
(6)パリ五輪ライフル射撃日本代表・野畑美咲/明大スポーツ第538号特別インタビュー②
4年に一度の世界最大のスポーツの祭典・パリ五輪の開幕まで残りわずか。本記事では紙面に載せ切れなかった野畑美咲選手(商3=由布)のインタビューを掲載します。
(この取材は7月1日に行われたものです)
――高校から競技を始めたとのことですが、中学校までは何のスポーツをされていましたか。
「幼稚園でテニス、小学校でバレーボール、中学校で卓球をやっていました」
――五輪を意識し始めたのはいつ頃ですか。
「高校3年生の頃に初めてエジプトで海外試合に行ったんですね。そこでやはり世界を肌で感じて、オリンピックを目標にしました」
――その時の結果や具体的に何を感じられたか教えてください。
「結果はもう本当にだめだった気がします。やはり周りも言ってくださったのですが、経験が必要だと思いました」
――恩師である礒部直樹氏からメダルを狙うこと以外に何かご指導していただいたことはありますか。
「精神的なことで私が結構不安に思うことがありました。大学に入学して1年生の頃は本当に点数がすごく下がってしまって、多分環境とか自分の練習時間を確保できなかったことが要因だと思うのですが、その不安を礒部さんに電話でご相談したら『誰でもジャンプするときは一度沈んでから頂点に到達する』ということを言われました。『今はその頂点に行くための沈んでいる時期だから大丈夫だよ』と言われて、そこからそういう考え方もあるのだなというふうに思い、徐々に(調子が)戻ってきました」
――離れているご両親とは頻繁に連絡を取っていますか。
「あんまりないですね。両親は多分私のこと気にかけてくれてあんまり連絡をしないと思うので、こっちから連絡するという感じです」
――大会が終わったらしたいことはありますか。
「すごく今ホームシックになっていて、もうずっと帰れていないので、五輪が終わって帰省期間があるので、そこで地元を楽しみたいなと思います」
――友人などから五輪出場内定が決定した際に何か声を掛けられましたか。
「ゼミの子はすごくみんな応援してくれていて、ゼミのグループでは報告はしました。あと他の友達もLINEや電話をしてくれて、すごく応援してくれています。大学にはあまり練習でいっぱいいっぱいで行けていないので、直接会ってはないです」
――ご両親からは具体的にどんなメッセージをもらいましたか。
「家族一人一人に電話したのですが、母は電話した時に泣いていて、父は本当にリアクションなかったですね。今まで、銃をもう一丁買ったりコート買ったり、すごく金銭的な面でもメンタル的な面でもサポートしていただいたので、報告ができてよかったなと思います」
――大学時代に注目されるようになって、試合などで緊張はありましたか。
「そこが一番苦労したというか、すごくつらかった思いはあります。緊張で一時期トリガーを引くのが怖くなってしまって、試合中に外してしまうんじゃないかと悪い考えばかり浮かんでいました。現コーチのウーヨンコーチに話をしたら、韓国はやればできるみたいな考えなんですよ。だからポジティブというか。最終的に解決策を探すのは自分自身だったかなと思います」
――トリガーが引けなかったのはどれくらいの期間でしたか。
「もう結構長い時間だったのですが、だいたい半年くらいです。去年とかですね。ずっと悪かったわけではなくて、たまに良くて悪くて波みたいなものがあったのですが、今は落ち着いているかなと思います」
――高校1年時に競技を始めてわずか5年で五輪出場という形になりましたが、ご自身としてはいかがですか。
「自分ではあんまりすごくないと思っていますね。今まで国際試合でメダルを取ったのがジュニアの試合でしかなくて、シニアはないので、まだ自分がすごいとは思わないです」
――ライフル射撃との出会いについて改めて振り返っていかがですか。
「そこがなければ今ここにもいませんし、海外にこんなにいっぱい行けると思っていなかったので、すごくいい出会いだなと思います」
――射撃競技の魅力は何でしょうか。
「0.1点で順位が決まったり、本当に少しの差で結果が大きく変わる競技だと思います。考え方とかがすぐに点数に出るので、そこが難しいところであり、魅力だと思っています」
――キム・ウーヨンコーチはどんなコーチですか。
「本当に私はすごく尊敬するコーチで、日本であまりメジャーなスポーツではないと思いますが、日本にない技術を持っていると思います。指導は厳しいです。国際試合であまり良くない点数が出た時は、試合が終わってからすぐに(練習の)スケジュールを作るんですね。そこから休むスキを与えずにすぐ練習に取りかかる。でもすごく人柄が良くて、やはり1人で韓国から日本に来て、言語も違いますしコミュニケーションをすごく大事にしている人なのだなと思います」
――公開練習の終わりにも少しお話しされていましたが、どのような声を掛けられましたか。
「私はすごく緊張して欲が出てしまうというような弱さがあると思うのですが、そこを出さずに本番に挑むようにというふうに声を掛けられました」
――明大を背負って出場されるということで、改めて意気込みをお願いします。
「明治大学に入っていろいろな人と出会えたからこそ、五輪に出場できたと思います。まずはゼミのみんなや友達にいい報告ができるように頑張りたいなと思います」
――ありがとうございました。
[射撃担当一同]
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