
(156)【特別企画】躍進の2022年 短距離部門4年生座談会(前編)
短距離部門の躍進が際立つ1年となった2022年。躍進の裏には4年生のチーム改革があった。今回は〝新生明治〟の土台をつくりあげた小林枚也(法4=八王子)、鈴木憲伸(営4=明大中野八王子)、丹治友伽マネジャー(法4=吉祥女子)、野口航平(商4=洛南)の4年生4人の座談会を行った。
(この取材は11月27日に行われたものです)
――大学でのラストシーズンを終えてみていかがですか。
小林枚
「やり切ったなと思います」
野口
「僕が1年生の時に『もっと上を目指せるチームの雰囲気をつくりたい』とずっと思っていて、それを今年度できました。同じチームでも1年生の時と4年生の時で別のチームかのような雰囲気で、本当にこの1年は充実していました」
鈴木憲
「私はケガもありましたが、関東学生対校選手権(以下、関東インカレ)や日本学生対校選手権(日本インカレ)などシーズン全体で見た時に充実した最高の4年目になりました」
丹治
「このチームのマネジャー楽しいなと思った1年でした。4年間を振り返った時に最後の1年は、コロナもありましたが、(コロナで1年間の流れが)変わっていくのが楽しいなと、マネジャーをやっていて良かったなと思いました」
――今年1年間を個人での結果、明大全体での結果を振り返ってみていかがですか。
小林枚
「僕個人はやっと4年ぶりの自己ベストを出し、そこから手応えを感じて、みるみる自己ベストを更新できました。日本インカレに個人で出場することが4年目の目標の一つだったので、それを達成できたことは引退した今だからこそ、誉めてあげられる部分の一つだと思います。明治全体では僕自身、個人であまりチームに貢献できなかった思いがありました。それでもチーム全体としては関東インカレで1部残留もできましたし、日本インカレもチーム状況から見ればよくやったという感じです。今年度は僕自身も、みんなも飛躍的な自己ベストの更新をしていて、いい1年でした」
対談中の小林枚
野口
「僕は個人としては大学4年間で自己ベストの更新はできませんでしたが、パフォーマンスでは高校3年生の自己ベストを出した年と比べて高い水準でずっといけたので、良かったです。あとは対校戦で点数を稼ぎ、明治に貢献したいなと思っていて、関東インカレでそれをできたのは本当に良かったです。日本インカレは悔しいですが、いい思い出だなと仕方ないと思っています。チーム全体でいえば、入学当初リレーは正直決勝で戦えないチームでしたが、今年は関東インカレで決勝に残りました。残ったことに満足せずに、決勝後は『悔しい』とメンバーが言っていました。『このチーム安泰だな。来年もその次もいけるな』と思い、本当にチームとして強くなりました。4×400メートルRの方もどんどん良い1年生が入ってくるので、4×100メートルRに連なって両チームとも関東インカレや日本インカレの決勝で勝負できるチームになっていってほしいです」
鈴木憲
「個人については、関東インカレでは優勝こそできなかったものの、2位を取れたこと。日本インカレでは目標としていた表彰台はかなわなかったけれども、目標だった16メートルを跳べて、記録上の目標は達成できたので良かったです。チームでは、自分たちが1年生で入ってきた年に関東インカレで1部から2部に降格しました。その時自分は関東インカレに出られなくて、かなり複雑な気持ちでした。『明治の短距離はこんなもんじゃない』という気持ちもありました。今年度は1部残留が懸かった(自分の)最後の年で49点という戦後最多得点を達成できたのはすごく誇りに思いますし、うれしいことです。ただ、今の後輩たちを見ていると来年度以降はもっと(点数を)取れると思うので、すごく楽しみです」
丹治
「元々チーム自体が、練習メニューを選手たちで作り上げているのもあり、それにマネジャーも応えようとしています。自主的なカラーがあり、マネジャーも自分たちで考えて選手のためにできることをスタッフの人たちにプレゼンするという形を作り上げられたのが良かったと思っています。これからのチームに期待して応援したいです」
――自分たちの学年が後輩たちに残せたと思うこと、反対にやり残したことがあれば教えてください。
小林枚
「僕は自分みたいな競技者になってほしいと少しも思わないし、僕より努力する人はいるし、僕より才能ある人もいて、競技面で僕が後輩に残せた部分は正直あまりないです。ただ、今年の夏に最後まで諦めずに日本インカレの標準を突破したあの流れは、最後まで諦めないことを見せられたのではないかなと思います。あと、団体競技の大事さはリレーを4年間引っ張ってきて、チームで戦っていくのに必要なものは多少なりとも見せられたと思います。野口は練習で引っ張る姿が人一倍強いし、そこはすごいね」
野口
「ありがとうございます」
鈴木憲
「航平と言ったら引っ張る姿勢だね」
野口
「競技でもどこでも引っ張りますから」
小林枚
「野口航平の練習でのストイックさを見て、特に短長の後輩はすごく学んでいるよ。佐田(龍昇・法1=大分東明)とか真名世(小林・政経2=八王子)とよく話すけど『野口さんみたいになりたい』って聞く」
野口
「宗教開けるくらいには悟りを開いている(笑)。そもそも400メートルは練習がきつい割には結果がなかなか出なかったりして気持ち的には落ちてしまうのです。だからこそ、一番上に立っている人がちゃんとやる姿を見せないと、チームとしても崩壊してしまいます。『もう明治って弱いんだ』と思わせるのではなく『僕も頑張ったらあれくらいに強くなれるんだ』というのを見せたかったので、誰にも練習では弱音を吐かないように走っていました」
対談中の野口
鈴木憲
「冬季に航平がケガしていた時があって、自分がしっかり短長を引っ張っていこうと思って練習をがんがんやっていました。当然先頭で走れるのですが、航平だったらもっといけるんだろうなと思っていて……」
小林枚
「当然先頭で走っているのもやばいけどね(笑)」
鈴木憲
「ただ航平がケガから復帰して練習に参加してくれた時の頼もしさは本当にこれ以上のものがなく、一気に短長ブロックの盛り上がりは増しました。人を引っ張る姿勢というのは航平がもたらしてくれたものだと思います」
小林枚
「びしっと練習をやる時はやるところを実際に自分が体現して、後輩たちに見せているのは、野口と1個下の颯太(木村・法3=明星学園)ですね。野口からはそういうのが見られるし、競技力ももちろん尊敬されていると思うけど、佐田や真名世が『野口さんみたいになりたい』と言うのは400メートルのタイム以上に練習に対する姿勢だと思います」
鈴木憲
「僕は短距離の主将といっても実質、短短は枚也がまとめてくれて、短長は航平がまとめてくれていました。そことコミュニケーションを取りながら全体でバランスよく、自分のバランスの良さだけでなく体制のバランスの良さもあったので、バランス良いって言ってくれるのはうれしいです。4人いたからというのはあります」
小林枚
「あとは一般生だからとかはマジで関係ない……」
鈴木憲
「もっと言って!(笑)」
小林枚
「僕が八王子高に一般で入って、僕以外はスポーツ推薦でした。強豪校に一般で入った側だったから気持ちが分かるんですよ。(鈴木憲とは)もちろん立場も違うし、大学だからもっと雑な扱いを受けたというのはありますが、同じような境遇にいたことがあるからこそ、ギャップも感じるし、やりにくさも多少なりともあったと思います。それでもめげずに頑張ってしっかり結果を出して競技力や人間性で後輩たちに慕われるような主将になれている姿勢だけでも、後輩たちに残せているものは一番あるのではないかなと思います」
鈴木憲
「それに関しては一般生、スポーツ推薦とかは全く関係ないというのは、チーム内というよりはスタッフの方にも思ってもらえたかなと思います。一般だからという目で見られたくないですし、当然勝つ気で明大競走部に入ってきていますから。チームの大人たちに対しても、これから入ってくる人たちにも一般、スポーツ推薦だとか関係ないと、自分の取り組む姿勢を見せて残せたのかなと思います」
対談中の鈴木憲
小林枚
「それはお前にしか残せないことだ」
野口
「これから明治に一般生で入る人がいたら『こういう人がいたんだから自分もできるんだ』と成功例になったから、それは良かったのではないかなと思います」
鈴木憲
「一般で入ってきてもインカレ1部で上位にいけることは示せたかなと」
対談中の丹治
丹治
「この代がというわけではないですが、今年度からSNSを増やして、2個下の代が先頭でやってくれました。それで、長距離のファンの人の目に留まる機会が増えて、マネジャーとしては短距離をもっと知ってほしいという気持ちがあります。今後も続けていってほしいですし、部としてももっと力を入れていい部分だと思います」
野口
「よく言った!」
小林枚
「素晴らしい!」
野口
「短距離全然知ってもらえないっていう……」
小林枚
「今年度でだいぶ認知度は広がったよね。飛躍的に上がった。それは結局マネジャーのおかげだから。結構見てもらっているのをSNS上で見るから、それは大きいですね。稜(木村・政経3=乙訓)や颯太、ここ2人(鈴木憲、野口)も、長距離に負けないどころかすごい活躍をしている選手がいっぱいいます。今はオフシーズンなのでなかなか見てもらえないとは思いますが、シーズンが始まったタイミングで短距離の活気ある感じを、応援していただければ、みんなも見られている自覚もあるし、良いことしかないと思います」
[出口千乃]
後編は明日公開予定です。お楽しみに!
12月22日付け発行の明大スポーツ第525号(箱根駅伝特集号)では、今年度の短距離部門の活躍についても掲載します。ご購入はこちらから!
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