
(82)第533号ラグビー明早戦特集号 特別インタビュー! 田中澄憲前監督「応援してくれる人たちに感動や勇気を与えることが使命」
11月30日に発行した明大スポーツ第533号ラグビー特集号で、田中澄憲前監督(平10文卒)に現4年生についてや、現役時代、監督時代についてインタビューを行いました。紙面には載せることのできなかったインタビュー拡大版をお届けします!
(この取材は11月9日に行われたものです)
――現4年生をリクルートした際に意識していたことはありますか。
「100周年でなんとか勝てるようにという気持ちはあまりなかったですが、彼らが4年生の時が節目の年で、自分も(サントリーに)戻ってくるっていうのがほぼ決まってた状態だったので人材としての財産を残せるようないい選手をとりたいなっていうのはすごくありました」
――今見ていて1年生の時から特に成長を感じる選手はいらっしゃいますか。
「廣瀬雄也(商4=東福岡)は、1年生の時からゲームに出ていてすごく大変なプレッシャーだったと思うんですけど、失敗もたくさんある中でいろいろな経験をして、彼がいるのといないのとでは全く違うのかなと思います。今のチーム全体が彼らしさが出ているというか、まとまっているなっていうのは外から見ていても分かります。やっぱり1年生からしっかり悔しい経験をしてきたから自分がキャプテンになって勝ちたいっていう思いがすごく出ているかなという気はしますね。あとは松下(潤一郎・法4=筑紫)が出ているっていうのは、不思議な感覚ですよ。彼からしたら僕は怖い存在じゃないですかね、よく怒られていたと思うので(笑)でもそういう選手が、中心になって出ているっていうのはうれしいですね。やっぱり一年一年成長していくっていうのは、学生スポーツならではだと思います」
――監督をやられていた際に特に印象に残っている選手はいらっしゃいますか。
「嶺二郎(山本・法4=京都成章)はリクルートしてる時に、明治の施設とか雰囲気を見に1泊2日で来たことがあるんですけど、その時に僕のマンションのゲストルームに泊めて、夜焼肉を食べに行って朝早くから一緒にグラウンドに行ってということがありましたね。その時に一貫して『僕は明治しか考えていない』って言ってくれて来てくれたので、思い出はありますよね。それで今のFWリーダーをやっているので、すごくうれしいですね」
――大きな大会に出られていない選手もいらっしゃいますがそのような選手はどのようにリクルートされるのですか。
「明治はありがたいことにリクルーターが各地域に置かれているんですよね。リクルーターたちは地方の大会をよく見てくれていて、定期的にリクルートミーティングをやるんですけど、その時に候補をあげてくれて見に行ったりします。強豪から来て成功する人、強豪から来ても出れない人、花園に出ていなくても明治で頑張って出れる人がいますけど、社会に出てからが勝負だと思います。そこで通用する、やり切れる人間になっていくっていうのが一番うれしいですね。多分30代くらいからラグビー選手としては通用しないと思います。だから、40代くらいになったら試合で全然出ていなかった人でも管理職になって活躍しているとか、なかなか学生の時はそこまで想像つかないと思いますけど、そういう人が一人でも出てくれたらいいなっていうのはあります」
――明大在学時の4年間を振り返ってみて印象的だったことを教えてください。
「一番は監督がいなかったっていう経験をしたことじゃないですかね。4年生の時にはOB会がごたごたしていて、そこに巻き込まれた感じがあったので『だったらもう自分たちで頑張ります』って言ってやったシーズンでした。(選手権)3連覇がかかっていたんですよね。その時は3連覇は同志社しかやったことがなかったです。明治って2連覇して3連覇はできないというジンクスがあってそれをどう破るかというシーズンでした。結局、決勝で負けてしまって悔しくて、しばらくラグビーしたくないなと思いました。それを乗り越えていって、今もラグビーに携わることができているのであの時の経験が一番印象に残っているし大きいです」
――現在明大でコーチを務められている伊藤宏明ヘッドコーチ(平10文卒)とはハーフ団を組んでいましたが当時を振り返ってみていかがでしたか。
「彼は高校の東西対抗の試合でハーフ団を組んだのが初めての出会いでした。そこから縁があって、明治でも一緒で9番、10番なのでグラウンド以外でも遊んだりとかは多かったですね。それで卒業後はサントリーでも一緒で。でもそこまでベタベタはしないんですよ。ラグビーをやっている時はあうんの呼吸というか、感覚がやっぱり一緒ですごくやりやすかったです。自分が明治の監督になってコーチに来てもらった時も彼が来てからかなりチームも変わりましたね」
――感覚が一緒というのは具体的にはどのようなことなのですか。
「例えば簡単に言っちゃうと『今このラックのスピードで出たらここ攻めるよね』とか『ここに投げた方がいいよね』とかですね。明治の監督やってる時にも課題や何が必要かを話して『え、なんでそんな考え方になるの』っていうのはないんですよ。明治で一緒でサントリーでも一緒なのでそうなるのが当たり前だなとは思います。FWコーチをしている滝澤(佳之アシスタントコーチ・平13政経卒)は明治では僕が4年生の時の1年生で部屋っ子だったんです。自分が監督の時に『やるぞ』って言って一緒に来てくれたんですけど、彼は明治からリコーで違うチームだったということもあって意見が合わないこともあったんです。それは悪いことではなくて、やっぱり同じ意見だけだとダメだし、違う意見があってそこで議論して考えるからいいわけじゃないですか。それがバランス的にはすごく良かったですよね」
――現役時代の明早戦で印象に残っている試合を教えてください。
「最初に出たのが3年生で、その試合ですね。確か認定トライで勝ったんですよ。昔は認定トライってあまりなかったんですよね。その当時の大学選手権の決勝も早稲田と対戦したんですけどそれも認定トライで勝ったんですよ。そんなシーズンだったのですごくそれを覚えていますね」
――選手としても監督としても日本一を経験されていますが、日本一に必要なことはどのようなことだと考えていますか。
「僕が明治に入った時って日本一が当たり前のチームで、本当に日本一になるっていう目的があってみんなきていました。それでやってきたことが結果としてつながったと思うので、まずは日本一になりたいという欲望が大事なんじゃないかなと思いますね。自分が2017年に明治で指導を始めた時は(部員たちは)『日本一を目指します』って言うんですけどそれが行動に出ているとは感じなかったんですよね。明治っていうブランドがあって早明戦も人が入りますが、それで満足していたら日本一になれないですし、本当にとりたいなら行動を変えていくっていうことじゃないですかね。でも、今の子たちは日本一を目指していますしもちろん近いところにいると思います。力は持っていると思うので、最後まで細部にこだわって、ゲームでそれを発揮できるかどうかっていうところが大切だと思います」
――明大ラグビー部にメッセージをお願いします。
「明治のラグビー部って全国にファンがいますし学校をあげて応援してくれるチームです。でもそれはあたり前じゃないのでそういうチームだという自覚を持って、感謝も含めて勝つこともそうですし、応援してくれる人たちを元気にしたり感動とか勇気を与えることが使命だと思っています。そんなチームにどんどんなってほしいなと思います」
◆田中 澄憲(たなか・きよのり)平10文卒
在学時には監督不在の中主将を務め、チームを大学選手権準優勝に導いた。2018年度から2021年5月まで明大ラグビー部監督を務める。2018年度には監督就任1年目にして明大を22年ぶりの大学日本一に導いた。現在は東京サントリーサンゴリアスの監督を務める。
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