(9)シーズン直前インタビュー 住吉りをん

 長いオフシーズンを越え、ついにシーズンが開幕する。新たに明大の一員として氷上を舞う選手もいれば、今シーズンで引退となる選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。本インタビューではそれぞれの選手の思いをお届けする。

(この取材は9月7日に行われたものです)

第5回は住吉りをん(商3=駒場学園)のインタビューです。

— —夏休みも終盤に差し掛かってきましたが振り返っていかがですか。
 「8月は忙し過ぎて、試合が三つと合宿も三つあったので気付いたら9月でした(笑)」

— —どこの合宿に参加しましたか。
 「岡島先生(岡島功治先生)の合宿と紀子先生(佐藤紀子先生)に付いていった合宿、明治合宿がありました」

— —それぞれどのようなことをしましたか。
 「ジャンプの跳び方を改善したりとか、陸でのことは普段みんなではやらないんですけど、それをトレーニングとしてやったり、普段と違うことができたかなという気がします」

— —陸でのトレーニングはどのようなことをしましたか。
 「体幹トレーニングをやったりとかお尻とか内腿の筋トレだったり、持久力を付けるために坂を走ったりなどしました(持久走は得意ですか。)そんなに苦手じゃないんですけど、今年はとにかく暑さにやられそうでつらかったです」

— —7月6日には全日本代表合宿にも参加されていたと思いますが、それぞれの合宿を通して新たな発見などはありましたか。
 「今シーズンはスピンが難しくなったりとか、ステップはルールが変わったわけではないんですけど、そのあたりのレベルが取れていけるように合宿を通してかなり詰めていけたんじゃないかなという気がします」

— —明治合宿ではどのような練習をされましたか。
 「今年もとにかく曲掛けという感じで、高地なので酸素がかなり薄くてFS(フリースケーティング)がかなりきつかったです」

— —チームの雰囲気はいかがですか。
 「光翔くん(大島光翔主将・政経4=立教新座)の雰囲気が伝わっていく感じで、今までで一番明るい雰囲気なんじゃないかなという気がしています」

— —合宿では何が一番楽しかったですか。
 「やっぱり花火かな。花火が一番楽しかったんですけど、大縄の勝負もやってそれが楽しかったです。2チームに分かれて、長く跳んでいたチームが勝ちっていうやつで結構きつかったんですけど楽しかったです(笑)。自分たちのチームが先攻で67回跳んで結構限界まで跳んだんですよ。そしたら向こうのチームにいた駿くん(佐藤駿・政経3=埼玉栄)が40回くらいで変なタイミングで跳んで引っ掛かって本当にみんな『え?』って感じで、見てるみんなで大爆笑してました」

— —夏休みはフィギュアスケート中心でプライベートの時間はあまり取れませんでしたか。
 「そうですね。プライベートの時間は全然なかったんですけど、岡島チームの合宿でも花火したり、明治合宿でも花火したり、神宮の花火大会も夜練が終わった直後に見れたりとか、満喫はできてないですけど夏らしいことはできたかなと思います」

— —合宿や実戦続きでしたが、疲労などはありませんか。
 「この1週間は岡島先生がチェコに行っていることもあって自主練が中心なので、割と落としめで疲労を抜く1週間にしています。だいぶ疲労も抜けてきて調子が戻ってきたかなという気がしています」

— —春学期の学業面を振り返ってみていかがですか。
 「あ、フル単でした(笑)。テストも頑張ったし、秋はなかなか行けないかなと思ったので、春のうちに自分がしたいと思うことをゼミの中で役割をもらってやって、自分なりに楽しみつつできたかなと思います」

— —パリ五輪ライフル射撃代表の野畑美咲選手(商3=由布)と同じゼミだと思いますが、パリ五輪はテレビで観戦しましたか。
 「美咲の射撃はテレビでやってなかったので見れなかったんですけど、結果を追って見てました。他の競技だとスケートボードの堀米さんがすごいと思って見てました。あのメンタルが欲しいなと思いました」

— —フィギュアスケートの北京冬季五輪のメダル授与式もあり、先輩の樋口新葉選手(令5商卒・現ノエビア)がメダルを授与されていましたが、改めてご自身の五輪に対する思いを教えてください。
 「北京でやっと身近に感じたオリンピックというものが、『絶対に自分が行くんだぞ』とより鮮明に目指すものになったなという気がします」

— —夏は四つの大会に出場しましたが振り返ってみていかがですか。
 「点数が上がったり下がったりはあるんですけど、全体的にはシーズンに向けて直すべきところを一つ一つ修正できているのかなと思っていて、それでもまだまだレベルも取り切れていないですし、ジャンプに関しても試合での安定感をシーズンでは出さないといけないと思うので、シーズンに向けてもう少し詰めないといけないなと思います」

— —SP(ショートプログラム)の見どころを教えてください。
 「SPは『Un homme qui me plaît』という曲で、見どころというとルッツの前から曲が盛り上がっていって、イナバウアーのあたりから力強さというのが増していく印象になるので、失恋の痛みのようなものを経験しつつも前を向く力強さを見てもらいたいです」

— —SPのプログラムは映画で使用されている曲だと思いますが、その映画は全て見ましたか。 
 「まだ見ていないです。見ようかなと思いつつミーシャ(ミーシャ・ジー)は映画がどうというより私自身を表してほしいと言っているので、迷っています。見てそっちのイメージに持っていかれてしまうのも違うし、けど少し自分の中に映画の印象が入っていいのかなとも思います」

— —FSの見どころを教えてください。
 「FSは『Adiemus』という曲で、四つの音楽に分かれているので、それぞれの演じ分けを見てもらいながら、最後のステップシークエンスが見どころになっているので、ここで植物が成長していって恵みの雨を受けて空に伸びていく様子を見てもらいたいなと思います」

— —気に入っている振り付けはありますか。
 「たくさんあるんですけど、SPは冒頭で左手を持っていくような振り付けがあるんですけど、左手の先に想い人がいるんですけど見つからない、追えないという物悲しさみたいなところでこの曲をすごく表しているなと思います。FSはステップの中の後半に入ってすぐの両手を上げて恵みの雨を全身で受けている振り付けがあるんですけど、そこがプログラムのテーマに合っているのですごく好きです」

— —FSのプログラムはSNS等でファンの方からの反響が多くありましたが、ご自身ではいかがですか。
 「前回のFSもそうだったんですけど、今回もシェイリーン(シェイリーン・ボーン)から送られてきた時はどんな感じなんだろうと想像がつかなかったんですけど、いざ作ってみて皆さんにお披露目した時に『すごくいい』と言ってもらえて、曲だったり衣装だったり表現する上ですごく自分も難しいんですけど、それが合ってると言ってもらえるのがすごくうれしいし、自分自身も今シーズンやっていく自信になります」

— —プログラムは身体になじんできましたか。
 「だいぶなじんできたかなと思います。今年は早いうちからプログラムを作って滑り込んできたので、既になじんできたし完成型が見えてきたかなと思います」

— —東京選手権(東京ブロック)に向けてどのような練習をされていますか。 
 「もう一度シェイリーンのブラッシュアップがあるので、細かい部分を見て詰めていけたらなと思っていて、ジャンプに関しても東京夏季大会の時に集中力が切れてしまうという問題があったので、そこを修正して最後まで集中を切らすことなく一つ一つにしっかり集中を持っていけるように東京ブロックまでにそこを修正できたらなと思います」

— —メンタル面というのは今シーズンも強化していきたいポイントになりますか。
 「練習での安定感はあるという自覚があるので、本番で考え過ぎてしまうのが自分の悪い癖だと思うので、あんまり考え過ぎずにできるようにシンプルな頭の使い方を意識するようにしています」

— —ジャンプの調子自体はいかがですか。
 「先週まで調子が悪い状態だったんですけど、だいぶ身体の疲労が抜けて動くようになってきているので、来週岡島先生が帰ってきて上げていけたらいいのかなと思っています。東京ブロックは4回転でいきたいなと思っていて、そこで決められるように上げていって、そこでもう一度考えたいなと思います」

— —今シーズン新たに挑戦していきたいことはありますか。
 「今年はスピードを出して勢いのあるスケートがしたいと思っていますしコーチ陣からも言われています。4回転含め全てのジャンプと全てのつなぎでスピードを出すようにオフシーズンから意識していますが、そこが試合になって縮こまるところがあるのでそこを修正していければ、去年よりもパワーとスピード感ある演技ができると思います。あとはそれぞれのエレメンツの加点の幅を上げるということを意識していて、ジャンプも降りるだけじゃなくて、きれいに流れて、スピンも早かったり独創性のあるように意識していて、加点をもっと取れるように意識したことで良くなってきた実感があるのでそこをもっと上げたいなと思っています」

 — —グランプリシリーズGPシリーズ)には2戦出場予定ですがそこに向けての意気込みをお願いします。
 「昨年もおととしも楽しんで滑ることができたので今年も2戦とも楽しんで、自分自身海外での試合が好きなので、海外の試合の雰囲気を楽しみつつ自分のできる演技を海外の人に見てもらう場にできたらなと思います」

— —昨シーズンはGPファイナルに出場しましたが、今シーズンもそこが目標になりますか。
 「もちろん目指していますし、(GPシリーズでは)おととしが3位、3位、去年が3位、2位という結果なので、今年は一戦でも優勝して、ファイナルは去年は出るだけになってしまったんですけど、今年はしっかり結果を残すというのを目標にします」

— —東京夏季大会のインタビューで「全日本にピークを合わせたい」と言っていましたが、全日本選手権(全日本)にピークを合わせるにあたって、これまでと変えようと思っている部分はありますか。
 「昨年はどの試合も考え過ぎる、頑張り過ぎるというところで燃え尽きるところがあったので、自分自身に対してプレッシャーを与え過ぎずに心に余裕を持っていけたら、全日本までしっかり(メンタル面が)持つのかなと思います」

— —今シーズンはどんなシーズンにしたいですか。
 「『パワフルになったね』と言われたいなと思っていて、メンタル面もそうですし、演技自体もスピード感あるパワフルな演技をするというのを目標に、力強さが見えるシーズンにしたいです」

— —今シーズンの目標をお願いします。
 「世界選手権に出るためにというのが全てになってくるので、全日本でどっちの演技も笑顔で終えたいなと思います」

— —東京ブロックに向けて意気込みをお願いします。
 「夏季フィギュア(東京夏季大会)では自分自身調子が悪いと思っていた割に、しっかり集中して演技をすることができました。東京ブロックは疲労が抜けると思うのでしっかり調子を上げて、集中力が最後まで持つように調整して、強いメンバーが出ると思うんですけど優勝して次につながる納得のいく演技ができればなと思います」

— —ファンの方にメッセージをお願いします。
 「いつも応援ありがとうございます。今シーズンは世界選手権に出場することを目標に、力強さを見ている人にも伝わる演技ができればなと思うので、今シーズンも応援よろしくお願いします」

――ありがとうございました。

[冨川航平]

(写真は本人提供)