいい機会だと思って、コミュニケーションをたくさん取った合宿でした」

――合宿中、特に思い出に残っていることはありますか。
 「やはり部員みんなで滑った氷の上での時間というのは、本当にいい思い出というか、忘れない時間になったなというふうに思っていて。今年も部員がすごく増えて、これまでは2日目からは男女別々で練習していたので氷上での時間がかぶることはなかったんですけど、初日の最初の一つ目の貸し切りでは、男女みんなで部員全員が一緒に滑った貸し切りでした。なかなかそんな大人数で滑ることもないんですけど、みんなが明治ジャージーを着て練習に取り組んでいる姿を見て『ここで自分が最年長か』という感慨深いものも少しありましたし、すごく楽しい姿をたくさん見られたので、僕は本当にそこが一番思い出に残っています」

――昨年度は明大合宿以外に中野先生(中野園子さん)の合宿に参加されていましたが、今年度はいかがでしたか。
 「今年度も中野先生の合宿に参加させていただいて、いい刺激をもらえる合宿になりました」

――合宿中特に力を入れていたことを教えてください。
 「スケーティング技術の向上であったり、滑りの面で本当にすごくいい勉強になりました。坂本花織(シスメックス)選手をはじめとした、エッジワークの深い、スケートが上手な選手が多々集まっていた合宿なので、そういういいところを吸収して、スケーティング技術を向上させるという部分が自分はメインだったかなという合宿です」

――学生生活で最後の夏休みだと思いますが、夏の思い出はありますか。
 「過去イチスケート漬けだったんじゃないかなというか、たくさんスケートしたなと、今振り返ってみるとそういう思い出がすごく多いです」

――毎日リンクに向かって、氷の上に乗ってという感じでしたか。
 「そうですね。今自分の父親のチームも、大学生の男の子がすごく増えていて。毎日リンクに行ってもみんなが仲良くしていて、遊んでいるわけではないですけど、みんなで話したりするのがやはり楽しくて。本当に毎日リンクに行くのが一つ自分の中で楽しみになっているので普段の練習から頑張れていますし、それに加えて明大の合宿であったり、サマーカップであったり、中野先生の合宿であったりと合宿漬けの毎日でもあったので、本当に毎日忙しく楽しく、なんかあっという間に終わってしまった夏休みだなというふうに感じています」

――今シーズンは主将として、そして学生ラストシーズンになると思いますが、意気込みはいかがですか。
 「学生最後だからという意気込みよりも、本当に自分は今までのシーズンと同じように全力で自分の持っている力を100%出し切ることができたらいいなと思っているので、本当に一試合一試合全力で、自分の持ち味や自分の力を最大限発揮できるような試合をたくさんできたらいいなと思っています」

――最後にファンの方へメッセージをお願いします。
 「いつも応援ありがとうございます。今シーズンはかっこいい自分を見せられるような、そんなシーズンになればいいなというふうに思っているので、かっこいい自分に少し期待をして、試合を楽しみにしていただければなと思います。今シーズンも応援よろしくお願いします!」

――ありがとうございました。

[髙橋未羽]

(写真は本人提供)