(32)シーズン後インタビュー 大島光翔

 今シーズンも銀盤を彩った選手たち。日本学生氷上選手権(インカレ)では惜しくも2年連続のアベック優勝は逃したものの、チーム力は健在。各自の目標に向けて、チーム一丸となって一冬を戦い抜いた。本記事ではシーズン後の選手たちの声をお届けする。
(この取材は3月5日に行われたものです)

第10回は大島光翔(政経4=立教新座)のインタビューです。

――今シーズンを振り返っていかがですか。
 「今シーズンは、自分がシーズン最初に思い描いていたような順調なシーズンではなかったです。それでもプログラムの内容的にも、今まで挑戦したことのなかったジャンルの曲だったり、振り付けに挑戦できたのは、自分の成長につながったシーズンだったんじゃないかなと思います」

――実際に思い描いていたシーズンというのはどのようなものでしたか。
 「まずは全日本選手権(以下、全日本)に向けて調整して、全日本で12番以内、強化選手に入るというのを目標に去年の終わりから1年間頑張ってきたので、その成績とはかけ離れた成績になってしまったというのが一番悔しいという感じです」

――全日本は総合22位でした。この結果はご自身でどのように受け止めていますか。
 「今回は4回目の全日本だったんですけど、やはりSP(ショートプログラム)で毎回二つほどミスが出てしまうというのが自分の弱さだなという風に感じていて。そのトラウマというか、SPの苦手意識というのが今年も顕著に出てしまって、SPで遅れてしまった形になって、FS(フリースケーティング)の演技は悪いものではなかったなと感じているんですけど、点数も順位も結果として全然伴っていなかったので、そこはすごく悔しいの一言に尽きます」

――全日本のFSでは4回転に挑戦しましたが、手応えはいかがでしたか。
 「挑戦することは本当に誰でもできることなので、本番でも挑戦したんですけど、やはり締めることができなくて、抜けてしまったというのは本当に最悪の結果だったと思いますし、あれをやるならやらなかった方が良かったなという風に反省しています」

――その後に行われた日本学生氷上選手権(以下、インカレ)ではSPで75.98点。総合では4位という結果になりましたが、いかがですか。
 「そこで全日本の悔しい思いというか、自分の中にあった有耶無耶(うやむや)というのを晴らすような演技ができたというのはありますし、SP、FSともに自己ベストに近い点数を出して、総合でも自己ベストを出すことができたので、本当に全日本のリベンジじゃないですけど、少し遅くなってしまいましたが、自分の実力を発揮できたいい試合だったのかなと思います」

――インカレでは演技の他にもアフロやうちわを使った応援も話題になりました。どのような気持ちで応援していましたか。
 「どのような気持ちというよりかは、本当にみんなの滑りが僕は大好きで、みんなの滑りをいちファンとして心の底から応援していただけなので、本当に頑張ってほしい、ノーミスの演技をしてほしいという一心で応援していました」

――今シーズンは夏のげんさんサマーカップから始まったシーズンとなりました。1年を通しての調子はいかがでしたか。
 「夏に入って予期せぬケガで動けない期間が少しあって予期せぬ休養という感じだったので、シーズン直前だったというのもあって、自分の中で調整には苦労したんですが、東京選手権(以下、ブロック)、東日本選手権(以下、東日本)とだんだん調子を上げることはできていて。でもやはり一シーズンで見てみたときにブロック、東日本、全日本というところで点数的には変わらなかったですし、去年と比べても全て下がっているので、本当に調整不足というか、自分の実力を発揮できなかったので、調整不足という言葉が一番合うかなというシーズンでした」

――夏場のケガで2週間リンクに上がれない期間があったと伺いました。その休養期間中のモチベーションはいかがでしたか。
 「合宿の期間中のケガだったので、合宿を通していろいろな選手と触れ合う機会があって、自分のモチベーション的にもすごく高い状態でのケガだったので、自分は本当に動きたくてしょうがないとうずうずしていました。動きたくても動けないという、もどかしい時が続きました」

――リンクに戻る際に怖くなったりすることはなかったですか。
 「正直ないと言えば嘘になるというか、自分では意識していなかったんですけど、潜在的にジャンプを跳ぶ直前だったりするときにフラッシュバックする部分があったりしたのは事実です」

――今シーズンのSPではスーパーマリオブラザースの曲を使用し、全日本では地上波で放送され、話題となりました。
 「結構自分としてもチャレンジ、挑戦的な内容のSPで。本当に誰が見ても分かりやすいプログラムだなと思っていました。やはりテレビ、地上波でスケートを見る方全員がスケートのファンとか、ずっとスケート見てますという人ばかりではないと思うので、スケートを初めて見た人にも分かりやすいプログラムで自分のコンセプトが伝わればいいなという身で踊っていて。それで全日本が終わった後、やはり学校の友達だったり、普段はスケートに関わっていない友達から『すごく面白かった、楽しかった』って言っていただけたのが、自分としては一番手応えがあったというか、自分が表現したいものはできてたのかなと思います」

――FSでは今までとは異なる雰囲気の曲に挑戦しました。
 「これまでの自分のイメージにはない曲だったので、自分としてもすごくチャレンジしてみたい気持ちがあって。今回のこの曲を通して、自分が得意なジャンルというか、踊りたい曲の幅というのもすごく増えました。振り付けも含め、曲調も今までの自分にないものだったので、新たな自分を発見できたというか、すごくいいプログラムだったなという風に思います」

――自分の中にイメージがない曲を演じる中での苦悩や難しさはございましたか。
 「苦悩とかはなかったです。でも難しさはやはりあって。自分の得意な動きばかりやって、レパートリーなく自分の味というのをずっと出してきていたんですけど、そうやって新しい要素を取り入れてもらったことによって、難しくはあったんですけど、本当に毎日毎日練習が楽しくて。できないことをできるようにしていくという作業が本当に永遠に続く感じで、難しいながらも毎日楽しんで練習できたかなと思います」

――2月には滑走屋にも出演しました。
 「まず一番に、髙橋大輔さんという幼少期からの憧れの選手の隣で、10日間長い時間過ごしたというのが、本当に幸せな時間でした。また、スケートで憧れた方にスケートで同じ氷の上に一緒に立たせていただいて、同じものを作り上げていくという時間は、本当に自分の中でも夢のような時間でした。来年も現役が続く身としては、すごく自分の競技にもつながるいい時間だったなという風に思います」

――滑走屋への出演を通して何か学んだことはありましたか。
 「一番にジャンプが全てじゃないというのは改めて感じました。自分もフィギュアスケートを見ていて、自分が魅力的に感じた部分であったり自分が憧れた髙橋大輔さんの演技というのは、ジャンプの要素も、そういったエレメンツの要素ももちろんそうなんですけど、それ以前にやっぱり滑りの面ですごく魅了されました。僕が憧れを持って、本当にスケートを好きになったきっかけだったので、スケートはエレメンツだけじゃないという部分を再認識できたというのは、今回滑走屋に出て良かったなと思ったことの一つです」

――10日ほど福岡の方に滞在されたと思います。その期間での思い出はありますか。
 「リハーサル期間中は本当にハードでした。本当に朝から晩まで、もうずっと滑走屋で、本当に頭がパンクしそうになりながら毎日過ごしたという記憶が一番です。リンクで朝早くから夜遅くまでやって、ホテルに帰った後も寝る直前まで頭が滑走屋のことでいっぱいで。起きてからも滑走屋のことでいっぱいで。本当に10日間、24時間滑走屋のことを考えた期間だったなと思います」

――今年度は明治×法政 on ICE(以下、明法オンアイス)で実行委員を務められていましたが、そちらに関してはいかがですか。
 「滑走屋の直後というのもあって、今まで自分は出させていただく側、演じる側だったんですけど、明法オンアイスで企画する側にまわった時に、やはりぶっつけ本番、1公演しかないというのもあって、本番ではイメージしてたものと違った部分もあったんですけど、そういうことを経験して、普段ショーをつくる側というのは経験することはないので、その裏側の部分をやってみて、どれだけリハーサルだったり練習の時間が大事というのと、あとはやはり本番が練習通りにはいかないというのと、改めてショーつくる大変さというのに気付けた感じがしました」

――4年生が卒業し、最高学年となりますが、今の気持ちはいかがですか。
 「まずあっという間にもう4年生というのが一番の感覚で、気持ちとしては自分はずっと先輩にかわいがられてスケート生活を送ってきた身なので、年上の人が居ないとなると、本当に寂しいという気持ちが一番に来るのと同時に、今まで自分が先輩方にしていただいたように、後輩へ恩返しじゃないですけど、先輩から受け継いだバトンを後輩たちに受け継いでいけるような先輩になれたらなと思っています」

――現在はどのような練習をされていますか。
 「今は滑走屋が終わって、次の振り付けに入っています。今は自分の練習やジャンプというよりかは、基礎的なスケーティングの部分の強化という面で練習しています」

――4回転ジャンプは今後も挑戦していきますか。
 「挑戦というよりも、本当に次のシーズンまでに完成させなくてはという焦りがあるので。やはり来シーズンいい形で4回転を組み込めるようになれればいいなと思っています」

――大学最後の年となりますが、その先も踏まえてどのような1年にしたいですか。 
 「あまり先のことは考えずに、本当に今シーズンを選手として自分の目標を達成できるような、よりレベルアップした自分を見せることができるような良いシーズンにしたいなという風に思っています」

――今シーズン声援を送ってくださったファンの方へメッセージをお願いします。
 「本当に今シーズンは自分的にも結果的にも思い描いたシーズンではなかったのですが、最後の特別国民体育大会冬季大会(以下、国体)までプログラムを見てくださって、声援を送ってくださったファンの皆さまのおかげで、腐らず国体、インカレといい演技ができたと思うので、本当に感謝しかないです。来年、自分はまだどのような曲を演じるかは決まっていませんが、来年の自分もぜひ楽しみにしていただいて、来年もよろしくお願いします」

――ありがとうございました。

[髙橋未羽]