
(104)「明治に来て良かった」石田吉平主将 シーズン終了インタビュー
2022年12月25日。秩父宮ラグビー場に響いた無情なホーンの音は、石田組の終わりを告げた。選手たちはあの時何を思い、今何を感じているのか。率直な思いを主将、副将の3人にお話を伺った。
第3回は石田吉平主将(文4=常翔学園)のインタビューをお送りします。(この取材は12月28日に行われたものです)
――試合から3日が経たちましたが、今の率直な心境を教えてください。
「寂しいが一番です」
――試合終了のホーンがなった瞬間、寮に戻った時は何を感じましたか。
「ホーンがなった瞬間は色んなものがフラッシュバックしてきたのですが、その時はまだ(結果を)受け入れてなくて、寮に着いたその日は4年で飲みに行ったのですが、その時はいつもみたいにくだらない話をしていました。ただ、一夜明けて1人になった時がやはりきつかったですね」
――同期の皆さんから試合後に声を掛けられましたか。
「みんなに『(主将が)吉平で良かった』と言ってもらえたのですが、それでも勝てなかった申し訳なさが強いです」
――明大での4年間を振り返っていかがですか。
「いい仲間に巡り合えた4年間だったと感じます」
――明大で過ごした4年間では東京五輪にも出場しました。
「明治のみんなにはたくさん迷惑をかけたと思います。でも明治大学でなければ行かせてもらえなかったと思いますし、入学当初に『東京五輪に出たい』と言った時、監督も『それを一番応援する』と言ってくれました。キヨさん(田中澄憲前監督・平10文卒)、神鳥さん(裕之監督・平9営卒)が背中を押してくれたおかげで出られた大会だったと思います。感謝しているからこそ、その経験を生かして優勝したかったのですが、恩返しができなかったというのが悔しい…悔しいです」
――今年度は明大ラグビー部の活動に専念した1年でしたが、振り返っていかがですか。
「より明治が好きになりましたし、明治に来て良かったなと思うようになりましたね」
――具体的にどういう時に感じてきましたか。
「やはりその時その時は感じていなかったのですが、きつい時しんどい時に寄り添ってくれた仲間であったり、全てが終わった後に毎日が楽しかったなと思いました。初めての寮生活で仲間と長い時間を共にしたので、やはり(今は)寂しさが強いなと感じます」
――この1年間は特に大変なことが多かったと思います。
「そうですね。シーズン始まってから、勝たなければいけないというプレッシャーや責任、その他諸々ストレスがかかっていたと思います。この1年間自分の中で楽しもうと思っていたのですがとても大変でした。口がうまくないので、チームを鼓舞したり話し合いで発言するのが難しかったです」
――主将をして一番良かったと感じたことは何ですか。
「明治のみんなを好きになれたことです。明治を好きになれました」
――大変なことが多かった1年だったと思いますが、好きになれたのはどうしてですか。
「やはり(主将は)支えてくれている人がいるからこそ成り立つ立場なので、常にみんなから支えられていると感じてきました。みんなが日本一という同じ目標に向かって頑張っているその過程で、みんなが成長する姿を、チームが成長する姿を感じながら取り組むことが楽しかったです」
――特にどういう場面で支えられていると感じてきましたか。
「リーダー陣にも支えられていましたし、試合に出ていない4年生がやはり下級生にとっていいお手本となってくれました。誰一人腐らずにチームのためにやってくれていて、そこもフォローしなくてはいけないのですが、自分だけでは目の届かないところも4年生がやってくれていました。ノンメンバーの4年生が何一つ嫌な顔をせずにチームのためにやってくれていることが一番支えになりましたね」
――この1年間『AHead』は体現できましたか。
「4年生が体現してくれたと思います」
――ご自身はいかがですか。
「そうですね…。自分で決めることではないので他の人がどう決めるかなのですが、僕はそれを決めた時からずっと体現しようと思っていました」
――最後は早大との試合で終わりましたが、改めて明早戦の試合はいかがでしたか。
「ずっとライバルで、簡単に勝った試合もないですし、簡単に負けた試合もありません。なので、そういうライバルと最後に真剣勝負できて良かったと思います」
――大学ラグビーは楽しかったですか。
「すごく楽しかったです」
――後輩の皆さんに伝えたいことはございますか。
「学生スポーツ最後で、4年間という限られた時間で何か一つのために全員で頑張ることは今後人生でないと思います。限られた時間で限られた仲間と共にする時間を大切にしながら楽しんでほしいです」
――次の目標を教えてください。
「僕は次のチームで試合に出るということも目標ですが、前の五輪で悔しい思いをしているので、その借りを返せるように(パリ)五輪に向けてメダルを取るということが今の自分の目標です」
――ファンの皆様に一言お願いします。
「4年間応援ありがとうございました。日本一という結果には届かなかったのですが、たくさんの応援があったからこそ、こうして4年間明治として頑張ることができました。これからは僕たちもOBとして明治を応援したいと思うので、日本一は取れなかったですがそれは後輩たちに任して、一緒に明治を応援していきましょう。ありがとうございました」
――ありがとうございました。
[安室帆海]
◆石田 吉平(いしだ・きっぺい)文4、常翔学園高、167センチ・74キロ
第99代明大ラグビー部主将。試合後、コーチから「優勝には届かなかったが、今まで教えてきた中で初めて、こんなに後輩から慕われている代、後輩みんなが『先輩を勝たせてあげたい』と言っている代だった」と声を掛けられる。「そう思ってくれていたなら僕たちの頑張りが少し報われたかなと思います」。卒業後は横浜キヤノンイーグルスへの入団が決まっている。
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