
(19)前回大会の悔しさ乗り越え実力を証明 江川マリア
12月21日から長野市・ビッグハットで行われた全日本選手権(以下、全日本)。明大からは5人が出場し、各選手が目標に向かって大一番を戦い抜いた。演技を終えて各選手が抱いた思いはさまざまだが、大舞台で堂々と氷上を舞う姿は人々の記憶に残る演技となったに違いない。
本企画では「明大スポーツ第535号」の拡大版として、4人の選手それぞれの言葉とともに今大会を振り返る。第1弾は、22位で終わった前回の雪辱を果たし、FSで会心の演技を見せた江川マリア(政経2=香椎)の記事をお届けする。
大躍進も悔いの残った昨シーズン
昨シーズンは明大への入学を機に福岡から上京し、慣れない環境の中でシニア1年目を戦った江川。予選を次々に通過し、東日本女王になるなど大躍進。初出場となった全日本は予想外のミスが重なり総合22位で終えた。予選での大躍進は「たまたまだったのかな」と思ってしまうほど落ち込み、これまでにない悔しさを味わった。
悔しさ糧に闘志を燃やした今シーズン
初めての全日本での悔しい経験から、今シーズンは全日本でいい演技をして強化選手入りも見込める12位以内に入ることだけを目標に練習に励んだ。東京選手権、東日本選手権ともに2位と、昨シーズンのように予選を首位で通過するなどの目立った結果ではなかったが、江川自身は大きく成長を感じていた。何より「全日本に向けて調整している過程だからとてもいい状態」と常に自信をにじませていた。ジャンプの精度やスケーティングの面を中心に毎日欠かすことなく練習に励み「一番いい舞台で一番いい演技を」目指し、全日本に向けて調子を合わせ直前までには最高潮となっていた。
(写真:伸びやかなスケーティングで魅せた)
リベンジの全日本
そして挑んだ2度目の全日本。試合前の公式練習では幅の大きなジャンプを何度も成功させるなど、その調子の良さをうかがわせた。自信も十分で挑んだSPは、まさかの結果となった。全日本特有の緊張感の中、冒頭の3回転ルッツ、続くダブルアクセルの着氷が乱れてしまう。これまでの予選ではなかったミスだった。「全部のジャンプの降りが乱れてしまって、その中で気持ちが揺れて弱い部分が出てしまった」。本来の実力とはかけ離れた演技となり、滑り終わりには悔しさをにじませた顔を隠せなかった。
(写真:SPを終え、悔しげな表情を浮かべた)
SP、FSともに力を発揮できなかった前回の全日本がよぎるも「去年は去年、今年は今年」と気持ちを入れ替え迎えたFS。変わらず緊張感漂う空気の中でも、江川の目つきは違った。冒頭から余裕をもって高さのあるジャンプを次々と降りていき、遂に演技最後のジャンプである3回転サルコウも見事着氷。全てのジャンプを成功させたその瞬間、江川の表情からわずかに笑顔がこぼれた。演技を締めくくるステップの足取りは軽く「曲調的にもすごく盛り上がる曲ですし、自分の気持ちも盛り上げて、出し切るようなステップを踏んだ」。演技終了後には大きなガッツポーズ。これまでの思いを実らせる気迫の演技を見せた。スピン、ステップ全てでレベル4を獲得し、これまでの予選を合わせても一番の点数をたたき出し、前回はかなわなかった全国の舞台で自身の実力を証明することに成功。念願だった強化選手入りの可能性もつかめる総合11位で全日本を終えた。
(写真:FSで全てのジャンプを成功させ笑顔を見せた)
世界へはばたけ
昨シーズンから大幅に実力を上げ技術と表現を磨き上げただけでなく、戦いに挑む選手として強くなった江川が1年の集大成としてふさわしい演技を全日本で見せた。力を入れて伸ばしてきた表現力が評価され、2月には初のアイスショーへの出演が決まっている。新たな挑戦からたくさんのことを吸収し、来シーズンはさらなる進化を見せてくれるだろう。世界へはばたく江川から目が離せない。
[増田杏]
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