桒原陸人 Jリーグ杯デビュー済み 世代屈指のマルチプレーヤー

2023.09.25

 圧倒的な存在感を放つ桒原陸人(商1=ガンバ大阪ユース)。高校時代はクラブを象徴する5番に加え、主将も任される。代表活動にも多数参加し、3年次にはJリーグ杯デビューを果たした。しかしトップチーム昇格の夢は叶わず。そんな彼が選択した道は明大進学だった。


努力の天才誕生

 父の影響でサッカーを始める。中学でガンバ大阪ジュニアユースに所属するも、2年次では試合に出してもらえず、スタメン出場も一度きりだった。それでも「今思えば、あの経験があって良かったと思う」。人一倍負けず嫌いな性格と悔しさをバネに、猛練習に励んだ。そのかい(甲斐)あって、マルチプレーヤーに大躍進。「武器がないことが自分の強み」と語るほどまでに急成長を遂げた。しかし、高校時代に突きつけられた現実はあまりにも厳しいものだった。


人生最大の挫折

 高校3年次にはJリーグ杯デビュー。世代別日本代表活動にも多数参加した。所属したガンバ大阪ユースでは同期から主将を任され、誰もが認めるチームのエースだった。

 自他共に昇格の知らせを待ち望む中で告げられた「トップチームには上がれない」という衝撃的な宣告。周囲から将来を渇望された桒原にとって、想定外の言葉だった。それでも翌日も屈することなくトップチームの練習に参加。しかし、実際は「放心状態で、サッカーから離れたいと思うほどのメンタルだった」という。それからも高卒でプロ入りの夢を諦め切れず、他クラブの練習にも参加。手探りで進路を模索する彼に手を差し伸べたのは、ユース時代の監督だった。「大学サッカーに行くことの意味を毎日話してくれた」。心動かされ、もう一度前を向くことができた。


青黒から紫紺へ

 「ピッチ外での先輩方の立ち振る舞いに心惹かれた」。自分が変われると確信し、明大への進学を決意した。期待のルーキーは、早くも関東大学1部リーグ戦第5節の中大戦で公式戦デビュー。8月にはU―18日本代表にも選出。「身長が高くないからこそ自分なりのC B像がある」。弱点さえも武器に変えようとする姿勢が見えた。また高校時代から書き続けているサッカーノートは、今もなお彼の活躍を支えている。「絶対にプロになってガンバ大阪ユースに恩返しをする」。己に誓う彼の目は、既に世界をも見据えていた。もう一度〝あの経験があって良かった〟、そう思うために。一度は離れかけた夢を再び手繰り寄せようとしている。

 

[田上愛子]

◆桒原 陸人(くわはら・りくと)商1、ガンバ大阪ユース。弱冠1歳でボールを蹴っていた。177センチ・72キロ