(53)全日本予選事後インタビュー①/園原健弘監督

2023.06.20

 15年連続でつなぎ続けた伊勢路への道は断たれた。選手、スタッフは死力を尽くしたものの、惜しくも栄光の地へは届かなかった。だが、下を向いてばかりではいられない。今回得た反省はきっと箱根路への足掛かりとなるはずだ。今回はレース後の競走部の声をお届けする。

 

 第1回は園原健弘監督のインタビューです。(この取材は6月17日に電話で行われたものです)

 

――本日の試合の総括をお願いします。

 「一言で言うと、ちょっと予選は通ると思っていたので残念です」

 

――チームとしても予選を通るのが前提で、どれだけ順位を狙っていけるのかという雰囲気はあったのでしょうか。

 「順位というよりも厳しい戦いになるというのは、レース前から予想していましたけど、予選を通過できないということはないだろうかなというのは思っていました。ただ、結果見るとわれわれの現状認識が甘かったんだなというのを痛感させられました」

 

――レース全体を振り返っていかがですか。

 「全体的な流れとしては、今年は大エースがいないので4組までにどちらかというと貯金を作っておきたいという流れだったんですよね。だから3組まで終わった時点で、やっぱり3番4番手ぐらいにはいて、最終組で少し詰められて7位以内に入れればいいかなというような想定でした。ですが1組が終わった段階で5位でしたから、1組目から崩れちゃいました。2組、3組がちょっと想定以上に悪い結果だったので、まあしょうがないと。最終組では挽回するだけの力はないだろうなという形で見ていましたけどね。全体的に一言で言えば力不足だけど、力不足の中でも潜在的な力はあるはずなので、それを出させてあげられなかった、あるいは出し切れなかったという私のマネジメント能力のなさを痛感しました」

 

――1組目に出場された児玉真輝選手(文4=鎌倉学園)は復帰レースでした。

 「もうちょっと期待したところはあったんですけど、故障上がりでよく走ってくれたと思います。1組目はすごく暑い中でしたから、彼には貯金を作ってもらえればいいかなと思っていました。児玉は上出来のレースだったんじゃないですかね」

 

――実力的には3組目、4組目に来るような選手だと思います。1組目に出場した経緯は何かありますか。

 「久しぶりで、故障上がりで初めてのレースだったというのと、直前まで教育実習をしていたので、最後一緒に練習できないということもありました。そういった意味で不安が全くないわけじゃないので、1組目で貯金を作れればなというところです」

 

――やはり教育実習の影響で杉彩文海選手(文4=鳥栖工)も欠場されたのですか。

 「そうです。教育実習はこの時期やるのでうちの大学だけじゃないかもしれませんし、それから杉と児玉がこの時期教育実習をやるというのは去年から分かっていたことで、直前になって急に決まったことじゃないです。なのでそれに対してきちっと他の選手の底上げができなかったところに尽きますし、これは想定内の事態なので、そこは大きな問題ではないですね」

 

――4組目は周りにも強い選手がいる中1、2年生の起用ということで、そこに関してはいかがでしたか。

 「そこが問題なんですよね。だから綾(一輝・理工1=八千代松陰)をあのような厳しい立場で使わざるを得ないという、そのチーム状況にしているということが今回の敗因なんですよね。だから今回のレースの各選手どうのこうのというよりは、こういうメンバーでエントリーせざるを得なかったというところに問題があるので、最終組の綾もよく走ったと思いますよ。綾もよく走ってくれたし森下(翔太・政経2=世羅)もよく走ってくれたし。ただ綾も前半ちょっと突っ込んだ部分がありましたけど、最後まとめてくれました。今大会で唯一本当に、綾が将来エースにまでいける選手になるだろうなという予感をさせてくれたレースだったので、暑い中よく頑張ってくれたと思います」

 

――3年生の尾﨑健斗駅伝主将(商3=浜松商)はプレッシャーがあったと思いますが、今回の走りはいかがでしたか。

 「尾﨑のところあたりがもうちょっとやってほしいかなというのはありましたけど、彼もいろいろもがいている最中だと思うので、この悔しさをバネに一皮むけて本当にエースになってほしいなと思います。今回のレース1本で個々の選手を評価できるようなチーム状態じゃないと思いますし、やっぱり今回のレースだけで良かった駄目だったという評価はあんまりしたくはないので、よく選手は頑張ってくれたなと思っています」

 

――今大会での収穫を教えてください。

 「収穫は現状認識がわれわれ相当楽観的、楽観的にしていたつもりはないんだけど、楽観的な部分を本当に捨てないと秋の箱根駅伝予選会(以下、箱根予選)も厳しいなという、現状認識をもっとしっかりしなさいというのを突き付けられました。ここから立て直す時間はありますから、そこに向けてしっかり課題を抽出してやるべきことをやっていきます。今回の東農大を見ても本当に頑張っていたし、われわれ以上に頑張っているチームがあるなというのを認識できたので、われわれも負けないで頑張ろうという意識になってきました」

 

――近年は綾選手など高校で実績を残した選手が入ってきていると思います。今後のチームのマネジメントとしてはどのようにしていきたいですか。

「やっぱりうちの場合はフィジカル面やコンディショニングのケア面でのトレーニングなど、科学的なアプローチが遅れているなというのは感じています。大学としてもそういう学科がないですし、そこの部分が今まで受け身的というか、発生したことに対する対処がメインでした。ですがやっぱそこの部分のアプローチなくして強化はできないので、そこをしっかりしてあげないといけないなと思っています。せっかくいい素材、いい選手が入ってきても練習頑張っちゃうので。彼らは強くなりたいという思いを持っていますから、すごく一生懸命頑張ってやるんですよね。その頑張りが行き過ぎてケガとか故障、ケガとか故障しちゃうとなかなかそこから復活できないという部分があるのでそうならないように、あるいはそうなった場合にはしっかり組織として立て直してあげたいと思います」

 

――今後は短距離も含めてチームでの戦いもあると思います。そこに向けてはどのようにしていきたいですか。

 「やっぱり人間の個の強さをもっと強くしたいかな。がむしゃらさや打たれ強さ、そういうところの強さをもっと身につけるような組織運営というのかな。それは練習の部分だけじゃなくて外部の講師を招いて講習会をしたり、あるいは学校の友達ともっとしっかり交流したりとか、いろんな刺激を受けてもらいたいです。ひたむきさはあるから、もっとがむしゃらさとか打たれ強さとか、多少もっとわがままになっていいのかなというようなところもあって、そういうところも引き出せるようにしたいなと思っています。そういうのが競技力にも生きてくるんだろうなと感じますし、そこに対するアプローチがなかなかできていないので、自分自身一生懸命やっているつもりでも、まだまだ甘いんだなということを痛感させられましたね」

 

――箱根予選に向けての意気込みをお願いします。

 「もう箱根予選は失敗できないので、背水の陣というかそんな覚悟で臨まないといけないと思っています。レース後に話したのは、もう1回やっぱり今の練習含めて、練習の方は山本佑樹駅伝監督が見直してくれるんだろうけど、生活態度やいろんなことの取り組みに対してもう1回見直さないと、今の延長線上に箱根予選の通過はないんだろうという話をしました。しっかり課題を改善して、ここでいつも明スポさんのインタビューにしっかり頑張りますって決意表明したところで現実は何も変わらないので、結果を変えるためには現実が変わるような小さな積み重ねですよね。だから明日からでも何かできること、マイナスになっている悪い習慣はしっかり直しながらいろんなことをやっていきましょうねということですね。一足飛びで何かを変えるというのは難しいかもしれないんだけど、ちょっとずつできるところからまずは手を付けて変えていきます」

 

――ありがとうございました。

 

[萩原彩水]