(52)〜road of 〝AHead〟〜 工藤光平「出し惜しみなく、後悔が無いように、いい意味で青春をしたい」

2022.11.03

 「しっかり頂点だけを見つめる」。石田吉平主将(文4=常翔学園)が今年度のスローガン『AHead』に込めた思いだ。4年ぶりの大学選手権(以下、選手権)優勝という頂点の地へ。闘球に魂を込め、たくさんの汗を流した日々。4年生にこの4年間とラストシーズンに懸ける思いを語っていただいた。11月1日より連載していく。

 

 第3回は工藤光平(法4=大分舞鶴)のインタビューをお送りします。(この取材は10月18日に行われたものです)

 

――ラグビーを始めたきっかけを教えてください。

 「僕の場合少し長くなってしまうんですけど。一つの理由としては父親がもともとラグビー選手だったということがあります。もう一つの理由が長いんですけど。自分は高校からラグビーを始めて、それまではずっと陸上競技をしていました。正直陸上は好きで始めたわけではなくて。割と全国大会に出場させていただいたりしていて、記録は良かったのですが、例えば何かの大会で優勝をしたりしてもあまりうれしくないというか。ずっとそういう状況で続けてきました。中学3年の時の全国大会の前に大きいケガをしてしまって、それで気持ちが切れてしまったというか。ちょうどそのときにワールドカップとかの年と重なったり、父親からの勧めもあってラグビーを始めました」

 

――陸上をもう一度やろうという気持ちにはやはりならなかったですか。

 「そうですね。もう完全に自分の中で終わったなっていう。そこからもう一回やり直して、陸上をもう一回やろうとはならなくて、それだったら新しく何かをやろうと思ったのと、今まで個人スポーツだったので集団スポーツっていうのをやりたいっていう気持ちもあったので」

 

――実際に高校でラグビー部に入部してみていかがでしたか。

 「自分今でも下手なんですけど(笑)周りはもっとすごい人たちばっかりなので(笑)そうなんですけど、高校の時はもっと下手で。僕は陸上の推薦で高校に入学したんですけど、自分は素人で、周りはラグビーの推薦で来ている子たちばっかりだったので、みんなうまくて。ラグビーというスポーツ自体初めてで、周りは経験者しかいない中でやっていくのはほんとに大変でしたね。見よう見まねでやっていたんですけど、なかなかうまくいかなくて。それこそボールをキャッチする、ボールを投げるっていう初歩的なところからやらなければいけなかったので、そこがやっぱり一番大変でした」

 

――かなり大変ですよね。

 「そうですね。あとは自分の場合は高校から寮に入って一人暮らしを始めたので、部活動と家の事をやらなきゃいけなかったので。夜遅く帰ってきて、洗濯してお風呂に入って、学校の課題をやっていたら日付が変わっていたりして。最初の頃はそういう生活にも慣れていなかったので」

 

――ラグビーには高校に入るまで一度も触れたことはなかったですか。

 「正直小さい頃に陸上をやりながら、近くでやっているラグビークラブにたまに参加をしていた時があって、試合にだけ出てほしいと言われてやったことはありました(笑)ただボール持って走るだけでいいよって言われて(笑)だから全然分からないままとりあえずボール持って走ってましたね(笑)その程度です(笑)」

 

――高校時代を振り返ってみていかがですか。

 「自分たちの高校は結構決まりとかが厳しくて、やっている時はきつくてほんとに嫌だったんですけど。今こうやって振り返ってみると、高校でラグビーという道を選んで良かったなと思います。なんでかというと、まず一人暮らしというところで、親元を離れて自分の知らない土地でいろいろ経験することで挫折ももちろんたくさんありましたけど、その分成長できたというのがあります。もう一つは、ラグビー部のチームメートがみんないい人たちばかりで、自分がうまくいかない時も支えてくれて、自分のチームはすごくチームワークが良くて。やはりチームスポーツなので。自分が地元で陸上を続けていたら、そういう人脈はなかったと思うし、自分の知らない土地が第二の故郷になって、大事な人脈ができたなと思います」

 

――明大に進学を決めた理由を教えてください。

 「自分の中では伝統がまずあって、やっぱりめちゃくちゃ強くて。ブランド力もあって、かつ強いっていうそういうトップレベルのチームで自分から過酷な環境に身を置いてやってみたいという気持ちがあったからです」

 

――大学の寮生活はいかがですか。

 「自分は高校から寮生活で、その時は一人部屋でした。だから一人暮らしに近かったのかなと思うのですが、今は4人部屋なので下級生たちとの関わりが強くて、正直卒業したらそれがなくなっちゃうと思うと寂しいですね(笑)めっちゃ楽しいので」

 

――改めて、工藤選手にとって『AHead』とは何でしょうか。

 「原点だと思います。明治はもともと『前へ』というのがスローガンじゃないですか。それと同じ意味で、やっぱり明治が立ち返る場所というか。自分にとっては常に持つべき原点の心じゃないかなと思います」

――最後にこれからの意気込みをお願いします。

 「終わったときに後悔がないようにというか。今ケガをしてしまっていて、思うように練習に参加できていないですけど、人生の中でこれだけみんなと一緒に一つの目標に向かって進んでいくっていうこういう経験はこれからできないと思うので。残りの期間は出し惜しみなく、後悔が無いように、いい意味で青春をしたいです」

 

――ありがとうございました。

 

[宇野萌香]

 

◆工藤 光平(くどう・こうへい)法4、大分舞鶴高、178センチ・84キロ

部屋メンバーでは週の初めに練習着などの洗濯当番を決めるそう。ババ抜きや大富豪などのカードゲームで負けた人が1週間の洗濯担当をする。