(53)〜road of 〝AHead〟〜 熊澤百将「一人の選手として基本を怠らずやっていきたい」

2022.11.04

 「しっかり頂点だけを見つめる」。石田吉平主将(文4=常翔学園)が今年度のスローガン『AHead』に込めた思いだ。4年ぶりの大学選手権(以下、選手権)優勝という頂点の地へ。闘球に魂を込め、たくさんの汗を流した日々。4年生にこの4年間とラストシーズンに懸ける思いを語っていただいた。11月1日より連載していく。

 

 第4回は熊澤百将(理工4=明大中野)のインタビューをお送りします。(この取材は10月19日に行われたものです)

 

――明大ラグビー部に入った理由を教えてください。

 「父親が明大バレー部のOBで本人はラグビー部ではないですが、強烈な明大ラグビー部のファンでした。その影響から6歳でラグビーを始め、小さい頃から秩父宮ラグビー場に明大の試合を見によく連れて行ってもらっていました。そのため、幼少期の頃から明大ラグビー部に憧れがあり、必然的に入部を志しました。僕にとって明大ラグビー部はヒーローでしたし、6歳の頃からずっと紫紺を目指していました」

 

――部での思い出を教えてください。

 「1年生の頃の勉強とラグビーの両立が大変だったというところが1番心に残っています。4年間ずっと選手で唯一の理工学部だったのですが、キャンパスに皆と一緒に行けないですし、生田キャンパスだからとても遠いので、朝練を1年生の頃は10分だけやって、それでも時間がないのでシャワーも浴びず、朝食も食べずに登校していました。1限が実験で遅刻できないので、焦って駆け込んでいたのでそれが1番の思い出です。最後まで慣れることはありませんでした(笑)」

 

――苦しい状況の中でも最後まで続けることができた理由を教えてください。

 「二つ理由があって、一つは本気で紫紺を着たいと思っていたからです。やはり周りに高校日本代表などの全国から集められた才能がある選手が多い中、僕は付属校出身なので常に自分よりうまい選手に囲まれている状況でした。その中でも皆と違った方法で努力し、練習しなきゃいけないという思いがあったので、やっぱり紫紺を着たいという思いが原動力にありました。二つ目はきれい事ではなく本気で応援してくれる家族や学校の周りの友達などの想いに応えたいという部分です。僕の練習試合を楽しみにしてくれたりしているのがすごくうれしくて、やはりその人たちに対して恥ずかしいプレーはできないなというのがあったので頑張れたと思います」

 

――自身が出場した試合で印象に残っている試合はありますか。

 「2年生の時の慶大とのC戦です。その試合は11月頃にあったと思いますが、箸本龍雅さん(令3商卒・現東京サントリーサンゴリアス)の代で、1週間前に行われた対抗戦の試合に僅差でAチームが慶大に負けてしまいました。Aチームが敗れてしまった1週間後にリベンジできるのは自分たちしかいない、慶大相手にリベンジしようととても熱くなり、気合いが入った試合だったのを今でも覚えています。相手がジュニアの選手だったこともあり、リベンジしたいという状況に強い相手だということも相まって自分だけでなく皆気合いが入っていました。後半に追い付かれて同点になってしまった試合だったのですが、高いパフォーマンスでできたし、初めてチームに対して貢献できたかなと思える試合だったので、すごく印象に残っています」

 

――4年間でやり切れた部分はありますか。

 「日常生活などグラウンド内外問わず、細かい部分で手を抜かずに頑張れたかなと思います。例えばフィットネスの練習で線を越えることを徹底する、蛇口から水が出続けていたら止める、ゴミが落ちていたら拾うなど誰にでもできる細かい部分に関しては1年生の時から4年間一貫してすることができたと思っています」

 

――チームメートはどんな存在ですか。

 「やはり欠かせない存在です。きれい事ではなく、当たり前ですけど1人だったらラグビーはできないですし、自分がオフサイドなどをするとチーム皆に迷惑がかかります。だからこそ、逆にきつい状況の中でも仲間を助けようという気持ちが芽生えていいプレーができたり、自分を律することができます。本当に仲間がいるから頑張れています」

 

――改めて熊澤選手にとって『AHead』にはどういった意味がありますか。

 「シンプルに前進しよう、前に出ようという意味だと思っています。また、トップを取ろうという意味も込められていると思っていて、やはりやるからには優勝、トップを目指すべきだし、とても本質的なところをついたスローガンだと思います」

 

――今の自身の役割をどう考えていますか。

 「ルビコンでずっとやってきて、フィットネスなどのしんどい練習が多いのですが、そういった練習はかなり得意なのできつい時に声をかけるという役割はあると思います。また、自分は寮の3階の掃除のチェック係でもあるので、監督も常々『日常生活から大事だぞ、規律を守ることがグラウンドでも出る』とおっしゃられているので、日常生活の規律を少しでも皆に意識してもらうようにするという役割もあると思います」

 

――4年間で学べたことを教えてください。

 「考えながらやることです。2年生の夏合宿で田中澄憲(平10文卒・現東京サントリーサンゴリアス監督)前監督と面談した際に『お前は全部やろうとしすぎだ。1から10まであったら全部を一生懸命に頑張ろうとしすぎだから考えて優先順位をつけて絞ってやれ』と言われました。それまで何も考えず、効率無視でただがむしゃらにやる感じだったのですが、それからは何を優先してやるべきか考えるようになりました。これはラグビーでプレーするにおいても日常生活でもとても大事なことだと学びました」

 

――これからの目標を教えてください。

 「チームの優勝に貢献することです。具体的にはルビコンを盛り上げることだと思います。4年生なのでもちろんチームのことを考えて、声掛けをする、雰囲気をつくることも大事なのですが、まず大前提に自分が一人の選手としてしっかりやっているところを後輩に見せることが大事だと思うので,基本を怠らないという部分はこだわってやっていきたいと思います」

 

――ありがとうございました。

 

[廣末直希]

 

熊澤百将(くまざわ・ももすけ)理工4、明大中野高、176センチ・85キロ

最近は、同部屋の角田龍彦(法3=明大中野)、春日悠平(政経2=明大中野)、菊池優希(政経1=山形中央)とココアなどを飲みながら語り合う時間を楽しんでいる。