(52)古豪復権なるか 紫紺が伊勢路に挑む/全日本予選展望

2023.06.16

 三大駅伝の一つである全日本大学駅伝(以下、全日本)。今年度はその出場を懸けた予選会からのスタートとなった。予選では各校8人が1万メートルを走り、その合計タイムの上位7校が全日本への出場権を獲得する。明大は資格タイムで3位と本戦出場圏内に位置しており、16大会連続の出場に期待が高まる。

 

 今の明大を語るには杉彩文海(文4=鳥栖工)が外せない。昨年度の箱根駅伝(以下、箱根)で7区区間賞、先月行われた関東学生対校選手権(以下、関東インカレ)ではハーフマラソンで4位入賞を達成。これまでの努力が実を結び、一気に大学トップランナーの仲間入りを果たした。昨年度の全日本は出走かなわず、今年度が杉にとって最初で最後のチャンスとなる。今回は補欠登録に回ったものの、本戦で戦い抜くために欠かせないピースの一人だ。

 ケガに苦しみ、今年度はいまだ大会出場のない絶対的エース・児玉真輝(文4=鎌倉学園)。昨年度の全日本では2区区間4位の快走を見せたものの、ケガの影響で箱根はエントリー止まり。箱根後の報告会では涙を流すなど不完全燃焼なシーズンとなった。それでも、1万メートルの自己ベスト、28分22秒27はチーム内トップ。持ち前の勝負強さを武器にチームをけん引する存在に変わりはない。ラストイヤー開幕戦で好スタートを切り、紫紺のエース完全復活となるか。

 本戦出場には、やはり選手層の厚さが大きなカギを握る。次世代エース・森下翔太(政経2=世羅)もチームの主軸として好タイムでのフィニッシュが期待される選手だ。先月のゴールデンゲームズinのべおかでは日本トップレベルの選手と渡り合い、胸を借りて大きく成長した。 そして、期待のルーキー・綾一輝(理工1=八千代松陰)と大湊柊翔(情コミ1=学法石川)は、共に昨年度の全国高校駅伝でエース区間の1区を走るなど実績は十分だ。さらに、先月のU20日本選手権で綾は5000メートルで4位入賞を達成。同種目に出場した大湊も9位でフィニッシュし、大学デビュー戦で大健闘を見せた。また、箱根出走経験を持つ尾﨑健斗駅伝主将(商3=浜松商)、吉川響(文2=世羅)、堀颯介(商2=仙台育英)といった頼もしいメンバーもエントリーされている。全日本予選は出走する8人が各組2人ずつ4組に分かれて出場し、組が終わるごとに順位が更新されていく。そのため、各組にどの選手を配置するかにも注目だ。

 過去には脱水症状などで棄権者が出たこともある今大会。しかし、1人でも完走できなかった時点で伊勢路への希望は途絶えてしまう。全員が欠けることなく、本来の力を出し切れるか。新体制の真価が問われる。「全日本予選の通過は絶対」(尾﨑駅伝主将)。不屈不撓の精神で紫紺の襷を伊勢路へ届ける。[原田青空]

明スポPICK UP RUNNER

 今大会の注目選手は溝上稜斗(商3=九州学院)だ。トラックレースでは現在5試合連続で自己ベストを更新しており、好調を維持し続けている。溝上は陸上の強豪・九州学院高出身だが、大学1、2年次はケガもあり満足に練習できない時期が続いた。しかし今年度は継続して練習を積むことができており、5月の関東インカレでは大学入学後初めてとなる主要大会への出場を果たした。

 「大崩れしないのは自分の持ち味」。爆発力のある選手が多い明大にとって、安定感のある走りをする溝上は貴重な存在だ。関東インカレではレース中盤で先頭集団から離されたものの、その後は自分のペースを刻み自己ベストの29分15秒05でフィニッシュした。それでも「後半の粘りはできるが、最初にどれだけ先頭集団でいけるかというのが課題」。さらなる高みを目指し課題を克服できれば、学生トップランナーの証でもある28分台も見えてくる。一皮むけた姿を予選会で見せられるか。明大の新たなエース候補がチームを伊勢路へと導いてみせる。[萩原彩水]