
(196)箱根駅伝事後インタビュー⑭/園原健弘監督
第100回を迎えた箱根駅伝(以下、箱根)。悲願のシード権獲得を目指した明大だったが、往路での出遅れが響き総合20位とまさかの結果に終わった。失意の中で選手たちは何を思うのか。今回はレース後の声をお届けする。
第14回は園原健弘監督のインタビューです。(この取材は1月3日に行われたものです)
――2日間を振り返ってみていかがですか。
「完敗の一言に尽きますね。想定より悪い結果だから、何でこうなったかっていう原因をしっかり分析することがこの後の成長につながるから、そこはしっかり分析しないといけないと思います」
――ピーキングやオーバーワークが要因なのでしょうか。
「そうですね。綾(一輝・理工1=八千代松陰)は直前まで故障していたので別メニューで練習をやっていたんですね。軽めの練習で調子を上げてきたところがあったので、そういった意味で、完璧にメニューをこなしてきたメンバーはひょっとするとポイント練習を外したらいけないという気持ちが先行しすぎて、その練習自体をレースのような感じでやってしまった可能性があるので、それが一つ考えられる要因です。それとともにやっぱりフィジカル面が弱いので、体幹や走り方のフォームも、トップの青学とか駒澤とかと比べると合理的ではないフォームもあります。練習は頑張るんだけど、それ以外のところはやっぱり毎年言っていることが課題になっていて、その辺りが原因かなと思います」
――昨年度から坂井優友トレーナーも帯同されていますが、フィジカル面での強化は順調に進んできていますか。
「いや、まだまだですね。結果だけ見ると順調ではないので、その辺の見直しも必要だなと思います。フィジカルや練習のトレーニングがきちんとできた上でのメンタル面なので、何事も心配なくレースに向かわせてあげるということが大事です。それがないとやっぱり不安を抱えたり『できるかな、大丈夫かな』ということが、2区の児玉(真輝・文4=鎌倉学園)が言っていたような精神的な部分につながっていると思うので、その辺のところはやっぱり見直す必要があると思います」
――やはり児玉選手は体調不良などではなく、プレッシャーという感じでしょうか。
「そうだと思います。まだはっきり本人から私は報告を受けていないので。風邪をひいていて隠したとかそういうことではなくて、責任感の裏返しのプレッシャーみたいなところなのではないかと思います」
――4年生の走りは今回いかがでしたか。
「4年生で出走したのは児玉と杉(彩文海・文4=鳥栖工)だから、やっぱり児玉の走りが全てですね。児玉のメンタル面をしっかり我々が把握してあげることができなかったっていうところで、責任感が強いだけに自分が一身に責任を背負ってレースに臨んだところがあのような結果になったと思います。ひょっとしたら区間配置ももう少し楽なところで走らせたらもっと力を発揮したかもしれないし、そういう競技力の面だけじゃない適性も見ないといけないかなというのは感じました」
――昨年度は4年生が5人出走されましたが今年度は2人でした。4年生はどんな代でしたか。
「やっぱり力のある城戸(洸輝・情コミ4=宮崎日大)なども本当は走ってもらいたかったです。力のある選手が力を付けられないまま、あるいは開花しなかったという育成のところの課題も残るので、そういうところの見直しは今回の成績に響いてくるところだったと思います。よく周りから言われる声で『いい選手は取っているのに、なんでこんな成績なんだ』というところもあるので、しっかり育てて力を付けて出させるというか、そういうところに目を向けていかないといけないなと感じますね」
――育成面で来年度以降に変えていきたいところはありますか。
「まず一つは駅伝関係のコーチングスタッフを充実させないといけません。そこはいろんな障壁があるんだけど、今は山本豪駅伝監督1人でやってもらっているような状況だから、やっぱりもう1人しっかりサポートしてくれるコーチをつけたいなというのはあります」
――より選手を細かく見られるようにということでしょうか。
「そうです。A、B、Cチームみたいな区分けがあるとしたら、山本豪あるいは山本佑樹支援スタッフもそうだけど、1人で全部上から下まで見るとなると、どうしてもトップの選手を引き上げることの方にエネルギーを注いでしまいます。そうするとケガからの回復とか、故障させないためのフィジカルトレーニングとか、そういうところはなかなか目が向かなくなるので、現場の頑張りだけに任せるんじゃなくて、体制としてしっかり改善できるようにやりたいなと思います」
――今回山本樹選手(営2=専大松戸)は出走されませんでしたが要因はありますか。
「最後、古井(康介・政経2=浜松日体)にするか山本にするかという選択だったと思うんですよ。最後の調整具合を見て、古井の方が調子がいいだろう、あるいは尾﨑(健斗駅伝主将・商3=浜松商)の調子がいいだろうっていうことなので、そこの判断に間違いはないと思います。復路はそこそこ戦えたと思いますし層が厚くなったっていうところで、誰を使おうかじゃなくて誰を外そうかっていう形で戦前は臨める感じでした。そういった意味でも山本樹は本当に貴重な戦力なので、来年は羽ばたいてほしいなと思います」
――往路の結果を受けて復路の選手に対してどのような声掛けを行いましたか。
「『16チーム一斉スタートだから、この16チームの中で1位になろうよ。シードは7分以上あったけど、絶対に諦めるな、最後まで諦めない姿勢を見せよう』というのは話しました。4年生がラインの中でコメントをしてくれて、馬場(勇一郎・政経4=中京大中京)は『来年があるから次につなげるなんて思わないで、今日は今日のレースを頑張ろう。5区間でついた差を5区間あれば取り戻せるはず。全員がこのままで終わらせてたまるかと思い続けて、最後は意地を見せましょう』っていうことをラインして、私も『そうだ。下を向かず前へ、苦しい時ほど笑顔。できるよ』っていうのを言って。どうしてもこういう結果になるとし下向きがちだし、消極的になりがちだけど挑戦しようっていうことですよね。やっぱり7区の尾﨑とか10区の古井なんかを見ると調整が合ってないなっていう感じがあるので、個々の問題っていうよりはチームとしての練習の組み方のところもやっぱり見直さないといけないので、そこはしっかりやってほしいなと思います」
――今後ハイレベルな箱根を戦っていくにあたってどのようなことが必要だとお考えですか。
「今のチームは、前の部長の松本先生(穣顧問)と西さん(弘美スカウティングマネジャー)が、マンパワーで作り上げてもらったチームです。紫交会とか大学が積極的に推進して作り上げてもらったチームじゃなくて、この2人が勝ち取ってくれたチームでした。だからある意味、現場の情熱だけでも何とかなった箱根だったけど、今はもうそれでは全く通用しません。もう1回特に紫交会、それから大学、社団法人も作ったから、そこがしっかり前を向いていって、ゼロベースで考えていろいろな条件面や金銭面、経済的な支援などもひっくるめて体制を作り直さないと、なかなか太刀打ちできなくなってきます。現場はもちろん今回の成績の部分をしっかり反省して改善すべきは改善しますし、仕組み作りをしっかりやっていきたいと思います」
――来年度のファンクラブの活動でやっていきたいことはありますか。
「今年はファンクラブを復活させるので、やっぱりファンの言葉や応援をもっと力に変えるようなものにしたいです。今はファンの言葉で萎縮しちゃうようなところがあり、やっぱり厳しいご意見も多いので。その言葉に萎縮したり、プレッシャーを受けたりすることもあるので、ファンの皆さんと一緒に夢を追いかけるような、そんなファンクラブになればいいなと。双方向で情報のやり取りができればなと思っています」
――応援してくれた方々へメッセージをお願いします。
「往路後の段階でスタッフと『明日この報告会場に、誰も集まってくれないかもしれませんね』という話をしていました。そんな中で本当に多くの皆様に集まっていただいて、何度も何度も失敗を繰り返している競走部に対して最後までご声援いただいて本当にありがたいです。やっぱりそういった皆さんをもっと笑顔にできるように、結果で恩返しするの全てだと思うので、結果を出すのになかなか時間がかかって皆さんにはつらい思いとか悔しい思い、情けない思いをさせていると思うけど、下を向かずに我々も頑張るので、引き続き応援していただければと思います」
――来年度の目指すところを教えてください。
「必ず箱根に出て、まずシード圏内常連校になるっていうことですね。しっかり挑戦していきたいと思います。ただ今の延長線上にそれがあるかっていうと、なかなか見えてこないので、やっぱり今まで言ってきたこと、練習の中で不備がなかったのか、あるいは体制について改善すべき点はないのかっていうことをやらないとそこまではたどり着けないので、そこはしっかり挑戦していきたいと思います」
――ありがとうございました。
[萩原彩水]
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