(155)【特別企画】箱根駅伝100回記念大会 明大OBインタビュー 旭化成前編/鎧坂哲哉、大六野秀畝

2023.12.17

 今回で100回を数える箱根駅伝(以下、箱根)。第1回から出場している明大は数多くのトップランナーを輩出してきた。今企画では箱根路で活躍した明大OBらをお招きし、当時の心境や箱根、明大に対する思いを伺った。

 

 現在旭化成陸上部に所属する、鎧坂哲哉選手(平24営卒)、大六野秀畝選手(平27政経卒)のインタビューです。(この取材は11月14日に行われたものです)

 

――お互いの大学時代と現在の印象を教えてください。

鎧坂「現役の時は物おじしない後輩という印象ですね。1年生はみんな僕のことを怖がってあまり話しかけてこなかったんです。でも、同じ部屋だったこともあってよく話しかけてきた印象でした」


大六野「優しく接してくれてお世話をしてくれたので、本当に優しいなという印象ですね。今も変わらずに面倒を見てくださって、練習からプライベートなことでもすごく相談に乗ってくれるありがたい存在です」


鎧坂「今はもう友達に近いかな(笑)。ずっと付き合いが長いし後輩だからっていう理由も

ありますけど、友達みたいな感じです」
 

――競技面では普段からお互いに切磋琢磨(せっさたくま)する関係ですか。

鎧坂「まあぴりぴりとした切磋琢磨(せっさたくま)っていうよりは⋯⋯」

 

大六野「そうですね、一緒に盛り上げてお互いに頑張ろうみたいな感じです」
 

――根の第88回大会で明大は49年ぶりに3位を獲得しました。それに関する思い出やエピソードを教えてください。

大六野「僕が1区に出場しました。自分としてはうまく走れた手応えはなかったのですが、意外とそれを評価してもらえているという感じですね。それよりも、鎧坂さんが故障していて箱根直前の全体練習でも抜けている時があったんです。その時のメンバーで、鎧坂さんの負担を減らせるように頑張らないといけないという内容の話をしていました。本当に直前まで、鎧坂さんが箱根を走るかどうかは分からなかったのでみんなでやれることをやろうという雰囲気でした」
 

鎧坂「ケガをしていたので本当に全体練習もほぼやっていないですし、4年生の時は日本代表になって海外遠征にも行かせてもらいました。なので、キャプテンという立場ながらもチームにはほとんどいませんでした。みんなの前に立って引っ張っていくよりも、結果で周りを引っ張っていくしかないという意識があったので、箱根前までは結果でどうにか示してきたという感じでした。箱根前にケガをして『やっちまったな』という思いがありましたけどみんなが盛り上げてくれたことがうれしかったです。あとはそれまでの明治が弱みにしていた復路も結構安定したことでいい成績でゴールできたので、本当にみんなの力はありがたいなと思いましたね」

 

第88回大会に限らず、思い出に残っている箱根はありますか。
大六野「僕はあまり箱根で快走した記憶がなくて。なので、個人としてよりも1年生の時に3位になった思い出が一番ですね」

鎧坂「それぞれの箱根に思い出があります。1年生は1区を任されて3位で襷を渡し、そのままいい流れに乗ってシード権を取れました。久々のシードだったのでみんなで大盛り上がりしましたね。2年生の時は1番で襷を受け取って、箱根を先頭で走ることも経験させてもらいました。3年生はエース区間を任されてしっかり走らなきゃいけないという思いがありました。4年生の時はアンカーで総合3位を取って、周りの人たちにはすごく喜んでもらえたので、それぞれの箱根が印象に残っています」

 

――今回で箱根は100回大会を迎えますが、当時から伝統の重みは感じましたか。

鎧坂「重みという感じではないですけど、終わった後のOBの反応はすごかったですね」

 

大六野「結構すごかったですよね。あとは声援がすごいので走っている間は耳がずっと痛いんですよ。その状態でトンネルに入るとシーンとするので、耳がキーンとなるんです」

 

鎧坂「左からの声援が近いし音が大きいので、左だけ耳がおかしくなる」

 

大六野「それが一番印象に残っています」

 

――走っていて応援の力を感じる時はありますか。

大六野「応援されている時はちょっとペースが速くなるんですよね」

 

鎧坂「知り合いが応援に来ていた時に気が付く人もいるんですけど、僕は全然気付かなくて。応援に行ったよって言われても、どこにいた?みたいな感じで全然気づかないんです。でも、分かりやすくキラキラしたアイドルみたいなもので応援してもらえるとありがたいなって思います」

 

――応援の声は聞き取れますか

大六野「分からないですね。声で誰かを判断できるぐらいですね」

 

鎧坂「駅伝だったら前後とのタイム差を言われるとちょっと元気になるかもしれないですね。元気になるというか、今の自分の状況が分からなかったりもするのでタイム差が分かると、前との差を詰めているとか後ろから詰められているといった情報が分かるので結構ありがたいです」

 

――箱根に出場するにあたって重圧は感じましたか。

大六野「感じましたよ、僕らは最強世代と言われていたので(笑)。勝たないといけない雰囲気があったんですけど、やっぱり勝てなくて。そういったところではちょっとプレッシャーを感じましたね」

 

鎧坂「プレッシャーはそんなになかったです。でも、やっぱり規模と注目度が違うのでその分頑張らなきゃいけないと思いました。前の人たちが失敗したら取り返さなきゃいけない、少しでも後ろの選手に楽をさせなきゃいけないみたいな思いは強くなりましたね」

 

――箱根で勝つために大事なことは何だと思いますか。

鎧坂「1区間でも失敗したら一気に順位が下がってしまうので、本当にどこも失敗できないっていうのが優勝に関していえば必要なことだと思います。失敗すると大きく差をつけられてしまうので、今は当時よりもちょっとした失敗やミスも許されないような印象ですね」


大六野「今の選手がどういった練習をしているかが分からないので何とも言えない部分があるんですけど、僕は卒業してから考えてみると当時は練習内容においてちょっと足りなかった部分があったのかなと思いました。なので、そういったところで今の選手には悔いなく頑張ってもらいたいと思います」

 

――最近は〝箱根至上主義〟が批判の的になることも多いですが、お2人は箱根をどのように捉えていらっしゃいますか。

鎧坂「失言しちゃいそうです(笑)」

 

大六野「箱根がある以上は勝たなければいけないので、それに合わせるのは仕方ないのかなと思います。でも、鎧坂さんはトラックが専門だったじゃないですか。トラックをやりたい選手にとってはそんなに重きを置けない大会ではあるので、ちょっと難しいですね。それも含めて明治はそんなに練習をやらせなかった側面もあるんじゃないですか。やっぱり難しいんですよね。箱根で勝っても将来的にはそんなに活躍しなくなる選手もいるので、そういったところが言いづらいというか⋯⋯」

 

鎧坂「今思うのは、自分自身と周りの監督、コーチが理解した上で取り組んでいるのであれば、周りの評価は別に関係ないのかなと。他大学になりますけど、三浦くん(龍司・順大)は完全に箱根に合わせるような練習はしていないと思います。彼はもう日本を代表する選手ですけど、そうじゃなくても本当に箱根を頑張りたい子はそれに向けて頑張ればいいと思いますし、それぞれの目的を分かってやっていればいいのかなと。周りの評価を気にする子はしちゃいますけど、考え過ぎることはないのかなと思いますね」

 

――今も明大競走部との関わりはありますか。
鎧坂「たまに高校の後輩にあいさつしてもらったり、中距離の馬場くん(勇一郎・政経4=中京大中京)とかに練習パートナーとして練習を引っ張ってもらっているので、全く接点がないというわけではないかなという感じですね」
 

――明治の競走部の魅力についてどのように感じましたか。
鎧坂「自分に関しては、当時監督だった西さん(弘美スカウティングマネジャー)にかなり自由にやらせてもらいました。学生ながらに海外遠征に行かせてもらったりとか、個人合宿をさせてもらったりとか、そういうところで自分で考える能力を付けさせてもらったのが明治の良さとしてあったと思います」

 

大六野「やっぱり明治に決めたのは西さんがいるからという理由が大きかったです。自分で考えてやれることが将来的にも必要になる力なので、そのための環境をつくってくれるところが魅力だと思います」
 

――在学中には自主性を生かしてどんな練習をしていましたか。

鎧坂「ジョギングの量も自分の体調に合わせてそれぞれのレベルでできるというのもありますし、ハードな練習でも今日はみんなより何本多くやろうとか、ちょっと体調が合わないから別のメニューをやろうみたいなことは工夫してやっていました」


大六野「やっぱり走る距離を調整できるところがすごくやりやすかったと思いますね」
 

――お2人から見て西さんはどんな存在でしたか。

鎧坂「他の大学にも勧誘してもらったことはありましたけど、唯一真面目な話をしているのに笑かそうとしてくるのは西さんぐらいでした。一笑いは絶対取らなきゃ帰れないぐらいの(笑)。早稲田との合同合宿の時もあいさつで一笑いくらい起きないと永遠と話すから」

 

大六野「西さんと喋ったことないんですか。話したら分かると思いますよ(笑)」

[佐野悠太、萩原彩水、松原輝]

 

後編はこちらから


旭化成インタビューの記事は12月21日発行の明大スポーツ第534号(箱根駅伝特集号)にも掲載します。ご購入フォームはこちらから!


第100回箱根駅伝まであと12日。