(59)東京六大学対校大会 国立競技場開催までのマネジャー陣の尽力/東京六大学懇親会

2023.06.26

 例年とは異なり国立競技場での開催となった東京六大学対校大会(以下、六大学)。その開催の裏ではマネジャー陣の奮闘があった。その苦労を労った懇親会で、六大学を支えた方々に国立競技場開催に至るまでのお話を伺った。

 

 例年は慶大日吉キャンパスで行われていた六大学。昨年12月、慶大が持ちかけた「国立競技場で六大学を開催しないか」という言葉から全ては始まった。「六大学の持つポテンシャルは例年通りの開催では収まっていないんじゃないかというところが発端だった。かつ他にも運営の体制を見直していきたいという中で国立競技場での開催をトライしてみようという流れだった」(吉川昂希・慶大主務補佐)。当初は各校国立競技場での開催は厳しいのではないかという反対の意見が多かった。それでも「五大学は結構厳しいかなという雰囲気だったとは思うが、慶應大学さんがすごく六大学を盛り上げたいという思いがあった。『六大学が今は消化試合みたいな感じになっちゃっているんじゃないか、それなら今やるしかないよね』という話になって進んだ」(齋藤司・明大主務)。開催まで半年を切った中、急ピッチで準備を進めていく。

 

(写真:慶大・吉川昂希主務補佐)

 

 それでも国立競技場で陸上大会を開催するにはさまざまな課題が山積みだった。主には国立競技場を借りる資金面、そしてノウハウのない学生が主体となって行う運営面にあった。そのため資金面では人脈のある大人に協力を依頼。監督陣などの協力も得ながら交渉を行い、協賛金を集めてきた。運営面では関東学連陸上競技連盟(以下、関東学連)に協力を仰いだ。というのも学生が主体となり国立競技場で陸上大会を開催したことがあるのは関東学連のみなのだ。実は国立競技場はその他の競技場と比べて運営が全く異なるという。「部屋も多いし競技場内を移動するのも時間がかかる。どこのエレベーターを解除するのか、トイレもたくさんあるので全部開けるのか閉めるのかなど、規制をするのが一番大変」(小谷野香澄・関東学連)。「国立競技場って結構特殊な競技場なので、そこの構造が分かってないと運用も考えられない」(中山葉音・関東学連)。そのため3月には関東学連が主催となり国立競技場で開催された春季オープン競技会の運営の様子を、慶大や幹事校である法大が直接見学に。開催当日に向けて事前準備を重ねていった。

 

(写真:関東学連・左から月岡葵梨香、小野谷香澄)

(写真:関東学連・中山葉音)

 ついに迎えた六大学当日。マネジャー陣はその日も大会の裏で奮闘していた。「学生主体というのもあって、基本的にトラブルの連続。(昨年度明大が幹事校の際は)前日も幹事の先輩とファミレスで夜中までずっと修正作業をしていた。当日も召集場所でうまく回らないだとか、連絡が行き渡らないだとかトラブルが多かった。思い通りにいかなくて、瞬時の対応が必要な場面が多かったのが大変なところ」(大森優人・明大副務)。大会運営においては人員不足の中、急なトラブルへの対処に加えて、過密なスケジュールをこなすことに必死だった。「自分ではそのつもりはなかったんですけど、当日も運営に来るたびに『顔色が悪くなっているね』って言われて。いろんなところを走り回っていましたね」(吉川)。課題は残ったものの「みんなの頑張りのおかげで、できることにはできたなというのが率直な感想」(中山)。国立競技場での六大学開催は、選手を含め多くの人に好評で無事成功させることができた。

 (写真:明大・左から大森優人副務、岡田明香里マネジャー、齋藤司主務)

 

 今大会の幹事校として運営に携わってきた法大は「今まではほとんど幹事校だけで進めていたが、本当にいろんな大学の方に今回助けていただいた。なのでこの雰囲気のまま次は(幹事校、副幹事校である)慶應さんや早稲田さんを私たちがサポートできるようにつなげていけたらいいなと思う」(山﨑真美・法大副務)。例年は幹事校がメインとなり大会運営を行っていた六大学。しかし今大会をきっかけに東京六大学間で連携をし輪が深まっていった。それに加えて「選手は1人で競技に出られているんじゃない。スタッフがいて、マネジャーがいて、支える人がいてマネジメントをやって競技が成立する。自分一人で試合に出られると思ったら大間違い」(田村厚顧問)。マネジャー陣やスタッフ陣など多くの人の支えによって開催された六大学。支えてくれる方々への感謝の気持ちを再確認する、非常に意義のある大会になったのではないか。

 

[萩原彩水]

 

(写真:法大・左から山﨑真美副務、堀井美空マネジャー)

 

東京六大学、関東学連の方々のコメント

明大・大森

――他大学とのつながりに関してはいかがでしたか。

 「立教大学さんと法政大学さんは毎年対校戦があって関わりはあるんですけど、今回国立で開催しようというのを一緒に目指したからこそ、六大学のつながりがより深くなったのかなと思います」

 

明大・齋藤

――開催に向けて進めていく中で大変だったことを教えてください。

 「僕は主に見ているのが長距離なんですけど、寮の引越しがあってとにかく忙しくて、岡田に情報をまとめてもらうのを手伝ってもらったりしていました。その時期にやることが結構多く重なってしまったので両立することの難しさが個人的にはありました」

 

明大・岡田

――来年度もまた国立競技場で開催したいですか。

 「選手からも熱い希望がありますし、やっぱり第一はそこだと思います。選手が楽しんで競技ができたというのが今回すごく良かったなと思うので来年も頑張ります」

 

法大・山﨑 

――国立競技場で開催してみていかがでしたか。

 「選手は『国立でやって良かった』って言ってくれました。その分マネジャーとかは準備が結構大変なんですけど、選手が国立で走りたいと思ってくれるなら来年も頑張って開催したいなと思います」

 

関東学連・小野谷

――来年度以降どのような大会になってほしいですか。

 「私は4年なので、来年は観客として行きたいです。楽しそうな大会だなと思いました。学生のアイデアってすごいので、もっと計画的にやればイベント性を持って有名な選手をどう盛り上げるかみたいなこともできますし、来年度は観客目線で大会の盛り上げ方に期待しています」

 

関東学連・月岡

――関東学連としては今後箱根駅伝などの活動もあると思います。どのようにしていきたいですか。

 「箱根駅伝は今回100回の記念大会になります。ただ記念大会と言いつつも浮足立たずにしっかり堅実にやっていきたいなと思っています」

 

取材にご協力してくださった東京六大学、関東学連の皆さん、誠にありがとうございました。