
(10)シーズン直前インタビュー 大島光翔
長いオフシーズンを越え、ついにシーズンが開幕する。今シーズンからは部練を積極的に取り入れ例年以上に結束力の強いチーム明大。日本学生氷上選手権の連覇、そして各選手が掲げる目標の達成に向けて何を思うのか。本インタビューではそれぞれの選手の思いをお届けする。
(この取材は9月9日に行われたものです)
第6回は大島光翔(政経3=立教新座)のインタビューです。
――最近のコンディションはいかがですか。
「そうですね、合宿でケガをしたのですが、元気に順調にきている感じです。頭を打ってしまって、ついこの間まで滑れていなかったのですが、思ったより感覚もすぐ戻って、あとは体力も戻ってくれればという感じです」
――ケガはどのようにして起こりましたか。
「僕も正直あまり記憶がないので僕は分からないですが、4回転を締めて軸が曲がったまま落ちてきて頭を打ったと聞いています。記憶を取り戻してからの記憶は少し飛んでいるところがある感じです」
――滑ることのできない期間はどれくらいありましたか。
「2週間は安静にしていてと言われたので、ついこの間まではあまり練習もせずにいました。基本、動いてすらいなかったみたいな感じで。つい先日、氷に乗るようになった感じです」
――東京選手権も近づいている中で氷に乗ることができなかったということで、気持ちとしてはいかがでしたか。
「最初から全日本選手権(以下、全日本)しか見ていなかったので、ブロックが近いという焦りは少なからずありますが、全日本には間に合うと思っているのでその焦りなどはあまりないです」
――氷に乗ることのできない間、退屈に感じたり早く滑りたいと思ったりすることはありましたか。
「もちろん早く滑りたい気持ちはありましたし、合宿で詰めて練習していた分、もったいないなと思ったりもしましたが、焦ってもどうしようもないといいますか、焦って取り返しのつかないことになったらそれだけは嫌だったので。父親も大きいケガを経験している人なので、そういうケガについてはした後にどれだけ後悔するかを自分に教えてくれていて自分も分かっていたので、そこは『ケガして滑れなかっただけだし』『2週間我慢すればいいだけだし』みたいに、そんなネガティブに捉えずポジティブに毎日過ごしていました」
――合宿は明大以外の合宿に参加した形ですか。
「中野先生(中野園子先生)の合宿に参加しました。父がもともと中野先生とつながりがあって、うちのチームは毎年ありがたいことに参加させてもらっていて、今年は東京の岡島功治先生と新横浜の佐藤紀子先生のチームが途中から参加していました」
――合宿ではどのようなことをしましたか。
「普段にはないようなハードな合宿だったので、氷に乗っている時間も普段よりも長くて、練習内容もハードでしたし、陸トレの時間も氷の練習時間と同じくらい設けられていました。体力強化が一番というのと、周りに坂本花織選手(シスメックス)や三原舞依選手(シスメックス)、壷井達也(神戸大)、三浦佳生(目黒日大)、住吉りをん(商2=駒場学園)などがいたので、高いレベルで練習できたのかなと思います」
――合宿で強化したいとしていたところはありますか。
「一番重点を置いていたのは体力強化の面です。普段、走り込みなどはしないのですが、合宿中はホテルからリンクまで毎朝、練習前と練習後に走って行ったり、陸トレもそこから1時間半やって、そこから氷の上だったり、氷の上でもパワースケーティング、クロスだったり走るトレーニングをこなして、曲かけも普段より回数多くこなしていたので、一番は体力強化になるのかなと思います」
――合宿参加前と参加後で変わったところはありますか。
「自分のプログラムに自信がついたのは間違いないかなと思います。あれだけたくさん滑り込みをしたので絶対に良くなっているという自信はつきました」
――取り組まれてきた4回転ジャンプについて、今はどのような状況ですか。
「本当に合宿で完成させるつもりで合宿で良くなってはいたのですが、練習できなかったのもあって今はまだ4回転の練習はできていないです」
――4回転ジャンプは何種類練習していましたか。
「合宿では3種類練習していました。サルコウとループとルッツやっていました。(ルッツが一番完成に近いのですか)そうですね。一番ルッツが得意で自信がありますし、ルッツに重点をおいてやっています」
――今までの練習の中で4回転ジャンプを成功したことはありますか。
「まだないです」
――今シーズン、4回転ジャンプをいずれか入れる予定はありますか。
「そうですね、自分的には試合でやりたい気持ちがすごく強いので、でもやはり昨シーズンから学んでいる完成していないジャンプは点数にならないというのがあるので、完成していないと入れられないとも思います。そこはなんとしてでも完成させて試合でやりたい気持ちは強くあります。4回転をやるためには絶対に失敗しない3回転ジャンプが必須で、その3回転ジャンプで質を上げて加点をもらいにいかないといけないのは本当に感じているので、そういう部分も重点的に、後半に3回転ジャンプが詰まっているのでそこの3回転ジャンプは失敗しないように練習しています」
――昨シーズンを終えた時点で感じていたスケートの課題を教えてください。
「昨シーズンは全体的に見るとどうしてもジャンプの安定感がなかったなというのがまず一つと、ジャンプだけでなくスピンやステップのレベルも試合ごとにばらつきが出ていて、そこも安定感が足りなかったと思います。本当に上位の人は自分の武器を持っていてそこだけは絶対に外さないというのが一つはあるので、自分はスピンやステップ、ジャンプの全てが安定せずにシーズンを過ごしていたなと感じています」
――今シーズンのSP(ショートプログラム)について教えてください。
「スーパーマリオの映画の曲から2曲使っています。すごく話題になった曲でもありますし、マリオのあのテンポの曲を聞いて知らない人はいないと思うので、見ているお客さんに親近感を持って演技を楽しんでもらえるようになるのではないかと思いこの曲をチョイスしました」
――げんさんサマーカップでのSPを振り返っていかがですか。
「内容としてはジャンプの面では大きなミスなく終えられて良かったなと感じていましたが、スピン全てでレベルを取りこぼしていたので点数につながらなかったと思っているので、あの演技に満足しているかと言われたら全然課題ばかりだなと感じていました」
――SPの見どころを教えてください。
「曲は誰が聞いても分かるような面白い曲を使わせてもらっているので、お客さんも楽しめる内容だと思いますし、最後のステップの曲はザ・マリオみたいな感じなので、笑って最初から最後まで見ていただけたらなと思います」
――衣装はどのようなものになりますか。
「マリオではなくクッパみたいな怪獣をイメージしています。まだ仮でデザインなどはできていないので自分もまだ分かっていないです。そのままいけば赤ではない衣装になります」
――FS(フリースケーティング)の『ムーラン・ルージュ』は、振り付けはどれくらいの期間で行いましたか。
「5日間です。プログラムの最初から始めて、その日にできるところまでやるというのを5日間やった感じです。1日4、5時間はやっていました」
――プログラムについて、振付師の方や曲をどのように決めたのか教えてください。
「振付師さんを先に決めて、振りを決めながら曲を決めながらみたいな感じで、振り付けしながら曲も作っていただいていた感じです。シェイリーン・ボーンさんは世界的な振付師の方ですし、一度は自分もお願いしてみたい気持ちがあって、今年チャンスがあったのでお願いしました。シェイリーンさん自身がスケートがすごく上手なので、振りを付けてもらうだけではなく、彼女の表現力やスケーティングですごく勉強になる部分がたくさんありました」
――FSは3曲の編成ですが、なぜその組み合わせになったのかをお聞きしたいです。
「シェイリーンさんに振り付けを担当してもらって、僕も初めてだったのでどういう要領で振り付けをするか分かっていなくて、すごく奇遇なお願いだったので曲もまだできずにスタートした感じで。曲もシェイリーンさんのフィーリングで作りながら、そこに振り付けを付けながらという感じで。本当に感覚的にあのようになったのかなと思います」
――『ムーラン・ルージュ』でプログラムを作ることは事前に決まっていましたか。
「事前にシェイリーンさんと相談して、どんなテーマがいいか話し合いをして、結果『ムーラン・ルージュ』になった感じです。自分の違った一面を見せたいとお伝えして、でも初めての振り付けだったので自分の希望を伝えるというよりかはお任せした感じではあります」
――このプログラムに対してシェイリーン・ボーンさんがおっしゃっていたことを教えていただけますか。
「先生も僕の振り付けをするのはもちろん初めてのことだったので探り探りだったのですが、自分がこの曲をどう解釈してどう表現するかというのを軸にこのプログラムを踊ってほしいということを言われました」
――FSを練習してきて今回のプログラムの良さや難しさで感じたことがあれば教えてください。
「すごくエネルギッシュな振り付けなので1年では足りないくらいの詰め込みというか、すごく詰め込んだプログラムなので、どこが完成なのか自分ではまだ分かってはいないのですが、完成形にもっていくのは今でも苦労している部分で。課題が山積みというか、できていない部分がいっぱいあるので、それは練習からやり応えがあるなと感じています」
――FSの見どころはどこですか。
「今まで自分がチャレンジしたことのないジャンルの曲だと思うので今までとは違った自分の一面が見られる、見てもらえるように、スローな場面であったり緩急だったりというのをこれまで以上にはっきりさせたり、エモーショナルな振り付けがいっぱいあるので、そういう部分を見ていただけたらなと思います」
――オフシーズンのお話に戻りますが、プリンスアイスワールド2023-2024横浜公演への出演を振り返っていかがですか。
「その時はジョジョ(『ジョジョの奇妙な冒険』)をやらせてもらって、初めてエキシビションという感じのプログラムをアイスショーでお客さんの前で滑らせてもらうことができて、宙返りもプログラムの中ですることができ、自分的には新しいチャレンジであっという間のアイスショーだったなと思います」
――プログラムの選曲理由をお聞きしたいです。
「あれも自分がアニメを見てすごくはまって好きというのが一番ですね」
――ジョジョはアニメも漫画もあると思いますがアニメで見たのですか。
「アニメです。(ジョジョの作品のどんなところが好きですか)他にも好きな作品はいっぱいあるのですが、アニメの作画が異質な感じで己の道を行っているなという感じがして、色使いや絵の使い方、本当に奇抜な感じですごくいいなと感じましたし、BGMがすごくかっこいいものばかりで感動しました」
――プリンスアイスワールドで高橋大輔さんと同じ回に出演されていました。その後に競技界引退を発表されましたが、どのように受け止めましたか。
「いちファンとしては競技会で見られない寂しさはもちろんあります。でもこれからアイスショーなどでスケートを見られるので、競技会で見られない寂しさ半面、ここからプロとしてもしかしたらジャンプとかも見られるかもしれないという楽しみ半分です」
――大島選手にとって高橋大輔さんはどのような存在ですか。
「シンプルに一番の憧れの存在です。今でも変わらないです。最初は滑りや演技に夢中になって好きになっていって、そこから最近ありがたいことにご一緒する機会が増えて、そのような機会で感じる高橋選手の人のよさ、あのレベルのトップ選手が親身になって僕たちの話を聞いてくれたりするので、そういうところが本当に素晴らしい人間味だなと思って、どこを見ても素晴らしい人だなと思います」
――まもなく東京選手権が始まりますが、今シーズンに掲げる目標を教えてください。
「全日本で12番以内に入って強化選手に戻るのが目標ですね」
――強化選手に戻って日本代表として試合に出ることを見据えていますか。
「そうですね、そこが一番の目標です」
――日本代表として国際大会に出るのが目標ということで、大島選手は国際大会をどのような大会と捉えていますか。
「自分はまだ一度も海外の試合に出たことがなくて、ジュニアの時に2回選考されましたが時期が悪くて2年ともなくなってしまったので、そこには未練といいますか憧れという思いが強いです。日本を背負って海外の試合に出たいという思いは誰よりも強いと思います」
――海外の人にも自分のことを知ってもらいたいですか。
「もちろんそれもありますし、何がと言われたら一番はジャパンジャージーが着たいというのが一番ですね」
――大学生のうちにその願いをかなえたいところですか。
「そうですね、かなえたいというよりかなえる気で練習していますし、それを目標に頑張っています」
――成績を残すために今のご自身に必要なものは何だと考えていますか。
「安定感が今一番自分に必要なものだと思っています」
――応援してくださる皆さまに向けてメッセージをお願いします。
「本格的なシーズンがいよいよ始まるなという気持ちで自分も皆さんと同じでわくわくした気持ちでいっぱいです。初戦から高いレベルで試合ができるので、自分がその中でどれだけいい演技をしてどれだけの点数が取れるのかという部分に期待してもらって、自分自身も、見ている皆さんも楽しんでもらえたらなと思っています」
――ありがとうございました。
[守屋沙弥香]
(写真は本人提供)
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