(8)シーズン直前インタビュー 江川マリア

 長いオフシーズンを越え、ついにシーズンが開幕する。新たに明大の一員として氷上を舞う選手もいれば、今シーズンで引退となる選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。本インタビューではそれぞれの選手の思いをお届けする。

(このインタビューは9月5日に行われたものです)

第4回は江川マリア(政経3=香椎)のインタビューです。

――オフシーズンをどのように過ごしたか教えていただけますか。
 「国体(国民体育大会)が昨シーズン最後の大会で、その後すぐ滑走屋のアイスショーがあって明法オンアイスがあって、その後がオフという感じだったんですけど、少し福岡に帰ったり、あとは新しいFS(フリースケーティング)の曲を作ったりで、それ以外は練習という感じだったかなと。私はあまり1週間滑らないだとか、そういう長い休みはあまり取りたくないタイプなので、なんだかんだ滑ってはいたかなという感じです」

――強化選手に選ばれて迎えた今シーズンですが、発表された時の感想を教えてください。
 「純粋に、やっとそこの位置に行けたというか。ずっと全日本での目標として目指していたので、本当に少しほっとしたという気持ちが大きかったです」

――周囲の反応はいかがでしたか。
 「MFアカデミーの子たちはもうすでに強化選手の子も多かったので、もうやっとだねみたいな感じで。例えば週末とかに大阪にあるNTC(ナショナルトレーニングセンター)に練習に行けたりするんですけど『そこに一緒に練習しに行けるね』とか、そういう話をしました」

――実際に強化選手として施設を利用しましたか。
 「オフシーズンはそんなに何回も使うわけじゃないんですけど、シーズン入ってからは月に1回ぐらいは使っているかなという感じです。一番は少人数で滑ることができるので、たくさん曲かけをできるというのが大きいかなというのと、あとはレベルの高い選手というか、本当にトップの選手と一緒に練習ができて、それを目の前で見て感じるものがたくさんあるので、すごくいい練習になっているなというのは感じます」

――ここまでいくつか試合を重ねてきて、どんな感触が得られましたか。
 「アクアカップは初戦という形だったので、まあまあまあという感じだったんですけど、今年はFSだけ変更というか、新しいプログラムを作って、すごくいいプログラムを宮本賢二先生に作っていただいたんですけど、自分の中でまだちゃんと完成できていないというか、試合でちゃんと完成した演技ができてないというのを感じているので、それを 本戦のブロック(東京選手権)とか東日本(東日本選手権)、全日本(全日本選手権)へ向けてどんどん完成度を高めたいという思いが強いかなと思います」

――東京選手権(東京ブロック)はホームリンクでの試合となりますが、先日の夏季フィギュアでも滑ってみてどんな感覚でしたか。
 「どういう雰囲気なんだろうというのがあまり想像ついてなかったんですけど、試合の雰囲気としては試合なのに景色は練習と同じというのが少し変な感じがして、不思議な感じだったんですけど、氷は一緒なので、すごくそこは安心してブロックに挑めるかなと思います」

――最近の調子はいかがですか。
 「調子は結構上がってきていて、今年は結構早い段階から、特にFSとかは完成できているように感じているので、もっと細かい部分だったり、まだやらないといけないこともいっぱいあるなというふうには思います」

――昨シーズン終わった時点で、課題に感じていたところはありますか。
 「昨シーズンはFSで後半に体力がなくなってきたところでジャンプが乱れてしまうというのがすごく課題でした。今年はその課題は結構改善されていると思っていて、後半はすごく安定してきているので、それをもっとシーズンまでに良くしていきたいかなという部分があります」

――昨シーズンからここまでで成長できたところを挙げるとすればどこですか。
 「FSのジャンプ構成自体は変わってないんですけど、一つ一つのジャンプの確率というものはすごく良くて、それが後半の安定感とかにもつながっているかなというのは感じています」

――夏休みの間は合宿などに行きましたか。
 「合宿自体は明治合宿しか行ってないです。それ以外はずっとホームリンクで練習していたという感じです」

――今年の明治合宿はいかがでしたか。
 「今年は本当に去年とも全然違う雰囲気で。毎年雰囲気が違うんですけど、すごく先輩後輩関係なくみんな仲いいというのが一番大きくて、それですごく有意義な練習にもなったし、めちゃくちゃ楽しかったというのが一番の感想かなと」

――今年もリレーはありましたか。
 「はい、やりました。自分は負けました(笑)。でも人数が結構今年は多かったので、その分すごく楽しいリレーになりました」

――夏休みに練習以外で遊びに行ったりなどはしましたか。
 「花火大会に行ったりはしたんですけど、今年の夏は福岡に帰省できなかったのが若干心残りかなというのはあるんですけど、練習を頑張ろうというので、こっちにずっと居ました」

――シーズン開始までに一番重点的に練習したことを教えてください。
 「FSを新しく作ったので、それを滑り慣れるだけじゃなくて、自分の中でちゃんとジャンプも入るようにして、最後のステップもしっかり体が動く状態まで持っていきたかったので、体力というのは一番強化した部分なんじゃないかなと思います」

――今シーズンのプログラムについて、SP(ショートプログラム)を継続した理由を教えていただけますか。

 「SPを継続した理由は、もう少し滑り込めるというか、いいプログラムにできると思ったのと、あとはやはり自分の中でトー(ループ)トー(ループ)の連続ジャンプは武器ではあるんですけども、フリップトー(ループ)とかルッツトー(ループ)の方が難易度が高くて点数も高いジャンプだと思うので、それを組み込みたいという思いがあって、ジャンプ構成を上げるためにも継続という形にしました」

――ジャンプ構成以外にも変更点はありますか。
 「振りのブラッシュアップはもちろん鈴木明子先生にしてもらったりしたので、去年とはまた少し違う動きも入ってるかなと思います」

――練習で苦労したところはどこですか。
 「実際今もSPはフリップトー(ループ)を入れているんですけど、まだ安定しているかと言われたらそうではないので、そこが苦労しているのと、あとスピンのルールが変わったので、そこは結構何大会かやってきても少し苦戦しているかなと」

――こだわったところや見どころを教えてください。
 「ステップはやはり2シーズン目ということで、滑り慣れているのも踊り慣れているのもあって体に染みついていると思うので、本当に途切れのない動きが自分でできるようになっているなと感じているので、そこを見ていただきたいです。あとはアクセルの前のジャンプのつなぎとかも去年より難しいものにしたり、ブラッシュアップもしたので、そういう細かい部分を見てほしいかなと思います」

――FSについて変更した理由を教えていただけますか。
 「一番は、去年の全日本でFSはいい演技ができたというのもあって、コーチと相談して新しいプログラムを作ろうと決めました」

――『トゥーランドット』を選曲した理由や経緯は何ですか。
 「まず自分が最初に先生にオペラの曲をやりたいとずっと言っていて、いろんな曲を探していたんですけど、その中で『トゥーランドット』も候補にあって。 いろんな曲を聴いた中で『これが一番いいんじゃない』と先生が言ってくださったのと、自分もしっくりくるというか、滑っているのが想像できるプログラムでもあったので『トゥーランドット』に決めました』

――これまで多くの選手が滑ってきたプログラムですが、意識したりするところはありますか。
 「本当にたくさんのスケーターが滑ってきているプログラムなので、そのプログラムに自分も恥じないようにというのもありますし、今までの『トゥーランドット』を使ってきた選手のプログラムの映像を見ることも結構あって、それを見て自分なりに曲の解釈を深めるというのはよくしています」

――振り付けでこだわったところはありますか。
 「やはり一番こだわったのはステップかなと思っています。ステップは去年もFSの一番最後に入っていて、最後の盛り上げパートみたいなパートで滑っていたんですけど、今年も構成的には同じで、 最後にステップが組み込まれています。曲の尺の中でステップの時間自体もすごく長いですし、リンク全体を使うステップになっていると思うので、本当に四方八方のお客さんに自分の強いメッセージとかが伝わるような、そんなステップにしたいなと思っています」

――衣装のこだわりを教えてください。
 「今までは結構淡い色ばかり使ってきていたので、 濃い色の衣装というのはほとんど使ってこなかったんですけど、すごくそれが新鮮というのもありますし、あと自分でこういうふうにしたいと衣装さんにお願いしたので、衣装の生地感とか形とか、すごく全部お気に入りという感じです」

――FSの練習で苦労したところはありますか。
 「スローのパートは結構得意だったりするんですけど、力強い最初の部分とか、あと最後のラストスパートの部分というのが、どうしても少しスローの感じを抜け出せないまま滑ってしまうので、そこのめりはりをつけるのに今も苦戦しているのはあります」

――SP、FSそれぞれ今の仕上がりはどれぐらいですか。
 「SPは振り自体は継続なので問題ないんですけど、ジャンプ構成を上げるという面で、ジャンプの入る入らないを考慮すると、70〜75%ぐらいかなと思っていて。FSはすごくプログラムとして形にはなっているので80%ぐらいで、去年のこの時期よりは高いんじゃないかなとは思います」

――今シーズンのご自身の強みはどこだと思いますか。
 「今シーズンは結構シーズンオフ中にジャンプの跳び方を見直したりしていて、そういった部分が安定感につながっているのかなとは思うので、これからのシーズンもっともっと、まずは安定した演技をするというのを強みにしてやっていきたいなと思っています」

――今シーズン結果を残していくために、ご自身に必要だと思うものはありますか。
 「スケーティングとか、そういう振りの部分とかは年々、勝手に成長すると言ったら言い方が難しいんですけど、毎日練習してきているので成長する部分だと思うんですけど、やはりジャンプが決まらないと、表現という部分も評価されにくいと思うので、まずはジャンプとかスピンとか、そういうエレメンツをもう一度見直していきたいというところがあります」

――大学に入って3シーズン目になりますが、例年と今年で何か感覚に違いはありますか。
 「大学1年生の時から2年生に上がる時とかは、できないところからできるようになるみたいな感じで、本当に成長の幅が広かったと思うんですけど、どんどん成長していくにつれて幅もある意味少し狭くなりますし、やはりそれよりもう一つ段階が上がるというか、成長のハードルが高くなるなと自分で感覚的に感じる部分があるので、感じながらも今年もしっかり成長できるように頑張りたいという思いです」

――シーズンを前にした今の心境として、緊張とワクワクしている気持ちではどちらが大きいですか。
 「あまり緊張というよりは、その分練習してきているので、ワクワクという気持ちが強いかなと思います」

――大学生活も折り返しですが、忙しさは変わらずですか。
 「そうですね。でも1、2年生の時よりは全然楽になったなというのが一番大きくて。言語の授業を全部2年生の時に取り終えたので、1限とかがないというのと、和泉校舎から駿河台になって家から随分近くなったので、それも少し楽になったかなと思います」

――ゼミには入りましたか。
 「はい。ゼミも始まって、後期はどれぐらい行けるか分からないんですけど、また新しい感じの授業というか、少人数でやるので、初めての感じで楽しかったです」

――最近ハマっていることや、スケート以外の日々の楽しみはありますか。
 「YouTubeを見るのが好きなんですけど、最近おすすめによくギャルの子のYouTuberが出てきて、それを見てたらなんかどんどん勧めてくるんですよ。それでギャルばかり見ています」

――ギャルメイクをしてみたりはするんですか。
 「いや、そういうわけではないんですけど。なんて言うんだろう、なんかみんな持っているマインドが強いじゃないですか。それがなんかもうめっちゃハマって、いっぱい見ています。そのマインドを見習いたいなと思ってます」

――スケート関係なく、大学生のうちにやっておきたいことはありますか。
 「大学生のうちは大学でしか出会えない友達がたくさんいると思うので、もっともっと学校などでたくさんの人と関わりたいなという気持ちはあります」

――昨シーズンに初挑戦したアイスショーにはまた出演したいですか。
 「そうですね。経験してみて、本当に試合と全く違う感覚で、またアイスショーの舞台に呼んでいただけるように頑張りたいと思ったので、また声が掛かればぜひ出演したいなと思います」

――今シーズンの目標と意気込みを教えていただけますか。
 「今シーズンは絶対に国際大会に出たいという思いが強いので、まずはそこが一番大きな目標です。そのために去年よりも絶対に成長したと自分も思えるし、周りも思ってくださるぐらい一つ一つの結果に満足せずに、シーズン最後まで頑張りたいです」

――最後に応援してくださる方々に向けてコメントをお願いします。
 「いつも応援ありがとうございます。 今シーズンは強化選手になったということで、去年よりもっといい自分をお見せしたいという気持ちがすごく強いので、去年の自分に勝てるように今年も頑張ります。応援よろしくお願いします」

――ありがとうございました。

[増田杏]

(写真は本人提供)