(28)栗田大輔監督コメント/ヴェルダー・ブレーメン加入契約締結記者会見

2023.07.23

 7月20日、明大紫紺館にて佐藤恵允(文4=実践学園)の入団記者会見が行われた。会場には多くのメディアも出席。会見では、異例とも言える海外挑戦への決意を語った。

 今回は明大サッカー部の栗田大輔監督のコメントをお届けします。


 先日、7月5日に、ドイツで私と佐藤恵允が先方と契約のサインをしてまいりました。活動については、8月1日からの加入になるので、明治大学体育会サッカー部は7月31日をもって退部をするということになります。大学は2024年3月まで明大生として、前期のテストも受け、後期の必要最小限の単位を取り卒業するという形でドイツの方に渡ることを決めました。

 恵允の持つビジョンを昨年秋に確認し、強い意思を感じ取ったので、それに対して、1番最短のルートはどこだろうというところから動き出しました。海外に挑戦するのはもちろんですが、本人の目標をどうやったら達成できるのだろうということを考えました。U―22の代表活動、そして明大でも10番を背負ってチームの中心として活躍していたので、日本国内のさまざまなJリーグのクラブの方や他の海外の方からも声をかけていただきました。私は恵允については一切ノーコメントということで貫いてまいりましたので、情報を開示できず各クラブの皆様には大変失礼な対応であったかもしれません。さまざまな情報が錯綜(さくそう)することによって、恵允の持つビジョンに影響が出てしまうのではないかと思い、今回の件は(慎重に)動いてまいりました。昨年2月にドイツに練習に渡り、ブレーメンにも練習参加をしております。その後、6月に正式にオファーを出したいというお話をいただきました。

 私としても、やはり全ての学生が大事なので、大学の監督として次のステージに責任を持って送り出さなければいけません。海外に行けたから良い、Jリーグのクラブに行けたから良い、ではなくその先にどうすれば成功できるのだろうか、選手たちが安心して思い切ってサッカーができる環境なのかということを、自分の目で確かめたうえで背中を押してあげたいという思いでした。先方とも2回ほど面会をしまして、サッカーに対する考えや恵允に対する期待、そしてどのような位置付けで恵允を使っていくのかということを何度も話しました。その中で、今回はトップチームの加入という条件の提示がありました。アマチュアリーグで選手としてやるのは選手自身のレベルが落ちてしまうということを先方にも伝えました。そのうえで、ケガ人やいろいろな事情によって、良ければすぐにトップチームに上げるというような位置付けの選手だと、だから恵允が欲しいのだということを明確におっしゃっていました。国内のJリーグを経由して、海外に挑戦もあるかもしれないですが、5大リーグのブンデスリーガ1部で出場できるチャンスがあるならば、そこを避ける理由がないということで、恵允の意思も確認し、ぜひ挑戦したいということで、背中を押しました。(その後)学校からも8月にドイツに渡るということをご理解いただきました。もちろん、先ほどお話をした通り、3月に卒業なのでそこまで明大生としての自覚、責任があります。そういったものを理解した上で送り出していただきまして、本当に感謝しております。

 恵允自身はやはり明治愛、サッカー部の情熱がとても強いので、1月の最後のインカレまで終わって、それから向こうに行きたいという話を私にしました。しかし海外に行くというのは、まずそこでコミュニケーションを取らなければいけないし、 環境に慣れなければいけない。そういった中でこの半年は非常に大きいのではないかと考えました。シーズンの初めからブレーメンに入って数試合やれば、この半年でトップチームに上がるかもしれない。この半年は実は人生においてものすごい大きな半年になるのではないかという話をして、今回の加入を私の決断で押しました。 

 本当にチームの中心であり副キャプテンでもあるので、ここでエースが抜けるのは非常に大学としては痛いのですが、やはりそれもまた一つ、明大としても結束が強まり、刺激になるのではないかという、ある意味ポジティブな効果を感じます。絶対この先のリーグ戦を勝ち抜いて、いいチームで終わりたいという思いが強いです。

 恵允についてですが、もちろんサッカー面では攻守にわたるハードワークや突破力、精神力があり、ゴールに向かっていくプレーが特徴の選手です。やはり今回海外に挑戦するにあたって海外に向いているなという理由が、パッションがあること、コミュニケーションスキルが高いことです。やはり英語が堪能なので、向こうはドイツ語ですが、監督もコーチの方も英語を話すので、練習中、戦術の指示も選手間で英語で理解することができます。日本の選手が海外に行った時、まず言葉の壁があってコミュニケーションの場面でとても大きな弊害になるので、そこの部分でリードできると思います。それともう一つ、恵允の場合は実践学園から、ある意味無名で明治に入ってきました。そこから2年で代表に入り、U―22の代表候補まで上り詰めています。壁が高くなればなるほど、それを吸収していく力があり、目の前のチャンスをつかめる能力がある選手だと思っています。臆することなく、遠慮なくドイツで暴れてきてほしいなと思いますし、自分の夢に向かって突き進んでほしいと思っております。大学サッカーにおいて、長澤和輝(現名古屋グランパス)くんとか流経大にいた小池裕太(現横浜F・マリノス)くんなど海外に挑戦している選手もいますが、このように5大リーグの1部に行くのはある意味初めてだと思います。私も常日頃から『明治初、世界へ!』ということを監督就任の時から追求していますが、大学サッカーからこのような選手が出てきたことはとても大きな意義がありますし、挑戦することで何か実績が生まれるのかなと思っています。以上で私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。