
(25)シーズン後インタビュー 江川マリア
今シーズンも銀盤を彩った選手たち。日本学生氷上選手権(インカレ)では惜しくも2年連続のアベック優勝は逃したものの、チーム力は健在。各自の目標に向けて、チーム一丸となって一冬を戦い抜いた。本記事ではシーズン後の選手たちの声をお届けする。
(この取材は3月1日に行われたものです)
第3回は江川マリア(政経2=香椎)のインタビューです。
――シーズンが落ち着いた今の近況を聞かせていただけますか。
「1月に国民スポーツ大会冬季大会(以下、国体)でシーズンが終わって、その後2月頭が滑走屋で忙しかったので、 今ようやく少しゆっくりしている感じです」
――今シーズンを振り返ってみてどんなシーズンでしたか。
「今シーズンは一番目標にしていた全日本選手権(以下、全日本)でベストな演技をするという目標をしっかり達成することができて、国体でいい演技で締めくくることができたので、自分がスケートをしてきた中で一番いいシーズンと言ってもいいぐらい、すごく充実したシーズンだったのではないかなと思います」
――全日本では目標の順位を達成しましたが、あらためて振り返ってみてどんな試合でしたか。
「本当に尋常じゃないくらい緊張して。後から見返してもやはり自分の持っている実力の半分ぐらいしか出せていないというか、もうそのくらい緊張したんですけども、その中でもやりたいことはできたというのはすごく成長だったかなと思います」
――2回目の出場となる日本学生氷上競技選手権(以下、インカレ)についていかがでしたか。
「結構短いスパンでインカレがあったと思うんですけど、全日本の達成感がその時大きくて、少し気持ち的に緩んでしまった部分があって、調整不足はあったのかなと思います」
――インカレが終わってすぐ成人式に参加していらっしゃいましたが、体力的にきつくありませんでしたか。
「成人式は楽しいことなので、もう全然体力とかは大丈夫なんですけど、(インカレの)次の日だったので、間に合うか間に合わないかっていうので、ちょっとどきどきしていました」
――地元の友人とはどんな話をしましたか。
「本当にたわいもない会話です。やっぱり地元の友達はそういう会話ばかりなので、スケートのことも話しますけど、そんな真面目な話をした記憶はなくて。でも私があまり福岡に帰れないのもあって、みんな離れて生活していたりするので、久しぶりにみんなに会えて本当にうれしかったです」
――いい成績で終えることができた国体を振り返っていかがでしたか。
「国体は今シーズン最後の試合だったので、最後いい形で締めくりたいという思いもありました。来シーズン曲を変えるかどうかとか、まだ完全には決まっていないんですけど、最後になるかもしれないというのもあって、いい演技をお見せしたいという気持ちで滑れたかなと思います」
――今シーズンを通して、ご自身のジャンプ面を分析していかがですか。
「一番自分の中で成長したかなと思うのは、これまでスケートをしてきてループジャンプがずっと苦手なジャンプで、3回転ループを習得したのは随分昔なんですけど、一向に安定しなくて。それでもう5年間くらい少し不安定なジャンプだったんですけど、今年ようやく、ほぼどの試合でも決められたかなというぐらい安定したジャンプになったので、それはすごく自分の中で大きいことだったかなと思います」
――1年間滑ったプログラムはいかがでしたか。
「SP(ショートプログラム)もFS(フリースケーティング)も新しいプログラムに変えて、すごくそれがいい方向に働いて、新しい自分を見せることができた1年だったかなと思います。SPは初めて鈴木明子さんに振り付けをお願いしたのですが、自分の得意とするバレエ的な要素も多く入った振り付けで。意外と得意としていたんですけど、あまりスケートではやってこなかった感じの振り付けだったので、すごく楽しかったというか、新しく鈴木明子さんに振り付けていただいて良かったなという気持ちです。FSは毎年お願いしている宮本賢二先生に今年もお願いしたんですけど、本当にすごく、自分でも好きって思えるぐらいいいプログラムを作っていただいて。本当に、感謝したいなってぐらい今シーズンの『O』は結構印象に残るプログラムになったのではないかなと思います」
――SP、FSともにプログラムを新しくした今シーズンですが、滑っていて自分のものにできたと感じたのはいつ頃からでしたか。
「SPは夏ぐらいに、振り付け自体は比較的いい感じに体に入ってきていたんですけど、やっぱりFSがずっと動いているプログラムなのもあって、最後まで持たないというのと、うまく踊りこなせないというのがあって。ようやく形になったなと思ったのは、全日本の前の都民体育大会ぐらいだったかなという記憶です」
――今シーズン一番成長を感じた点はどこですか。
「一番を挙げると難しいですが、今年のプログラムを振り付けていただいて初めて出たアクアカップの演技の動画をこの間振り返って見ていたんですけど、本当にびっくりするぐらい踊れていなくて。それに比べて1年弱ぐらいでこんなに踊れるプログラムができるようになったんだというのはすごく目で見て成長を実感できる部分でもありましたし、今年は表現面で成長できたのではないかなと思える1年でした」
――逆に見えた課題はありましたか。
「今年は全日本も、東日本選手権とかでも、SPがなんだかうまく自分の中ではまらなくて、少し苦しんでいたりもしたので、来シーズンはもっとSPは安定というか、毎回できるだけベストな演技をこなせるようになりたいなと思っています。FSに関しては、今年は踊るプログラムでかなり体力が必要だったので、そこが最後まで持たなくて、最後のジャンプに乱れが出てくるのが課題かなと思います」
――シーズンを通して、メンタル面で工夫したことはありますか。
「もうこれはメンタル面というか、心構えという感じにはなるかもしれないのですが、本当に1試合1試合を大切にというのをモットーに試合を積んできて、それがすごくいい意味で毎試合毎試合成長できた部分があったと思うので、 そこが良かったかなと思います。あとやはり全日本で自分のベストの演技をできるくらいの練習を今年は去年よりもしてきたなと思っていて。メンタルは練習とはまた別のものなのかなとは思っていたんですけど、でもやっぱり練習から来る自信というのが一番自分の中では大事なことなのかなと気付けた部分もあったので、そこに関しては来年もっともっと練習からいろいろ向き合っていけたらいいかなと思っています」
――今シーズンの練習環境はいかがでしたか。
「今シーズンもちゃんとホームリンクがあって、しっかり練習できるという面ではすごく充実しています。MFアカデミーで自由に練習する時間があるんですけど、その時間をすごく自分の中で有意義に使えたというか、今年はうまく自分で考えて、自分がどこが足りないかというのをずっと考えながら練習していたので、いつもよりも充実した練習ができていたのではないかと思います」
――今シーズン印象的だった選手がいたら教えてください。
「それで言ったら、りをんちゃん(住吉りをん・商2=駒場学園)がフランスで4回転を決めた時は本当にすごいと思いました。なんだろう、ライバルとかそういうのじゃなくて、もう本当にずっとジュニアの頃から挑戦してきたと思うので、本当に自分もうれしかったです」
――先日アイスショーに初めて出演してみて感想はありますか。
「本当に大変だったというのが一番の感想なんですけど、やはりそれだけ大変なのもあって、充実感もすごくて。初めて味わう感覚という感じでしたね。やはりフィギュアスケートって個人競技だと思うんですけど、この『滑走屋』は高橋大輔さんを中心として、全員でつくり上げるという感じだったので、なんだか一種のチーム競技をみんなでやったみたいな、そのぐらいの団結と達成感みたいなものがありました」
――どれぐらい練習されたんですか。
「みんな国体が直前まであったので、その後集合してっていう感じで、1週間ぐらいしか練習していないんですけど、そこがもう合宿みたいな感じで、もう朝から晩までずっと踊っていました」
――『滑走屋』への出演を通して感じた高橋大輔さんの印象を教えてください。
「本当にみんな全然、寝てるんですけど、もう寝ないぐらいの気持ちで頑張っていて。その中で、高橋大輔さんは本当に誰よりも、もうずっと動いているというか、本当にストイックにこのショーに向けて準備していて。関わらせていただくのも本当に初めてだったんですけど、普段はすごく気さくに話しかけてくださる方で、みんなにも気さくに頑張ろうって感じで話しかけてくださいました。たぶん、高橋大輔さんだから、みんなこんなに必死になれたし、 一緒にショーをつくり上げるという思いが一つになったのではないかなと思っています」
――アイスショーへの出演で学べたことはありますか。
「体で全部吸収してっていう感じで、毎日毎日が新鮮な日々で、新しい経験でした。女性パートは村元哉中さんが中心になって振り付けをやっていたんですけど、やはりアイスダンサーなのもあってもちろん踊りがうまくて、生で間近で見ていて、緩急のつけ方とかがすごく違うなというのを肌で感じたり。それは高橋大輔さんを見てももちろんそうで、やっぱり目で直接見ないとわからないものってあると思うので、本当にそのすごさを感じていました」
――先日の明法オンアイスはいかがでしたか。
「滑走屋が終わって少しだけ帰省して、帰ってきてすぐに明法オンアイスという感じで、自分はそこまでたくさんではないですけど、実行委員として今年は関わらせていただいて。グループナンバーとかは去年よりも振り付けが多めで、みんなで3回ぐらい集まって練習して本番に挑むという感じだったんですけど、法政の子たちとは普段は大会とかでしか会う機会がないので、振り付けで毎回集合する期間だけでもすごくたくさん関わりを持てたのが何よりうれしいですし、やっぱり学生だけでつくり上げるのは本当にすごいことだなというのを、裏の仕事に携わっていて一番感じました」
――部の先輩や後輩たちとの思い出はありますか。
「今年の明法オンアイスは堀見華那(商3=愛知みずほ大瑞穂)ちゃんが中心になってやってくれたんですけど、たぶん人一倍、誰よりも、明法オンアイスを成功させたいという気持ちが強くて。一番最初にみんなでミーティングをしたんですけど、みんなで話し合って決めたいことのリストとかパワーポイントを事前に全部作ってきてくれたり、実行委員で話が進みやすいようにいろいろ動いてくれたりしたので、本当に年は1個しか変わらないですけど、1個違いと思えないぐらいしっかりしていて、たくさん動いてくれてありがとうっていう気持ちが大きかったです」
――大学生活も折り返してあと2年になりますが、残りの2年間どのように過ごしたいですか。
「自分の中でもあともう2年ということに本当にびっくりしているんですけど、シーズンに入るともう、毎日毎日スケートのことで考えることも多くなって一瞬でシーズンが過ぎ去っていくので、すぐに1年が終わってしまうような感覚なんです。今のところは進路はまだまだちゃんと決められていないですし、そういう時期にもなってくるかなと思うので、本当にどういう選択をするにあたっても、たとえば自分が引退するとなったときに悔いが残らないぐらいに、一番は今スケートを頑張りたいなという気持ちがあります」
――オフシーズンの間はどのように過ごす予定ですか。
「2月は一旦ゆっくり過ごして、3月からちょうど振り付けが始まってという感じなんですけど、やっぱり来シーズンは国際大会に派遣されたいという目標が一番にあるので、今シーズンはもう一旦これで終わりで、また来シーズンに向けて、ちゃんと気持ちを切り替えて頑張れたらなと思います」
――来シーズンに向けての意気込みをお願いします。
「まだ曲もどのようにするかとかちゃんと決まっていないですし、決まっていないことの方が多いんですけど、来シーズンは自分の中で今年以上にたくさん活躍したいなと思っているので、それに向けてもっともっと、また新しい目標で練習を頑張りたいなと思います」
――ありがとうございました。
[増田杏]
(写真は本人提供)
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