(8)シーズン直前インタビュー 住吉りをん

 長いオフシーズンを越え、ついにシーズンが開幕する。今シーズンからは部練を積極的に取り入れ例年以上に結束力の強いチーム明大。日本学生氷上選手権の連覇、そして各選手が掲げる目標の達成に向けて何を思うのか。本インタビューではそれぞれの選手の思いをお届けする。

 

(この取材は9月13日に行われたものです)

 

第4回は住吉りをん(商2=駒場学園)のインタビューです。

 

――夏の明大合宿には参加されましたか。

 「していないです。コーチのチームの方での合宿が被ってしまったので、そちらに参加しました。盛岡に行って、坂本花織ちゃん(シスメックス)などと、コーチの中野先生(中野園子先生)の合宿に参加させてもらいました。初めて参加したこともありきつかったのですが、いつもの練習と違うメンバーだし、違う内容だったので楽しかったです」

 

――収穫したものはありましたか。

 「やはりジャンプです。何がなんでも降りる、成功させる。形だけではなくて、何としてでも降りるという粘り強さみたいな練習ができたので、花織ちゃんの強さはそこなのかなと感じました」

 

――フィギュアスケート以外ではどんな夏休みでしたか。

 「ほとんどスケート漬けだったのですが(笑)、友達と少しだけ、1泊2日で旅行に行きました。あとは誕生日を友達にも家族にも祝ってもらいました」

 

――お酒は飲みましたか。

 「飲みました。でも想像より弱かったです(笑)」

 

――今シーズンのSP(ショートプログラム)について、今の完成度や目指しているものを教えてください。

 「インドらしい手の表現が一番難しいところで、本当に小さな角度の違いでインドらしさが薄れてしまいます。そこを今、一つ一つ細かいところを練習していて、ついおとといまでブラッシュアップしてもらっていました。ブラッシュアップも、定期的にしてもらっていますが、完成度としてはまだまだで、半分ぐらいかなというところです。試合も重ねながら、調整していけたらなと思っています」

 

――インドの動きを取り入れることにあたって、映画などを参考にされていますか。

 「ミーシャ(ミーシャ・ジーさん)が送ってくれたインド舞踊があって、それはクラシックなインド舞踊ではなくてモダンインディアンなのですが、それを参考にしています。最近のインド舞踊をボリウッドと言うのですが、ボリウッドの教室の先生に動きを見てもらったりもしました」

 

――FS(フリースケーティング)についてはいかがですか。

 「大々的に振り付けが変わった部分もあるので完全に滑り込めるようにしたいと思っています。この半年でかなり滑り込む練習ができてきたかなと思っていて、FSの方が今は自信がある状態です」

 

――東京夏季大会では4回転ジャンプの着氷をしましたが、4回転ジャンプについていかがですか。

 「ジャンプ単体での練習では確立がものすごく上がっているのですが曲をかけた時の練習で入れるというところを今一番重点を置いて練習しています。このシーズンに入ってからは、その曲の中でいかに確率を上げるかという練習になるかなと思っています」

 

――やはり単体で跳ぶのとは体力的に違いますか。

 「体力的には、(プログラムの)2本目なのでそんなに疲れているところではないのですが、どうしても気持ちの問題だったり、タイミングの取り方のちょっとしたズレみたいなのが出てきてしまうかなというところです」

 

――跳ぶために意識していることはありますか。

 「回転のつけ始めが遅くなってしまって、後ろに引っ張られることが多いので、とにかく上半身の動きを早くすることを一番意識しています」

 

――今シーズン特に力を入れたい試合はありますか。

 「やはり全日本選手権(以下、全日本)かなと思っています。昨年度グランプリシリーズ(以下、GP)は自分なりに頑張れたのですが、全日本で一番悔しい思いをしたので。もちろん、GPで手応えをつかむために成長の試合にはしたいですが、それを一番発揮するのが全日本かなと思っています」

 

――昨シーズンGPでは2戦連続で表彰台に立ちましたが、世界で戦うのはどのような感覚なのでしょうか。

 「昨シーズン、3位に入ることはできていましたが、どちらも自分のベストな演技、その結果だったわけではないので、自分の持っているものを全て出し切ることができたら、本当にもっと上を狙えると思っています。ベストではない演技で3位だったということはもっと上に行けるし世界で戦えるなと、そういう意味での自信が持てました」

 

――具体的には今、何が足りていないと思いますか。

 「昨シーズンはずっと、試合になると体が思うように動かなくて、メンタルの部分で結構苦しみましたが、今シーズンはその点がかなり克服されて、試合も自信を持って練習と同じような体の動かし方ができるように改善していけている実感があるので、このままいけたらまた違う結果になるかなと思っています」

 

――今シーズンはシーズン開幕前から試合経験が多く結果も出てきていますが、気持ちとしてはいかがですか。

 「試合にたくさん出た理由として昨年度の課題、試合の本番になった時に力が出し切れないことを克服するためというのがあったので場数を踏もうと思いました。試合を練習と捉えるのはいいかどうかは分かりませんが、場数を踏むことによって試合での気持ちのコントロールの仕方を練習することができたので、たくさん試合に出て良かったなと思っています」

 

――スケートを練習していて嫌になることはありますか。

 「今日(練習に)行くのが面倒くさいなとか、疲れたなということはあるのですが、スケート自体が嫌、ということはないです。リンクに行けば結局練習をやり過ぎてしまうくらいです」

 

――モチベーションは何ですか。

 「何か難しいことにチャレンジする練習みたいなのが一番好きなので、もちろん、できることを淡々とコツコツ練習するのも好きは好きなのですが、スケートは、できないものが絶対になくならないので。ジャンプだけでなくて、スピンもスケーティングも、とできないものが一生あるスポーツだから楽しいのかなと思います」

 

――自分の強みは何だと思いますか。

 「元々きれいな所作ときれいなスケートが強みだったのですが、そこに今年度はスケーティングの力強さを出せるように佐藤紀子先生にすごく見てもらって、そこを強化しています。一歩が伸びるだけではなくて、力強く伸びるスケートを今年度自分の強みに追加できたら、できそうだなと思っています」

 

――何を変えたから力強くなったというのはありますか。

 「重心が浮いてしまうと、軽く見えてしまいますが重心を下に下げて氷をしっかりつかんでいるようにするところが、大事な感じです」

 

――最後にファンの方にメッセージをお願いします。

 「私がずっと思っていることとしては、ファンの人が私の演技を見て、勇気を得たり、頑張ろうと思ってもらいたいです。FSでも最後の最後まで力強く滑るように、頑張っているので、滑りだったり表情だったりから、勇気を持ってもらえたらうれしいなと思います」

 

――ありがとうございました。

 

[新村百華]