(29)全日本選手権直前インタビュー 佐藤伊吹

 いよいよ冬の大一番、全日本選手権(以下、全日本)が開幕する。最高の演技を目指し日々練習を重ねる選手たちに懸ける思いを伺った。夢の大舞台でそれぞれの熱い思いを表現し今年度一番の感動を届ける。


(このインタビューは12月14日に行われたものです)

 

第7回は佐藤伊吹(政経4=駒場学園)のインタビューです。

 

――最近の調子はいかがですか。

 「東日本選手権(以下、東日本)で調子が良かったので、東日本の後から調子を落とさないようにということに気を付けながらやっています。それほど下がりもせず同じ状態を維持できているかなと思います」

 

――練習はどのようなことをしていますか。

 「全日本はSP(ショートプログラム)がカギになると思っているので、東日本の後からとにかくSP中心に切り替えて練習しています。SPを通すというのはもちろんですが、最初のコンビネーションと二つ目のトリプルフリップを確実に跳べるように続けて練習するということを中心にしています」

 

――東日本ではSPでミスが出てしまいましたね。

 「本番になると力が入ったり、緊張したりしていつもと違うタイミングになることが多いので、難しいけど練習から本番を想定してということをしています。あとは曲をかけて練習するだけかなと思っています」

 

――東日本までを振り返っていかがですか。

 「夏は飯塚杯と東京夏季大会に出たのですが、その二つは今振り返ったらあまりいい内容ではなかったです。というのも、今シーズンのプログラムを完成させたのが遅かったので、プログラムを滑るということにどうしても集中してしまい、あまり慣れてない部分はあったかなと思います。そこでジャンプが不安定になったのが要因だなと思っていて、そこから単純に時間が経って慣れてきたという点と、夏に明治の合宿に行ったり、神宮でもコンスタントに練習したりできていたので、徐々に調子を上げることができて東京選手権(以下、ブロック)を迎えることができたと思います。昨シーズンのブロックはFS(フリースケーティング)で大崩れしたので、今シーズンはFSで調子が良くても本番は緊張したのですが、落ち着いてできたのは昨シーズンから成長したかなと思っています。そこから東日本に向けてはSPもFSもどちらも満遍なく練習はしていたのですが、トリプルフリップがSPでもFSでも課題ではあったので、中心にやって東日本のFSではしっかり降りることができたのでやってきたことは出せたかなという流れです」

 

――ラストシーズンですが、これまでのシーズンと試合前の気持ちに違いはありますか。

 「あります。全部の試合で『これが最後のブロック』や『これが最後の東日本』と思う部分はあるのですが、それを思い過ぎるとよくないので『そんなに大したことない』と思ってやるようにしていて、そうすると意外と気持ちが楽な感じですごく思い詰めてしまうということもないです」

 

――ラストシーズンは思い詰めがちなイメージがあります。

 「ラストシーズンだから頑張るというよりも、今まで自分の中ではどのシーズンも全力を尽くして練習してきていつも前のシーズンを超える練習をしなければ前のシーズンの成績も超えられないと思ってやってきたので、結局それの積み重ねでしかないかなと思っています。だから特別頑張るとかそういうことはしてないかなという感じです」

 

――全日本が来週に迫っています。今の気持ちを教えてください。

 「本番は緊張するかもしれないですが、今は結構楽しみの方が強いです。スケートをやめたらこれほどたくさんの人の前で滑るというような経験はきっとできないと思うので、それを十分楽しみたいなと思っています。そのために、楽しむ余裕を持てるように今頑張ろうという感じです」

 

――今の余裕としてはいかがですか。

 「まだです(笑)。もう少し改善するところがあって今週中になんとか理想通りにして来週はそれを維持したり調整したりするぐらいにしたいので、今週もう少し詰めて練習しようと思っています」

 

――具体的にどのようなところを詰めていきますか。

 「SPの最初の二つのジャンプをもっと確実に跳べるように曲かけも練習でもその二つを練習するということと、スピンは確実に点数を稼げるところだと思うので、毎回加点が取れるぐらいのものをやっていかなければいけないなというのを思っています」

 

――全日本ではどのような演技をしたいですか。

 「まずはSPをクリーンな演技でノーミスしたいなと思っています。昨シーズンはすごくSPが良くてFSを滑るのがすごく楽しみという気持ちで臨めたので、そういう状況になれるように今年もまずSPを頑張るということと、FSは今シーズン調子がいいのでその通りにというか、思い切りやるだけかなと思います。そうしたらうまくいくかなと思っています」

 

――改めてそれぞれのプログラムの見どころを教えてください。

 「SPはジャンプはもちろんなのですが、曲が盛り上がるところでステップのコースに結構大きな動きを入れているので、曲に合わせて明るく、でも少し強いというのを見てほしいなと思います。あと私はボーカルが気に入って曲を選んだので、曲に負けないような演技をしっかりするのでそれを見てほしいなと思っています。FSは最後のサビの部分が聞いたことある人はあるかなと思うので、そこの盛り上がりに向けて最初は少しおとなしく途中のステップあたりから強めに曲の盛り上がりに合わせて徐々に強くしていくようなプログラムになっているので、段階的に演技するという部分を見てほしいです」

 

――今シーズンの試合の中で全日本が初めての有観客の試合ですね。

 「楽しみだなと思っています。演技が終わってあいさつをする時に、全日本は会場が広くて見上げるとたくさんの人がいて、いつも拍手をしてくれてそれがすごくうれしいので、今回もその景色を見ることができるように頑張ります。いっぱいのお客さんがいる中で演技ができることがすごくうれしいです」

 

――全日本とブロックや東日本で審査員の位置が違いますが、何か意識されますか。

 「全日本は真ん中を中心に審査員の方々がいる感じなのですが、ブロックは自分から見たら右に審査員の方々がいます。ジャッジの前を向くときにブロックなどの感じだと右に向いてしまいますが、毎年全日本の公式練習の時にもう少し真ん中にしないといけないなと思いますね」

 

――公式練習の時にそのようなところもチェックしてるのですか。

 「しています。どこに椅子があるかでどこにジャッジの人が座るか分かるし、公式練習は本番の前に自分の目線や距離感を考えながら滑っています。(距離感が全然違いますよね)リンクのサイズは一緒なのにすごく広い感じがしますし、上の方までお客さんがいるから目線を高くなどそういうのは考えます」

 

――全日本に対する特別な気持ちはありますか。

 「この最後の年に全日本という舞台まで来ることができたのはすごく良かったなと思っていますし、何回出ても空気感や会場も含めて特別な試合だと感じます」

 

――引退まであと2カ月と少しですが、続けたいなと思うことはないですか。

 「いや思わないです(笑)。(選手としてはという感じですか。もう氷に乗りたいとは思わないですかね)しばらくは乗らなくていいなと思うのですが、人のを見てたら乗りたくなると思います。選手としては戻らないけど、いつかちょこちょこ滑っているかもしれないというぐらいです(笑)。(17年やっていてほぼ毎日氷に乗っていた感じですよね)そうですね、これがない生活はちょっと分からないですね(笑)。(17年も同じことを続けられるのはすごいですね)よく飽きないでやっているなと自分でも思ってしまいます(笑)。最初は同い年がいっぱいいたのに、いつの間にかこんなに少なくなってあれという感じです(笑)」

 

――全日本での目標を教えてください。

 「全日本はSPでノーミスしてしっかりFSを滑るということと、これまでやってきた自分の楽しかったことや大変だったことも含めてスケートへの気持ちなど、周りの人への感謝の気持ちというのもいろいろな気持ちを込めて、しっかりそれが伝わる演技をしたいなと思います」

 

――ファンの方に向けてメッセージをお願いします。

 「いつも応援ありがとうございます。これが最後のシーズンにはなるのですが、そんなに自分も悲しいとか寂しいという気持ちではなくて、最後楽しみたいですし皆さんに感謝の気持ちを伝えたいなと思っています。そういういろいろな気持ちも込めた演技が全日本でできるように今精いっぱい頑張っているので、全日本も応援よろしくお願いします。頑張ります」

 

――ありがとうございました。

 

[堀純菜]