
(163)箱根駅伝事前インタビュー①/園原健弘監督
いよいよ目前に迫った箱根駅伝(以下、箱根)。3大会連続でシード権を逃している明大は、全日本大学駅伝予選会敗退や駅伝監督の交代など変革を迫られた1年に。それでも、4年ぶりのシード権獲得と総合8位以上という目標は揺るがない。箱根を前に、選手たちの決意がにじむコメントをお届けする。
第1回は園原健弘監督のインタビューです。(この取材は12月17日に行われたものです)
――箱根2週間前となりました。今の心境はいかがですか。
「今年はいつにも増して、冷静というか落ち着いている感じですかね。例年みたいに意欲ばかりというような感じよりは、冷静に落ち着いて、選手たちの力を100パーセント発揮できることを望むだけっていうところですね」
――箱根に向けて頑張るという意識が先行し過ぎている感じはあまり見られないですか。
「そうですね。高い目標を掲げることは悪いことじゃないんだけど、組織的な体制とかいろんなことが整わない中で、ひょっとすると過去には実力以上の目標というか、我々だけが頑張ろうと、あるいは思い上がりのようなね、ファンの皆さんの期待に応えて元気にしてあげようみたいな。本来もっと足元を見つめて、自分たちのやるべきこと、自分たちの力を発揮することにこだわればいいのに、少し格好をつけてるっていうかな。やっぱり箱根の魔力みたいものに流されて、我々もマスコミだとか報道に乗っかり過ぎたりとか、誘導されたりっていうところがあったのかなと思います。そうなるとやっぱり実力と目標の乖離(かいり)が生まれるので、やっぱ適正な目標を設定しにくくなっていたこともあったのかなっていうのも感じたので。でもやっぱり選手たちは、そうはいっても高い目標で競技したいと思うので、そこはしっかりサポートしながら、ただ我々は冷静にっていう感じだと思いますね」
――緊張感は感じていますか。
「それほどもないですね。例年は部内選考というか、やっぱり箱根をどうしても走りたいというような部内の競争がすごく見られる感じもあるんだろうけど、今年はある程度山本豪駅伝監督の方で、選手はこういう使い方をするぞっていうことを伝えてると思うので、そういった意味で選手が個々の能力、あるいはピークをレース当日にきっちり出せるように調整をしてくれてると思います」
――16人のエントリーメンバーに対する印象はありますか。
「順当といえば順当です。箱根は教育の現場ということもあるので、やっぱり馬場(勇一郎・政経4=中京大中京)が入ったということで、彼の人間性や努力に対する評価で彼が選ばれたっていうのはとてもいいなと思いました。それ以外には、やっぱりもっと4年生に入ってほしかったなという残念なところはありますし、それはやっぱり直前に故障しちゃったりとか、4年間ずっと実力を発揮できなかったっていう残念な選手もいますけど。まあ順当に選手たちは選ばれていると思います」
――4年生は5人エントリーましたが、いかがですか。
「いや、もう順当ですよ。やっぱり4年生の強いチームが力を発揮すると思いますし、大学のチーム事情、教育からいっても、1年目からちゃんと積み上げて力を付けてきて、4年目で花を開かすっていうのは、本当に競技としてあるべき姿だと思いますし、4年生が多く選ばれたっていうのはうれしいです」
――城戸洸輝選手(情コミ4=宮崎日大)は卒業後実業団に進まれますが、エントリーされなかった理由は何ですか。
「私も城戸が選ばれないのはとても残念だったんですけど、やっぱり高校駅伝区間賞で入ってきて大学4年間を通して、花を開かしてあげることができなかったんでね。彼が入るかっていうところはギリギリだったと思いますけども、やっぱり実力ですね。実力通りの評価だと思います」
――現時点でエントリーメンバーは順調に調整はできていますか。
「そうですね、順調だと思います。去年もここから、こんな感じでインタビューしたあと、最後の富津の合宿が終わってから、2人ぐらい主力選手が走れなくなったってこともあるので、まだ油断はやっぱりできないですよね」
――1年間を振り返ってみていかがですか。
「やっぱり駅伝監督が変わったっていうのは、とても重大な決断だったし、我々にとっても衝撃的な出来事でしたよね。やっぱこちらにも責任が本当に大きくありますし、それは現場の努力だけではどうにもならないっていうところもあったので、今の大学のスポーツは現場のコーチが優秀で、現場を頑張る以前に体制作りみたいなところもあるんですね。スカウティングのところとか、あるいは練習環境等とか。そういうことに対して万全の準備ができないっていうのが現実なんだなとよく分かりました。ただ、やっぱりもう一つの側面としては、与えられた環境の中で全力を尽くすのがスポーツでもあるので、そのはざまに立って非常にいろいろ考えた1年でした。そういった意味で、駅伝監督とか変わって非常に心配していましたけど、山本豪新駅伝監督になってから非常にいい方向に進んでいるので、安心しています」
――2023年3月から競走部の寮が建て替わりましたがいかがですか。
「とてもいいですよ。ありがたいです」
――新しい器具などは選手にとってもいい影響をもたらしていますか。
「そうですね。ただ、やっぱりまだまだ使いこなせていない面があります。来年度は故障をさせない体作りっていうところがとても大事だと思うので、我々も勉強しないといけないし、フィジカル的なトレーニングを指導できるスタッフとか環境は整ったんでね。今度はソフト面をしっかり提案できるようにしたいなと思います」
――昨年度から坂井優友トレーナーが付いていますが、現在も継続して体のアドバイスなどを選手にしているのでしょうか。
「そうですね。それと今まで治療っていうアフターケアが割と個人任せだったところを、今年は週に2回程度、合宿所に治療科の方に来ていただいて、組織的に取り組もうということでやっています。選手たちはどうしても頑張りますから、そこのところのサポートも厚くしないと。ケガは常につきまといますから、そうさせないようにっていう体制はこっちの仕事だと思っているので、それはまだまだ万全とは思っていないですけどやっています」
――エントリーメンバーの中で注目してほしい選手はいらっしゃいますか。
「まあ箱根に関していうと全員ですよね。一番に求められるのがチームの総合力というかチーム順位、総合成績なので。総合成績を残す上で1人2人の快走があっても、去年見てもらったとおり1区と7区で区間賞を取ってもシード権を落としているってことなので、やっぱ誰1人ってことではないです。ただ、やっぱり皆さんが注目するだろうという、名前が出てくるような主力以外の選手がきっちり走ってくれないといけないので、そういった意味では7~10番手くらい、そういうあたりの選手に頑張ってほしいと思いますね」
――今年度は中間層の底上げがすごく見られた1年になったと思います。主力選手以外のメンバーの力はご覧になっていかがですか。
「古井(康介・政経2=浜松日体)とか山本樹(営2=専大松戸)とかあとは鈴木祐太(文3=鎌倉学園)。この辺りが力を付けてきてくれたっていうので、とても大きいですよね。だから溝上(稜斗・商3=九州学院)もひっくるめて、この辺りはしっかり走ってほしいです。それから尾﨑(健斗駅伝主将・商3=浜松商)が3年で主将に立候補してくれて、彼はいろいろ責任感を持ってやっています。いまだに原因ははっきりしないんだけど、ぬけぬけ病みたいなものを感じて、それで一時箱根を諦めようとしていたけど、そこから自ら切り開いて、箱根で16人のメンバーに選ばれたので、そこは本当にすばらしいと思いますね」
――今年度は8位を目標にしていますが、達成できそうですか。
「十分達成できます。でもそれが確実かどうかは分かんないですけど。どうしてかというと、5年ぐらい前と比べて、戦力がもう本当に拮抗(きっこう)しているんですよね。それから上の1~4番手あたりはちょっと力が抜けていて、それ以外は本当に13、14番手ぐらいまで力が一緒なので可能性はあるし、一歩間違えばやっぱりシードも落とすという。だから確実にいけるってことではないけど、8位に入れる力は十分にあります」
――箱根に向けた意気込み、そしてファンの皆さんに向けたメッセージをお願いします。
「そうですね。私は競走部という全体の監督をやっているので、私自身がもっと冷静に箱根を捉えないといけないなという心境になっています。私自身も就任した時に『第100回記念大会で優勝を目指す』というような言葉を掲げて目標を設定して、現場が頑張れば何とかできるだろうっていうふうに思っていました。ですがそんな甘いものじゃないってことは痛感していますし、競走部全体の中でも大きなイベントではあるんだけど、やっぱ一つの競技会としてね、選手たちが純粋に自分たちのためにまず頑張るってことが大事だと思います。なのであんまり周りの期待だとかプレッシャーとかに応えようとすることなく、自分の力をまずしっかり発揮してほしいなと思います。それからファンの皆さんにお伝えしたいのは、やっぱり出た結果を一緒に受け止めてくださいってことですね。決して手を抜いてやっているわけじゃないんで。目標設定能力っていうのも選手にとって大事なことですし、現状のポジションをしっかり見極める力っていうのも、競技のみならず、これから社会人として生きていく上で大事だと思うので、選手たちが掲げた目標をしっかり応援してほしいなと思います」
――ありがとうございました。
[松原輝]
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第100回箱根駅伝まであと10日。
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