
(15)全日本直前インタビュー 江川マリア
国内最高峰の大会である全日本選手権(以下、全日本)がいよいよ12月21日に開幕する。日本の精鋭たちが集まる大舞台で最高の演技ができるように練習を積み重ねてきた選手たち。今シーズンの大一番であり国際大会への出場も懸かる大切な試合を前に、一人一人の思いを伺った。
(この取材は12月8日に行われたものです)
第1回は江川マリア(政経2=香椎)のインタビューです。
――最近はどんな練習をしていますか。
「全日本まであと2週間ぐらいなので、最近はもう細かい部分の練習です。ジャンプは安定してきていると思うので、振り付けの細かい部分とか、あとは曲の完成度を高めるということを意識しています」
――全日本への出場が決まった時に感じたことを教えていただけますか。
「自分の中での目標は、全日本に出場するだけではなくその先だったので、全日本に出るというのはもう自分の中でそれほどびっくりとかそういう感じはないんですけど、東日本選手権(以下、東日本)が終わった時は、とにかくあまりいい演技ではなかったので、なんでダメだったんだろうというマイナスな気持ちでした」
――先日、都民体育大会に出場されていました。そこで得られたものはありますか。
「すごく意味のある試合だったなと思います。調整のために出場したのですが、SP(ショートプログラム)が良くなくて、FS(フリースケーティング)は一つミスしたんですけどまとめたという感じで、メンタル面というか、心構えみたいなものが課題だったので、それが見つかって良かったかなと思います」
――全日本は今回で2回目の出場ですが、全日本という大会をどのように思っていますか。
「昨年から振り返って、あっという間にこの時期が来たなという感じがしています。この1年間、本当に全日本のために頑張ってきたと言ってもいいくらいここを目指してきたので、 やっと来たなという感じです」
――現在のコンディションはいかがですか。
「体のコンディションはどこも痛いところもなくて、すごくいい状態です。今年は安定を目標に頑張ってきたのですが、練習でもコンスタントにいいジャンプが跳べているなというように感じているので、昨年以上に自信を持って臨める気がします」
――今シーズンは調子の波などはあまりありませんでしたか。
「そうですね。東京夏季大会でSPもFSも合わせることができていい演技ができたのですが、その後東京選手権と東日本では少し良くない演技が続いていました。でも今また調子が上がってきているなと感じているので、すごくいい状態だなと思います」
――シニア2年目ということで、昨シーズンからどんなところが成長したと思いますか。
「SPもFSも今年は曲を変更して、どちらも違うテイストの曲なんですけど、どんどん滑っていくごとに自分のものになっているように感じています。以前よりも踊る振りというか、FSは特に踊るようなプログラムになっているので、おそらく皆さんが抱いているイメージはジャンプのイメージが強いと思うんですけども、私はそれに加えて、表現も自分の中で頑張ってきたなと思っているので、そこが少し成長できているのではないかなと思います」
――今の時点で課題はありますか。
「課題としては、一番はFSの後半が乱れてしまう癖があるので、この2週間で強化したいなと思っています」
――本番が近づいてきた今、どんな心境ですか。
「昨年はドキドキとワクワクと言っていても実際はもうドキドキの気持ちの方が高くて、結構緊張していたというか、もうずっと不安な気持ちでいたんですけども、今年は昨年以上に一度全日本の舞台を知っているというのもあって、またその舞台で立ちたいと思いながらずっと練習してきたので、余計にワクワクした気持ちのほうが大きいかなと思います」
――今シーズンはずっと全日本という舞台を意識して試合に臨んでこられましたか。
「そうですね。夏の試合からも、予選だからとか、まだシーズン始まったばかりだからという風に気を抜くのではなくて、一試合一試合大切にというのを心掛けて、全日本ぐらいの心構えで試合を積むという風に自分の中でしてきたので、全日本ではある意味いつも通り、どの大会とも同じように演技できたらなと思います」
――全国の舞台ならではの緊張感に勝つために秘策はありますか。
「やはりどうしても緊張はしてしまうと思うんですけど、自分がしたい演技よりも結果とかを意識すればするほど緊張してしまうと思うので、まずは自分がしたい、見せたい演技をするということに集中したいなと思っています」
――たくさんの人に見てもらう機会になりますが、どんな演技をしたいですか。
「SPは今回は前半グループなので、地上波には映らないかなとは思うんですけど、BSとかでも放送されますし、やはり他の大会よりもたくさんの人が見てくださる大会です。観客もたくさんいて、初めて見る方もいると思うので、その中で印象に残るような演技というか、心に残るような演技をしたいというのが一番です」
――プログラムの中でどんなところを見てほしいですか。
「SPは流れるスケーティングの中で勢いよくジャンプを跳んで、それでも魅せるところは魅せるというか、全部トータルですごくいいプログラムで、全てが見せ場みたいな、いいプログラムになっているかなと思うので、目を離さず見てもらいたいと思っています。FSはSPとがらっと変わった感じのダイナミックな曲で演技するんですけども、自分の持ち味であるジャンプのダイナミックさと、それに加えてスピード感というのを一番見てもらいたくて、最後はステップになるので、一番の目標としては、全てのジャンプを決めて最後に、自分でも楽しめるぐらい最後のステップで盛り上がれたらいいなと思います」
――緊張することも多い全日本だと思いますが、楽しみなことはありますか。
「最初の6分間練習の前にあいさつしたりとか、いろいろな空気感が違うというか、やはり予選の大会とは一つ次元の違う大会だなと昨年感じたので、見ているお客さんの歓声もその倍ですし、そういったたくさんの歓声をしっかりと力にして滑りたいなと思います」
――世界で活躍する同期がいる中で、この大会次第でご自身も世界へ羽ばたく可能性も十分ありますが、どのように考えていますか。
「目標としては昨年と同じで、海外派遣に選出される順位になるというのが目標です。同じ場所で練習している青木祐奈ちゃん(日大)とかも今年グランプリシリーズに出場したりしているので、本当に身近な人がたくさん世界で活躍しているというのは、すごく自分の中では刺激になるというか、自分も頑張らないといけないなという風には思います」
――一度悔しい思いをされた舞台ですが「昨年の自分とはここが違う」ということがあれば教えてください。
「ジャンプの質も昨年よりすごく良くなって、特にループが自分の中で苦手なジャンプだったのですが、おそらく今年は安定して、それも質のいいものを跳べるようになって、そこが結構自信になっている部分でもあります。あとはジャンプだけではなくて、スケーティングを毎日コンスタントに自分で練習してきたという部分があって、演技をするとなったときにそこが自然に現れるというか、やはり基礎ができていないとできない滑りというのがあると思うので、踊りもスケーティングも含めて今年は少し成長できているのではないかなと思います」
――全日本での目標を教えてください。
「具体的な目標としては、12位以内が強化選手入りだと思うのですが、実際その時になってみないと自分がどのぐらいの位置かというのはみんなの実力もあると思うので分からないのですが、昨年よりも自信はついていますし、今は順位というよりもうやることをやるというか、自分のできる限り集中するという気持ちではいます」
――フィギュアのシーズンはまだ続きますが、2023年を振り返ってどんな1年でしたか。
「まあもう一言で言うと、ありえないぐらい早かったなという感じがしていて、ついこの間全日本終わったのにな、みたいな体感ではそういう気分です。でも自分の中ですごく自信を持って、昨年から練習内容を変えたりとか、試行錯誤してきた1年間だったなと思っているので、たくさん成長できた部分があるのではないかなと思っています」
――応援してくださる方々にメッセージをお願いします。
「いつも温かい応援ありがとうございます。今年は自分の中で自信を持って頑張ってきたと思える練習が積めているので、しっかりとそれを自信に変えて、いい演技をお見せできたらいいなと思っています。まだシーズン残り何試合かあると思うのですが、まだまだ応援よろしくお願いします」
――ありがとうございました。
[増田杏]
(写真は本人提供)
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