(11)4年生引退インタビュー 松下竜巳

2023.02.09

 今年度悲願のグランドスラムを達成した明大卓球部。名実ともに卓球界の王者に君臨した卓球部をけん引してきた4年生もついに卒業を迎える。今回はそんな4年生全員にそれぞれ思いを伺った。

 

(この取材は2月5日に行われたものです)

 

第4回は松下竜巳主将(商4=野田学園)のインタビューです。

 

――4年間で一番思い出に残っている試合を教えてください。

 「自分が出た大会だとやはり最後の全日学(全日本学生選抜選手権)です。最後の集大成ということもあって臨んだ大会だったのですが、結果2回戦でフルゲーム負けしてしまってなんだか自分らしい終わり方だなと思ったのが印象的でした」

 

――自分らしいというのは、松下選手はご自身をどのように思っているのですか。

 「いつも競って負けて、結局最後は自分でミスしてしまう終わり方が自分らしいなと思いました。最後の試合だし、ランクに入りたいという目標もあって、練習も4年間で一番した時期だったので特に気合は入っていました」

 

――今年度達成したグランドスラムはいかがでしたか。

 「正直とてもうれしいですね。春のリーグ戦(春季関東学生1部リーグ戦)も戸上(隼輔・政経3=野田学園)・宇田(幸矢・商3=大原学園)がいない中での優勝でしたので、その部分でもうれしいですし、今までコロナで試合が2年間開催されなかった分をこの年にぶつけたという気はしました。自分たち4年生の今までの2年間をぶつけられた気がします」

 

――4年間で成長したことはありますか。

 「卓球の面では、それぞれの技術は高くなったと思います。その他の人間的な部分では、人をよく見ることができるようになったことだと思います。やはり、最後の年にキャプテンとしてやってきて人をよく観察してやっていくことを意識していたのでその部分で成長したのかなと思います」

 

――キャプテンとして、苦しいと感じたことはありましたか。

 「勝たないといけないというプレッシャーはありましたが、キャプテンをやっていて苦しかったことはないです。みんな前向きで同じ方向に進んでいた気がするので、意見の違いや考え方の違いは特に起きず、またみんないい人たちなのでまとまった1年だったと思います」

 

――キャプテンとして特に頑張ったことは何ですか。

 「頑張ったことは、やはりチームの雰囲気づくりを一番意識していました。卓球では戸上と宇田がいるので、自分が引っ張っていく必要はないかなと思っていました。でも雰囲気というのは自分にしかつくれないものがある気がしたので主将らしい、いい雰囲気づくりを意識しました」

 

――どのような雰囲気を意識したのですか。

 「楽しさの中にも真面目にやるという感じの雰囲気をつくろうと思っていました。やはり自分の性格的にも、厳しい雰囲気よりも楽しく笑えるような明るい雰囲気を目指しました。練習の時も自分も最後まで残ってしっかり後輩に自分の行動を示し、時には全体が中だるみしてしまっても自分が積極的に声を出して練習するなど意識しました。楽しい時と真面目に練習するそのギャップが大事といいますか、そこを意識しました」

 

――今までの4年間をどのような一言で表しますか。

 「『信じる』という言葉ですかね。キャプテンとして仲間を応援しながら信じたり、自分がプレーしている時は自分を信じていたりしました。日常生活でも信頼して仕事を振ったりしたので、そういったことで信じるとか、信頼することが多かったと思います。例えば秋のリーグ戦(秋季関東学生1部リーグ戦)で戸上・宇田がいなくなってからの3戦は最後の選手まで(順番が)回って、ラストの平賀(平賀龍生・文2=明豊)をとにかく信じ抜いて応援していました。あの試合はしびれましたね。インカレ(全日本大学総合選手権・団体の部)での5番の手塚(手塚崚馬・政経2=明徳義塾)は、相手も4年生で向かってくる選手でしたが『最後任せたぞ』と信じて応援しました」

 

――どのような同期でしたか。

 「一言で言って、今まで小学生の時から卓球部でもクラスでも同級生はいましたが、大学の同期はその全ての中でも一番楽しかったし、いろいろ話をしたりした同期かなと思います。主務の向井(向井慧太・国際4=北海道科学大)とは団体戦のことや、チームのことで

たくさん話すことがあり、よく2人で話しながら『こうしたいね』とか『どうしよう』とか問題を共有し合ったり、時には他の4年生も交えて話したりしました。話す時間が、1年生の時もあったのですが、4年目は特に増えた気がします。そういうところがすごくいいなと感じます」

 

――後輩に対してはどのような印象を持っていますか。

 「やはり来年度もグランドスラムを達成してほしいという気持ちはあります。まあ主将が戸上なので僕は心配するより応援する気持ちの方が強いです。来年度も気負わず頑張ってほしいです。みんな強いので大丈夫だとは思っています」

 

――卓球において挫折を感じることはありましたか。

 「1年目の新人戦(関東学生新人選手権)で、ダブルスもシングルスもランクに入ることができなかったことです。優勝を目指していて、正直心のどこかでは『ランクには入れるだろう』という軽い気持ちがあったのですが、それまで負けたことがなかった相手に初めて負けてリーグ戦にも出られなくて。その時が一番苦しみましたね。1年目の新人戦前は学校が忙しくコロナ前ということもあり新しい生活に慣れず、練習があまりできていませんでした。あの時もっと自分にストイックになっていたらと、後悔が残っています」

 

――その新人戦で後悔したことから、自分の中で変えたことや意識したことはありましたか。

 「新人戦の後からは何とか食らいつこうと思って、練習もたくさんしました。居残り練習でも先輩に頼まれたりしたらすぐ動いたり、動いて先輩の練習相手を率先してやったり。コロナの時もできるだけトレーニングルームや練習場にいるようにして、多少なりとも自分に厳しくなったのではないかなと思います」

 

――大学を卒業したらどうされるのですか。

 「卓球の道にこのまま進もうと思っています。自分の目標としては、選手としてほどほどにやりながら、指導の道に進みたいです。縁があって、ヨーロッパの方の卓球クラブに

勉強しに行かせてもらう機会ができそうなので、いろいろと学んで日本に帰って来られたらと思っています」

 

――明大卓球部に入ってよかったと思うことがあったら教えてください。

 「やはり強い人と関係を築けるというのは今後自分が卓球をやっていく上ではとても素晴らしい環境だなと思います。戸上とか宮川(昌大・情コミ3=野田学園)とかもっと強くなっていくと思うので、そういう子たちと時間を共に過ごして、間近で勉強ができて、考えを知ることができるというのは他の大学にはないことなのでとても素晴らしい学校に入学させてもらうことができたなと思います」

 

――松下さんにとって卓球とは何ですか。

 「ドキュメンタリーみたいですね(笑)。自分が一番輝ける場所ではないですが、この人生経験で卓球をしている時が自分は一番輝けたのではないかと思います。今後も卓球をし続けていくことで自分の人生がいいものにできるといいます」

 

――ありがとうございました。

 

[新村百華]