(1)開志国際高・富樫英樹総監督 特別インタビュー

 第47回李相佰(リ・ソウハク)盃日・韓大学代表競技大会(以下、李相佰盃)では中心選手として躍動した、武藤俊太朗(政経2=開志国際)。高校時代に輝かしい成績を残し、明大入学後も世界経験を多く積むなど順調にステップアップしている。そんな武藤を開志国際高で指導した、富樫英樹総監督にお話を伺った。(※写真は本人提供です)

――高校入学時の武藤選手の印象を教えてください。
 「新潟県出身で中学時代から見ていました。おとなしい子という印象を受けました。入学してからもその印象は変わらなくて、感情を表に出さない印象でした。(3年間ずっとそうでしたか)そうですね。3年間クールな感じでしたね」

――ずばり一言で表すとどういった選手でしょうか。
 「『オールラウンダー』ですね」

――オールラウンダーということに関して詳しくお聞かせください。
 「身長190センチなので、大きくもなく小さくもない。プレーもドリブルがめちゃくちゃうまいわけでもないけど、下手なわけでもない。3Pシューターというわけでもないけど、シュートも入る。ドライブが得意でもないけど、ドライブもできるしパスもできる。満遍なく全部できるけどスペシャルがない。万能な選手だから監督さんからすると使いやすい選手です。リバウンドも絡んでくれるのでチームとしてはとても重宝する感じです」

――その中でも1番の強みはどこだと思われますか。
 「高校3年間の中で彼は世代別日本代表にも入っているような選手なんですよ。でもチーム(開志国際高)でエースとして扱っていたわけでもなかったです。泥くさいことをしっかりできて、スコアに表れないこともしっかりできるのが彼の特徴、いい選手としてのポイントです。中学から来た時には、1年目なんか本当にリングにも向かなくていつも横向いてる選手でした。『お前はリングが背中にあるのか』っていうくらいでした。引っ込み思案っていうんですかね。自分がない選手だったのでそれからすればずいぶん成長したという感じはします」

――泥くささはどういった点で見られましたか。
 「やはりディフェンスとリバウンド。オフェンスは数字とかに表れてきますけど、やはりディフェンスリバウンド、オフェンスリバンウンド。大きいわけでもないのですが、本当にチームのために貢献してくれるような選手でした。特に3年目はそれを感じました」

――3年冬のウィンターカップでは全国優勝を達成しました。その時の武藤選手はいかがでしたか。
 「うちには結構いい選手、得点できる選手がいました。その中でも得点もできるし、オフェンスリバンウンドだったり、ディフェンスの中心となってあらゆるところを守っていたイメージがありますね。縁の下の力持ちではないけどチームに欠かせない存在でした」

(写真:高校時代の武藤)※本人提供

――世代別代表でもスターター起用され、中心選手として活躍できる要因は何だと思われますか。
 「先ほども話しましたけども、監督にとっては使いやすい選手です。なぜかと言うと、ミスが少ない。リバウンドにも絡んでくれるし、ディフェンスもしっかりやってくれるし、シュートも下手なわけでもない。やはりそういうところは監督さんたちの信頼を得ているんだと思います。あとは積極性がほしいですね」

――積極性という点でどういうところに期待されていますか。
 「僕はもっとやってもいいかなと。ミスを若干怖がっているんですよ。まだ若いのでミスしてもいいからチャレンジしてほしい部分はいっぱいありました。(ミスというのは)ターンオーバーを怖がっていて。でもミスが少ないので監督さんは使いやすいんですよね」

――武藤選手に特に意識して指導された点はありますか。
 「やはり積極性に欠ける選手だったので『リングにもっとアタックしろよ』と言い続けてきましたね。あとは身体能力もあるし、リバウンドに絡んでくれるし、本当にチームとしては頼りになる選手でした。そんなに目立つわけでもないですが、チームにとっては欠かせない存在です」

――高校卒業されてから大学に進学されて成長したと思われる点はありますか。
 「今のところはそんなにないですね(笑)。あのままの感じでね。今2年生ですよね。先ほども言ったように、確かにターンオーバーはダメなんですけれども、もっともっと積極性を出して、自分で仕掛ける選手に成長してくれることを期待しています」

――おとなしめの性格だったということですが、主将になった経緯を教えてください。
 「新聞に載るのでなんともですけども、あまりキャプテンシーを取れる選手がいなかったので武藤に、というのも事実なので。半分はキャプテンをすることによってもっと積極性が出てきたり、リーダーシップが出てくることを期待していました。ですけど、なかなか性格を大きく変えるっていうことができなかったですね。もうこれから20歳になるので、大人になったら自分を出してほしいなという思いです」

――キャプテンシーという点ですが、それは声出しなどでしょうか。
 「声出しもそうですし、コートに立ってからもチームを背中で引っ張っていったり、プレーで引っ張ったり、そういう存在感をもっとゲームに出してほしいです。オフコートでも練習でもやってくれることを期待しています。プロに入って活躍するためにはそういうのも大事になってくると思います」

――李相佰盃では、高校時代同期の介川アンソニー翔選手(専大)、境アリーム選手(白鷗大)と共にプレーしました。3人含めて期待していることはありますか。 
 「3人とも2年生から選ばれてゲームにしっかり絡んでいるんですよ。それが一番びっくりしたことですね。 あの3人で大学の先発でゲームに出られるということは、若干日本のバスケ界心配ですけれども(笑)。3人が中心になって出るのであれば、ぜひその期待に応えてほしいなと思いますし、もっと積極性を出してやってほしいと思います」

(写真:後列左から武藤、介川、境)
(写真:大学代表で共にプレーした3選手。試合後の様子)

――明大と開志国際高との関係についてですが、武藤選手の1学年上には白澤朗選手(国際3=開志国際)、1学年下には澤田竜馬選手(政経1=開志国際)、フリッシュニコラス聖選手(政経1=開志国際)も在籍しています。期待していることはありますか。
 「明治さんとは、白澤くんから縁があって3年連続ですね。明治大学さんは1部リーグにはいますけども、1部の上位になれるように、4人でいい意味で変えながら大学のトップの方にチームを押し上げてほしいと思っています。4人には相当期待しています」

(写真:相手と競る白澤)
(写真:ドリブルする澤田)
(写真:チームメートとコミュニケーションを取るフリッシュ)

――高校時代も代表の方でプレーされていました。高校でのプレーと代表でのその間の調整などという点はどうご覧になっていましたか。
 「やはり代表では海外経験も積めるのでいい経験になってきます。しかし開志国際のチームの役割と代表のチームの役割が違ったので、そこは本人には言いながら指導していきました。彼は順応性も高いですし、ちゃんと見極めてやってくれました」

――日本代表第1次強化合宿にも参加しています。エールを送られるならどういう言葉を掛けられますか
 「大学2年生で代表の若手合宿に選ばれるなんていうのは私も想像もしていなかったです。いいチャンスだと思って、いろんなところから吸収してほしい。高校生と大学生が少し、あとBリーガーばかりで海外経験している選手もいます。その中でいいものを吸収して、願わくば代表を目指して頑張ってほしいですし、やはりせっかく入った明治大学さんを大学の上位に上げられるような選手になってほしいと期待しています」

――代表ではどういったプレーが求められると思われますか。
 「代表では多分SG(シューティングガード)だと思いますので、もっとハンドリングというボールを扱う技術を高めたり、ドライブすること。3Pシュートをもっと多く。あとは海外の選手を守れるというイメージ。この3点だと思いますので、しっかり体を作って、心もつくって成長してほしいというふうに思います」

――大学入学後、武藤選手とお話しする機会などはありましたか。
 「あまりなかったですね。李相佰盃も見に行ったんですけども、なかなか話す機会がなかったので。僕が見に行っているゲームだとは知っていたので、気合が入ったのかなっていう感じはしますね。(何戦目を見に行かれましたか)3戦目ですね。ヘッドコーチに聞いたら1番いい試合だったそうで、1番いい試合しか見ていないですね(笑)」

(写真:大学代表でも安定感を見せた武藤)

――話は変わるのですが、富樫監督がお考えになる理想のバスケ、理想の展開などを教えてください。
 「開志国際は高校生らしく。ディフェンスを頑張って、走る。人が見ていて楽しいバスケをしたいというのがまず原点にありますし、そうするためには人に好かれるチーム、人に好かれる選手を目指そうということです。やはりオフコートもしっかりやっていこうということです。高校生なので当たり前ですけども、日々の生活が一番大切です。日本のバスケはどうしても身長が足りないというのは明確なので、やはり同じようにディフェンスを頑張って走る。スピードのミスマッチを活かしたバスケで、見ている人が楽しめるような展開を今後もやっていけたらと思います」

――A代表に求めるバスケはありますか。
 「代表の方は、これからパリ五輪があります。代表戦もこの前見ていたら、サイズがないと思うので、オールコートでディフェンスを頑張って、走り負けない40分の体力が必要だと思います。あとはシュート力。日本はシュート力を上げていかないといけないと思います。そこを本当に大学生も含めて頑張ってほしいと思います」

――大学バスケの位置付けや、求めるものはありますか。
 「大学生も存在感を出してもらって、人が見ていて楽しいバスケ。一生懸命やっている姿には人それぞれに感動や勇気を与えてくれるので、学生らしく一生懸命やってほしいです。もうただそれだけです」

(写真:シュートを狙う武藤)

――改めてになりますが、武藤選手の今後に期待することをお願いします。
 「明治大学さんに入学したので、ぜひ明治大学さんのためになるような選手になってほしいです。結果的に求められるとすれば、明治大学さんを少しでも上位へ押し上げていく、 これを期待したいと思っています。バスケのみならず練習でもオフコートでも存在感を発揮して、チームの中心となって活躍してほしいと思います」

――ありがとうございました。

[橋本太陽]