(38)WOWOWパラ新番組記念トークイベント SPゲストに西島秀俊氏/第9回「WHO I AM」フォーラム

 東京2020パラリンピック(以下、東京パラ)の閉幕から約1年半が経過した。大会をきっかけにパラスポーツや障害者への理解が進んだ一方で、共生社会の実現にはまだまだ課題も山積する。そうした中、WOWOWは2016年から放送・配信を続けてきたパラアスリート紹介番組「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズWHO I AM」をリニューアル。加えて、エンターテイメントを手掛ける多彩な表現者たちを紹介する新番組をスタートした。今回は、新番組スタート記念イベントの様子と共生社会の実現に向けたゲストの思いをお届けする。

 

◆1・27 未来へ動き出そう!~東京パラリンピックが残してくれたもの~

      第9回「WHO I AM」フォーラム

     (有楽町朝日ホール)

第1部 WHO I AM特別先行試写会

 「ドキュメンタリーシリーズWHO I AM LIFE」

 ~ヴィクトリア・モデスタ(バイオニック・ポップ・アーティスト)~

第2部 トークセッション

 ・MC       

  松岡修造氏

 ・ゲスト      

  マイケル・ハウウェル氏(作曲家)

  伊藤智也選手(パラ陸上日本代表)

  猪狩ともか氏(アイドル、女優)

 ・スペシャルゲスト 

  西島秀俊氏(「WHO I AMパラリンピック」ナビゲーター&ナレーター)

 

・WHO I AM PROJECTとは

 WOWOWとIPC(国際パラリンピック委員会)の共同プロジェクトとして2016年にスタート。「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」の放送・配信を行い、25ヵ国40組のパラアスリートを紹介してきた。番組はリニューアルと新番組の開始により、2023年1月から「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AMパラリンピック」と「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM LIFE」の放送・配信が行われる。

 プロジェクトは映像を基軸として、ノーバリアゲームズの開催などさまざまな活動も行っており、パラリンピック後も共生社会の実現に向けた発信を継続している。

 

・WHO I AM番組関連情報

 「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AMパラリンピック」

 「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM LIFE」

 WOWOWで放送・配信中!



 東京パラを挟み、3年ぶりのリアル開催となった「WHO I AM」フォーラム。今イベントの開催は、WHO I AM PROJECTの合言葉「東京大会はゴールではなくスタート」(WOWOW代表取締役 田中晃氏)を体現している。「これからは私たちが選手と一緒になって、多様な価値観が認められる公平でインクルーシブな社会に変わるように、小さなことから活動をしていく」(田中氏)。東京パラが終わった今、今度は私たち一人一人が共生社会に向けた取り組みをしていくことが重要だ。

 「世界人口の15%の人が、障害とともに暮らしている」(国連広報センター所長 根本かおる氏)。東京パラの開幕に合わせてIPCなどが立ち上げたキャンペーン『We The 15』には、世界に7人に1人以上いる障害者への差別をなくすという思いが込められている。「眼鏡をかけることと同じくらいに、障害者への配慮が当たり前になる社会づくりを目指していく」(根本氏)。共生社会を築くには、まずは障害があることが特別なことだという意識から私たちは変えていく必要がある。

 第1部では冒頭挨拶に続き、番組新シリーズ「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM LIFE」初回映像の先行試写が行われた。スポーツの枠を超え、多彩な表現者たちが登場する新シリーズは、義足のアーティストの物語から始まっていく。

 

(写真:冒頭の挨拶をしている田中氏)



 第2部ではMCとゲストたちによるトークセッションが行われ、新シリーズ第3回に登場するハウウェル氏も登壇。ASD(自閉スペクトラム症)を抱える作曲家は、ピアノを使った作曲を自身で行い、その演奏力と歌声は周囲を魅了している。「私たち障害者は制限されていることや足りていないことがあるからこそ、他の人たちにはない素晴らしいものがあって、人間はそうやって全体でバランスが取れている」(ハウウェル氏)。このメッセージに会場からは大きな拍手が沸き起こった。

 猪狩氏は5年前に不慮の事故で車いす生活を余儀なくされた。今後の未来に向けては「障害の有無に関わらず、すべての困っている人に声を掛けられる勇気を、私も含めて持っていきたい」(猪狩氏)。一人一人が違ったものを持ち合わせている社会において、お互いに助け合える環境への思いを語った。この思いに対し、2008年の北京大会において2個の金メダルを獲得した伊藤選手も共鳴。「小さなものでも自分の価値観を持ち、その中で人を思いやる気持ちがあれば、自然と文化はつながっていく」(伊藤選手)。個人の思いやりから文化の形成はスタートしていくと自身の考えを述べた。

 トークセッション後半には、以前から番組ナビゲーターとナレーターを務めている西島氏が登場。「継続していくことが大事であり、それが当たり前になって今がある。今回、東京大会が終わっても番組が当たり前のように継続し、さらに広がりを持ったものになることがとてもうれしい」(西島氏)。東京パラに向けてスタートした番組は、この先も続いていく。そして番組開始以前から「WOWOWがどうなろうがやりましょう」と話していたという西島氏の言葉からも〝東京パラはゴールではない〟という番組関係者の強い意志が表れていた。最後はマイケル氏による素敵な生演奏で、第2部は幕を下ろした。

 

(写真:生演奏をしているハウウェル氏)



 「パラリンピックがあったからといって社会が大きく変わった訳ではない」(猪狩氏)。東京パラが終わり、人々の意識は変化したかもしれない。それでもなお、障害者への偏見や差別の解消、バリアフリー化といった問題は残されたままだ。「自分が関わる作品で若い人たちがさまざまな価値観を持って、自由に才能を健康的に長く発揮できる場をつくっていきたい」(西島氏)。今の社会を変えるのは、今を生きる人々。そして、未来の社会を形づくるのは私たち若い世代の役割だ。東京パラのその先へ。私たち明スポも〝共に生きる〟未来に向けた活動を継続していく。

(写真:トークセッション中の西島氏)


[渡辺悠志郎]

 

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