
(3)秋季リーグ戦開幕前インタビュー(前編)/櫻井亮監督
昨年度の関東学生1部秋季リーグ戦を3位で終えた明治大学グリフィンズ。創部90周年の今秋、伝統を背負い、甲子園ボウル優勝へと挑む。本特集では、櫻井亮監督と4名の選手のインタビューを前・中・後編にわたってお送りする。
前編は櫻井亮監督のインタビューです。(この取材は8月25日にZOOMで行われたものです)
――まずこのオープン戦を振り返っていかがでしたか。
「部員には経験がない子の方が多いので、やはり毎年春になるとデプス(ポジション毎の選手層)が下がってしまうというか、試合経験をそもそも積もうという子が多くいたところも実際あったのかなと思います。ユニットとしてまだ出来上がっていないところもあった中で、今年は幹部と春先から調整をしつつ強豪校さんと組ませていただくことが非常に多かったんですけれども、そういった相手に対してしっかりと勝ちを狙いにいきながら、勝ちが収められなかった試合も何個かありますが、まず試合経験を積む。そうして高校から実績がある部員の子たちとも一緒に戦うことができたのは、本番の秋に向けてつなぐことができたのかなと。とはいえ、勝てない試合、あと1点というところで負けてしまうようなルーツボールの試合もありましたので、そこは詰めの甘さというか、勝ち切ることができなかったところはチームとして秋に向けて明らかになった課題でもあるので、引き続き処置しないといけないのかなと思っています」
――ロースコア試合展開ということで、キッキングの重要性が増してくると考えます。キッカーの近藤倫選手(農4=桐光学園)に対して期待する役割はなんでしょうか。
「常日頃から、近藤に限らずですが、学生には1プレーの重み、1秒の重み、1ヤードの重み、1点の重み、本当に細かい、紙一重の差だと思うのですが、そこを詰め切ることが大事だよということはチーム全体として話をしています。そういった中で、近藤のキックによって3点なのか1点なのかというところで決まる試合もこれからいっぱい出てくると思いますが、彼はもう非常に気持ち、メンタルの強い子なので、自分が決めてやると当たり前に思ってくれています。 あとは、試合会場でどういった形で結果として出るかというのは、自分自身の日々の私生活も含めての取り組みの結果だと思うので、そこはちゃんとするようにという話をしています」
――オープン戦では、これまでケガにより出場経験が少なかったRB#25井上太陽選手(総合4=鎌倉学園)の活躍もありました。他の選手からも期待の声が上がっていましたが、監督から見て井上選手の活躍に対してはどのように評価されていますか。
「元々同期のスポーツ推薦で箕面自由学園から来ているRB#34廣長晃太郎副将(商4)がランニングバックとして居る中で、 彼は一般入部で入ってきてくれました。高校の時から選抜にも選ばれている優秀な選手ですが、去年まではケガをしていたので、(RBでは)#21高橋周平(文3=足立学園)と廣長の2枚看板でした。今年は彼が逆に言えば、廣長を超えて、なんなら超えているかもしれないぐらいの子なのですが、本当にグリフィンズの代表でもありますし、関東を代表するランニングバックとして、関東、関西でしっかりと戦えるランニングバックになってもらいたいし、なれる人間だと思っています」
――オープン戦では、細かなミスで勝敗が決まってしまう部分があったとの声がありました。チームとしてそういった基本技術の部分で取り組まれていることは何かございますか。
「本当に細かい部分のミスは今日の練習でも出てしまっているぐらいなのですが、やはりチームとしては笛が鳴ってから笛が鳴り終わるまで、スタートからフィニッシュというのは、 本当に常に徹底して声をかけています。そういったところをチームとしてまず風土を作り上げ、また一人一人がプレーをする時にその取り組みが出せるかというのは、常日頃から自分自身の意識によると思っています。常に声をかけあって動けるように。結局それが詰め切れているチームが、 やはり今、日本一が続いている関西学院大学さんだと思います。そういったところのスタンダード、当たり前を上げるというところを、本当に今日もですし、高校野球の甲子園を見ていても、大会中でどんどん能力をアップさせている子はたくさんいますし。学生スポーツというのは本当にそれぐらい振れ幅があるものだと思うので、12月中旬の甲子園ボウルまで、一人一人が成長し続けてほしいという話はしています。本当はミスしたら罰ゲームして走らせるとかもあるんですけど(笑)、そういった罰で直せるものでもないと思いますので。気持ちの部分からしっかり持って、一人一人の当たり前、気にしなくてもできるぐらいのことにしなければいけないと思うので、そこを常に今も話しています」
――この秋、ディフェンス陣に期待するのはどういうところになるでしょうか。
「冒頭もお伝えした通り、スターティングメンバーを見た時にもそうだと思うんですけれど、去年までのメンバーとガラッと変わっているポジションがあります。特にディフェンスバックとディフェンスラインですかね。本当にスタメンのメンバーが変わっていますので、しっかりと目の前の相手に対して一対一で勝つと。そして、ポジションとしても勝つと。最後チームとして勝つといったところは、しっかりと一人一人が考えて取り組んでほしいと思っています」
――攻勢では『ランの明治』というところで、前出の廣長選手をはじめRBが重要な立場を占めてくると思います。チームカラーとして、ランプレーを中心にというのは基本的には変わらないお考えでしょうか。
「正直僕らの時代というのは、今の『ショットガン』という、QBの人が後ろに少し下がってプレーというのはあまりなくて『セットバック』というのが非常に多かったんですね。でも逆に言えば、相手ディフェンスから見ると、もうほぼランプレーが来るという中でランを出すというのが明治大学のオフェンスだったんです。やはりそこに関しては今、色々な本当にマルチなベースの形になっていますけれど、やはり明大としては、ランニングプレーが一番のキーだと思っています。先日他界された野崎総監督が本当に常々僕に仰っていたのは「相手がランと分かっていてもランで出すんだ」、「ランと分かられていても、ランを止められちゃいけないんだ」と。「ランニングバックはキャリーしたらタッチダウンしなきゃいけない。ファーストダウンを取って喜んでいるのではなくて、タッチダウンまで持っていくのが明治のランニングバックだ」ってことを仰っていましたので、そこは本当に、常に廣長や井上、周平とかに話しています。明治大学のランニングバックというのは、関東だけじゃなくて日本でもトップクラスのユニットでいてほしいと本当に思っていますので、そういったランニングバックになってもらいたいと思っていますし、なれる人間だと思っています」
――経験を積む春というお話もありました。この秋は本格的に、下級生の力が必要になってくる場面も増えてくるのでしょうか。
「あると思っています。ですが、やはりグラウンドに出たら学年なんか関係ないと思うので、本当に明治大学 、グリフィンズの代表としてグラウンドに立っているという自覚を持って目の前の相手に対して立ち向かってもらいたいと思っています。そこは相手が強い弱いとか色々あるとは思うんですけれども、八幡山で培っている練習と、八幡山で培っている自分たちの力を試合会場で相手に対してぶつけるだけだと思うんで、相手に合わせず、明治大学のオフェンス、ディフェンス、キッキングをやってもらいたいです」
――オープン戦が終了し、LB#4深尾徹主将(政経4=啓明学院)の振る舞いであったり、チームの雰囲気に変化はございましたか。
「元々彼はあまり口数の多い選手ではなくて、逆に言うとプレーで背中で引っ張るようなタイプだと思うんですけれども、練習前、練習後のグラウンドで学生たちの前に立って話す言葉にも非常に気持ちが入っていますし、やはりあいつ自身も勝ちたいんだな、と。元々関西学院大学に行ける人間であった(啓明学院は関西学院大学の附属校であるため)のに、明治大学を選んで、同期の子たちがみんな関学に行っている中で、彼はうちのラインバッカーの#32石井凪斗(政経4=啓明学院)とともに2人で一緒に来てくれました。なので甲子園球場で関西学院大学さんと試合をやれるような代になりたいと本当に思っていますし、なるべきだと思っているので、あいつを甲子園で胴上げしてあげたいという思いでいます」
――オープン戦では、僅差の試合展開が目立っていたと思います。リーグ戦方式が変わり、関東から3チームが出場できる状況になりましたが、学生日本一を目指すにあたってキーポイントとなるのはどういうところでしょうか。
「3校出させていただけることについては、非常にチャンスが広がりましたし、本当に楽しみな部分ではあるんですけれども、リーグ戦の日程がタイトになったりしている部分などで『戦い続けること』が必要であると思います。負けてもチャンスはあるということにはなるんですが、しっかりと勝ち続けるチームのマインドというのは持ち続けたいなと。今日、学生にも話したんですけど『勝ちたい』とか『勝とう』とかじゃなくて『勝つ』。本当に言葉の使い方ですけれども、願望とか願いではなくて、自分たちが勝つべくして勝つチームとして試合に臨んで、勝つと。本当にそういう気持ち、心技体も含めて、明治大学グリフィンズとして、一体となって戦っていくべきだというところは伝えました。それが最終的に、全国大学選手権にもつながってくると思います」
――ありがとうございました。
[松下日軌]
※写真は本人提供
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