(26)シーズン後インタビュー 住吉りをん

今シーズンも銀盤を彩った選手たち。日本学生氷上選手権(インカレ)では惜しくも2年連続のアベック優勝は逃したものの、チーム力は健在。各自の目標に向けて、チーム一丸となって一冬を戦い抜いた。本記事ではシーズン後の選手たちの声をお届けする。
(この取材は3月4日に行われたものです)

第4回は住吉りをん(商2=駒場学園)のインタビューです。

――明治法政 on ICE(以下、明法オンアイス)を振り返ってみていかがですか。

 「去年出られなかったので自分にとって初めての明法オンアイスでした。運営も裏方役もいろんな仕事を頑張りつつ、演技も頑張りつつ、こうやってみんなが力を合わせてショーができあがっているんだなというのを見られて、そこに自分も関わることができて良かったです」

――一番印象に残ったことを教えてください。

 「よしくん(堀義正・商4=新渡戸文化)は私がスケート始めた時からお兄ちゃんみたいな存在でずっと近くで練習していつも一緒にリンクにいた存在だったので、そのよしくんが最後の演技ということですごく寂しいなという気持ちと感動という気持ちがありました」

――年生と一緒に演技される最後の機会だったと思いますが、改めて4年生へメッセージがあればお願いします。

 「やっぱり最後の4年生の演技は本当に心がこもってて、こちらの心にも響いてくる演技だったので、そういう演技を見せてもらえて幸せだし、そこに至るまで頑張ってこられたスケートというものを自分の自信にして、次のステップに行ってもらえたらすごくいいなと思います」

――タリンクホテルズカップを振り返ってみていかがですか。

 「すごく自信を持って臨んでいた試合だったんですけど、向こうに行ってからいろいろと思っていないことが起きてしまって、内容としては満足はいっていないんですけど、その中でも自分の底力みたいなものでなんとか優勝を取れたと思うので、自分の底力みたいなものがアップしたのかなと実感できました」

――開催地のエストニアでは観光などはされましたか。

 「前に世界ジュニアで行った時も旧市街をお散歩したんですけど、今回も試合が終わってからみんなで旧市街を散歩して、エストニアで一番古いカフェに行ってきました」

――シーズンを振り返っていかがですか。

 「新しい経験という意味で濃かった一年かなと思います。SP(ショートプログラム)の曲はボリュートという曲調が初めてで最初は体の動かし方も分からないし、正解を手探り状態だったんですけど、シーズン後半になってどんどん自分のものにしていくことができたという感覚もあるし、グランプリシリーズ(GPシリーズ)もグランプリファイナル(GPファイナル)に初出場することができたりと新しい経験ができた一年かなと思います」

――SPの浸透度はいかがですか。

 「来シーズンは曲を変えてしまうのでタリングホテルズカップが最後の『Blood In The Water』の演技だったんですけど、一年で自分のものにできたしそれをいろんな方にまねしてもらえたりとか、たくさん印象が強い部分を見てもらえたり、覚えてもらえたりしたのがすごくうれしかったです」

――SPは特に表現面に力を入れていたと思いますが、ご自身の中で今シーズンの表現面に関して振り返ってみていかがですか。

 「FS(フリースケーティング)は昨年から続いていたのであまり苦労がなかったんですけど、SPは少しでも気を抜くと抜いているのが分かってしまうし、そこが点数にももちろんですけど見ている方の心を動かせなくなるというところがすごく難しいプログラムでした。でも逆をいうと、細かいところ一つ一つに気を配ることで点数ももらえるし心に残るプログラムにできるという点で、意識することは大変でしたけど意識できるようになったら自分にとっていいプログラムだったんじゃないかなと思います」

――FSはプログラムを変えられるとのことですが、FSのプログラムは継続ですか。

 「FSも変えます。アメリカでFSをつくってきて、シェイリーン・ボーンさんに振り付けてもらってきて、SPは今週末にミーシャ・ジーさんに振り付けてもらいます」

――曲の特徴であったり、どのようなプログラムにしていきたいという目標はありますか。

 「FSはスローパートがあったり力強い部分があったり、明るい部分で最後は終わるんですけど、その曲調がパートで違うのでそのパートごとにいろんな感情を出せていけたらいいなと思っていて、最後は幸せな気持ちを皆さんに共有して終われるプログラムをつくりたいなと思っています。SPはまだつくっていなくて、何が入るプログラムになるかは分からないんですけど、わりと大人っぽい表現ができる曲になるかなと思うので、また去年とはガラッと違った印象をお見せできたらいいなと思います」

――FSの振り付けをやっていくにあたってシェイリーン・ボーンさんから特に言われたことはありますか。

 「今回は植物をテーマにしているような話があって、全ての大地だったり、空気だったり、雨だったり、そういうもの全てに感謝して最終的には花開いていくというのを今回のプログラムのテーマとして話してくれたので、それを自分なりにここから解釈していけたらなと思っています」

――FSでは4回転トーループをプログラムに組み込んでいましたが、プログラムを変えるということで、新しいプログラムでも4回転は入れますか。

 「今回も2本目に4回転トーループを組み込む構成で、ジャンプの構成は改善しようと思っています」

――GPフランス大会のFSで4回転トーループを着氷されましたが、改めて4回転に関してはどのような気持ちを持って挑んでいますか。

 「自分自身やっぱり挑戦するということが楽しみでもあるし、自分のモチベーションになり続ける要因になってくれているので挑戦することが楽しい、入れ続けたいという気持ちでずっとやっています」

――今シーズンも多くの大会に出場してきた中で一番印象に残っている大会はありますか。

 「フランス大会になるかなと思います。4回転を降りられたことももちろんですし、自分自身やっぱりフランスの地が少しずつ特別なものになってきている感じがあって、自分の名前の由来にもなっていますし、フランスのお客さんの空気感だったりとか、全てが自分にとってプラスの要因になっての演技だったかなと思います。次のシーズン、フランス大会に呼ばれるかは分からないんですけど、また行けたらいいなと個人的に思っています」

――初めてのGPファイナルにも出場されたと思いますが振り返ってみていかがですか。

 「GPファイナルは特別な舞台だったなと感じていて、世界のトップ6だけがいる環境というのが自分にとっては緊張もしたし、楽しむこともできたなと思っていて、一番エキシビションが楽しかったです。トップ6だけの試合でエキシビションに出させてもらえたので、この大舞台のエキシビションに出させてもらえてるということが自信にもなったので、すごくいい舞台に出させてもらえたなと思います」

――出場した選手の演技で印象に残った方はいましたか。

 「ルナ・ヘンドリクスがすごく印象に残っていて、咋シーズンは同じグランプリの試合にも出たんですけど、今シーズンはグランプリ2戦とも被っていなかったのでルナの演技を見たのがファイナルだけで、やっぱりかおりちゃん(坂本花織・シスメックス)もそうですけど、ルナもあの年になっても力強く世界のトップでいられるというのは本当にすごいことだなと思うし、自分もそうなりたいと思って、本当に尊敬しました」

――世界のトップが集う舞台で演技をして、一番通用するなと思った点はどこですか。

 「本当に自分の武器というとスケーティングだと思っていて、スケーティングが伸びるところだったりとか、所作が伸びるスケーティングに合わせて、所作も美しいっていうふうに、自分でそこが自分の強さだと思っているので、そこは誰にも負けないっていうくらいに、今は強みだとは思ってますけど、そこが誰にも負けないっていうところまで持っていけたらなと思います」

――ここを修正していければもっと高みを目指せるなと思ったポイントはありますか。

 「やっぱりジャンプの安定感ですね。練習のときはすごく安定感があるんですけど本番になったときに緊張で浮き足立ってしまって失敗することが多いので、この次のシーズンに向けて今から取り組もうとしているのが、しっかり重心を抑えて下へのアプローチを強くして、緊張しても浮き足立って重心が上がってしまうというのを改善して、ジャンプの安定感を出せるようにすることを今課題にしています」

――今シーズンを振り返って一番成長した部分はどこですか。

 「やっぱりジャンプの安定感が課題ではあるんですけど、その中でもメンタルはすごく成長したと思っています。昨シーズンはなんでできないんだろう、なんで試合になるとこういうふうになってしまうんだろうという、出口が分からないメンタルの課題だったんですけど、ここはこういうふうにできなかったとか、ここはこうやってうまくいったとかが、自己分析できるようにメンタルが成長してきたという部分で、そこがやっぱり進む、前進できた、まだもう大丈夫とまでは言えないですけど、かなり前進することができたのがメンタルの部分かなと思います」 

――新たに取り組んでいきたいことはありますか。

 「4回転をしっかりと安定感出したいので、いかに安定して、速い回転をつけるかということが大事になるかなと思うので、もちろん他のジャンプのクオリティーにもちょっと直結しますけど、全体的にジャンプの入りに対してもっとスピードを出していこうかなとコーチと話し合っています」

――4月から3年生ということで、大学生活も早くも折り返しとなってきますがここまでの大学生活を振り返ってみていかがですか。

 「あまりにあっという間すぎて、毎日をこなしているだけで気づいたらもう2年たっていたという感覚です。でも2年生になってゼミが始まってすごく友達が増えたので、そのできた友達ともう少し関われる2年間にしたいと思います」

――来シーズンの目標をお願いします。

 「今シーズンはグランプリはいい結果残せて良かったんですけど、全日本でやっぱり一番大事だって思って、力んでしまって悔しい結果に終わってしまったので、来シーズンは本当にピークを全日本に合わせるのと、力み過ぎず全日本に臨んで、全日本で一番自分がいい結果、表彰台に乗るという結果を、今シーズンできなかったので、来シーズンにしっかり果たせるようにしたいなというふうに思います」

――ファンの方へメッセージをお願いします。

 「いつも応援ありがとうございます。今シーズンはすごくたくさんの経験ができて濃い一年を過ごせたと思います。来シーズンは経験をするだけじゃなくて、この経験を生かして自分の中で反省点だったり、課題をこのオフシーズンの間に克服したりして、来シーズンはさらにさらに強くて美しい自分を見せられたらいいなと思うので、今後も応援よろしくお願いします」

――ありがとうございました。

[冨川航平]

(写真は本人提供)