(5)劇団さいおうば主宰インタビュー拡大版/新歓号特別企画

 寺腰玄(文3)、三浦那由多(文3)らが昨年3月に立ち上げた劇団さいおうば。「劇団という形で、自分のやりたいことを自分のやりたいようにやる」(寺腰)公認団体にはない自由度の高さが魅力と語る。昨年度は東京学生演劇祭2023大賞、そして全国学生演劇祭では観客賞を受賞し、確かな評価を得ている。

この取材は3月17日に行われました。写真は劇団さいおうば提供。

――劇団を立ち上げた経緯について教えてください。

寺腰 いつか劇団を作りたいなと思っていて。やっぱりサークルって学校のものであって後輩につなげていくものですから、僕個人が好き勝手やるものではないなって思っていました。だからこそ劇団という形で自分のやりたいことを自分のやりたいようにやるっていうのが一番いいなと思っていました。(サークルでは)借りられる小屋や劇場とかも明大のものになってきますし。下北沢で公演を行う、などの活動場所も広げにくい。だからこそ、劇団という制約のないところで、メンバーを好きなように集めて公演を打つことがやりたくて設立した流れですね。劇団だったら、所属サークルの肩書も気にしないで、あそこの役者、スタッフいいなって思ったら自由にオファーをかけられることも魅力です。

三浦 それは本当に同じ演劇をやっているサークルの人や友達が手伝ってくれているおかげで成り立っていて。むしろそういうふうにいろいろな気の合う仲間、自分たちが目指す目標のために頑張れる友達を見つけられたのは、サークルに入ってとても良かったなって思います。

――劇団さいおうばの〝やさしい劇でむずかしい話をしたい〟というコンセプトの由来を教えてください。

寺腰 僕が影響を受けた井上ひさしさんが残した言葉が『難しいことを優しく、優しいことを深く、深いことを面白く、面白いことを真面目に、真面目なことを愉快に、そして愉快なことはあくまで愉快に』というのがあって。世の中にはテーマがいろいろあるけれど、どれもただ声高に叫ぶのでは、みんな付いてきてくれないですよね。だからこそ、難しいものを優しい面白い劇で表現してお客さんがそのキャラクターや世界に感情移入したところで、テーマをガッと突きつけるっていうのが、自分の伝えたいことを一番伝えられる手法かなって思っています。楽しませつつ伝えたいことも伝えるっていうのを両立したいなと思って、そのようなコンセプトにしました。

――他の表現方法とは違う演劇の良さは何だと思いますか。

寺腰 僕が普段思っていることや考えること、あるいは考えてほしい普遍的なテーマを劇というすごく垣根の低い状態にして楽しんでいただく、それを第一に考えていますね。最初の一歩が入りやすくないとその奥にも入っていけないと思うので。だからこそ難しい話のハードルを下げて、優しく普遍的な話にしようっていうのは考えますね。生の温度感っていうのは大事だと思います。

三浦 演劇の方が文字を読むよりも何時間もかかるし、おのおののペースで自由に見ることができるわけじゃないですが、長い本を読むのが苦手って人でも演劇はすっと見てくれる。あとコメディーってなると小説はすごくやりづらいんですけど、演劇だと演出の付け方次第でどんどん笑いどころを作れるので楽な部分もあります。コメディーでお客さんを引き込むとしたら、やっぱり小説よりも演劇の方がずっと向いているなと思いますね。

――三浦さんは明治シェイクスピアプロジェクトや他のサークルにも役者として参加されていますが、大変なことはありますか。

三浦 一番大事なのは、お客さんに台本の言葉、脚本と演出の意図を届けることです。そのためには脚本の読み込み、理解、それから自分の役への理解が必要不可欠になってきます。だから台本を読むうちに、覚えようと思う前に覚えていることの方が多い気はしますね。そもそも他の人になり切ったり(演じて)人をだますとか、そういうことが好きなので楽しくできています!

寺腰 稽古場でもせりふを覚えるのが一番早いです。それでいてキャラクター造形も結構初期の段階で作ってくれて、LINEでここのキャラクターのこのせりふ納得いかないんだけどっていうのをどんどん言ってくれるので、そういうところがありがたいですね。

――新入生に向けてメッセージをお願いします。

寺腰 劇団さいおうばではいろいろな方をオファーするんですけども、その中には大学から演劇を始めた役者や音響、照明のスタッフも初めてやるっていう人が結構います。でもどの方も長年やってきた方に見劣りせず、それ以上の輝きを放っていると思います。どんな人も、どの時期から始めようが、熱意があればはっきりと形に出るんですね。だからこそ、演劇に限らず何をやるにしても始めるのに遅いってことはないし、それこそいろいろな人が集まる明大はそれにぴったりの場所ですね。大学だと遅いんじゃないかとか考えずに、自分のやってみたいなって思ったことを遠慮せずどんどん取り組んでいってほしいですね。

三浦 サークルとかに入って自分の夢、やりたいことをかなえられるのは大学生活だけじゃないですか。だから限られた大学生活を無為に過ごさず、後悔しない大学生活を送れたらいいなと思います。大学生活はもう俺たちも折り返しになるぐらい短いものではあるので、 いろいろなことにチャレンジしていただきたいです。

[杉田凜]

劇団さいおうば第5回公演「カミノコノミカ」が6月13日から16日まで、シアター711(下北沢駅から徒歩5分)で行われる。ぜひ一度さいおうばの世界を〝生で〟体感してみてはいかがだろうか。

劇団さいおうば

公式エックス(旧ツイッター)→https://twitter.com/gekidan_saiouba

公式インスタグラム→https://www.instagram.com/gekidan_saiouba/