(50)〜road of 〝AHead〟〜 葛西拓斗「人としても大きくなって紫紺を着たい」
「しっかり頂点だけを見つめる」。石田吉平主将(文4=常翔学園)が今年度のスローガン『AHead』に込めた思いだ。4年ぶりの大学選手権(以下、選手権)優勝という頂点の地へ。闘球に魂を込め、たくさんの汗を流した日々。4年生にこの4年間とラストシーズンに懸ける思いを語っていただいた。11月1日より連載していく。
第1回目は葛西拓斗(商4=流経大柏)のインタビューをお送りします。(この取材は10月26日に行われたものです)
――4年間を振り返っていかがですか。
「結構悔いが残っている4年間かなと思います。1年次の春季大会の明早戦の時に紫紺を着させていただいて、その後の日大戦も出場したのですが、その後に腰をケガしてしまいまして。夏合宿も練習をしないで、そこから自分の中でふがいなさが残る1年でした。2年生になってから、同期の中村公星(情コミ4=国学院栃木)が試合に出場しはじめて、同じカテゴリーで試合に出ていたので追い付け、追い越せでやっていました。ですが、自分の中でうまくいかないことになにか言い訳をしたりなど、なにか自分の弱いところから逃げていました。2年生の頃はそんな印象があります。それで、2年生の終わり頃から3年生の終わりにかけての1年間は、あまり言いたくはないのですが、ほとんど無気力だったというか、すべてがどうでも良く思っていました。僕は同期以外にも先輩や後輩含めて、結構明るいキャラクターです。しゃべるのも好きですし。でも、その1年間は一生懸命明るく振る舞っていました。ただ、そこでうまくいかないラグビーに対して頑張ろうとせずに、なにもかもがどうでもいいと思ってしまった、僕の中で本当に良くない1年間でした」
――現在はいかがですか。
「そこから3年目のシーズンが終わって、4年生に入る時に『気づいたら最終学年だ…』みたいになっていました。(明スポから)毎年この時期に4年生の記事が出るじゃないですか。それで、3年生の終わり頃に、僕が2年生の時に4年生で出ていた先輩の記事を読みました。その先輩は、ずっと下のカテゴリーで出ていたのですが『紫紺は着たい、そこは諦めたくない』と言っていて、最後本当に紫紺を着たんですよ。それで、その先輩の記事が3年生の終わり頃にたまたまTwitterで流れてきて読んだ時に、言葉がすごく単純ですが『もう一度頑張ろう』と思いました。明治に来て試合に出られないからサポート側にまわるという人はいるんですけど、僕の中でそれは自分の気持ちにうそをついているんじゃないかなと思って。その時に、その記事を読んで、なんとも言えない気持ちになったのは覚えています。『頑張らなきゃ』というより『何をしてるんだろうな』とか、複雑にいろいろな感情が入り混じりました」
――今後の意気込みをお願いします。
「今、もう10月の終わりで、試合には出られておらず、ジュニアの試合などに出ています。こうやって振り返ると〝後悔〟という言葉が浮かんできますけど、さっきも言ったようにだからと言って紫紺を着て、試合に出るという選択肢を諦めるということはないです。残りあと3カ月ぐらいで、ラグビー選手として強くなることはもちろんですけど、人としても大きくなって紫紺を着たいと思っています」
――ラグビーで大事なことを教えてください。
「ラグビーで結果を出している人が人間としてどうかということは分からないですけど、やっぱり僕の中で人として強くというか、優しくありたいなと思っています。僕の関わっている、同じ部屋の部屋っ子たちや同期全員、どうしようもない1年前の僕を見捨てないでずっと励ましてくれた他大選手や親友たちに、あとは人間なので人として合わない人とかいるじゃないですか。でもそういう人たちに最近思うのは、悪意を向けて傷つけるのは簡単だけど、本当に強い人ってそういう人たちにも優しんだろうなと思います。まだうまく言語化できていないですけど。強いからたぶん優しいんだと思うし、優しいから強くなれるんだろうなと最近ちょっと感じました。それがラグビーに直結するかは分からないですが、僕の中ではラグビーにつながってくると思っています。なので、人に優しくありたいです」
――改めて葛西選手にとって『AHead』にはどういった意味がありますか。
「4年生全員で話したスローガンなので、99代ということもありますし、前回届かなかったあと一つを取りに行く。まず頂点を取りに行くという意味も含めて『AHead』にしました。また、明治大学の『前へ』の精神の意味もあります。頂点を取るために、前へ。それをあと少しですが、実現するために淡々と遂行していきたいと思います」
――ありがとうございました。
[堀之内萌乃]
◆葛西 拓斗(かさい・ひろと)商4、流経大柏高、184センチ・109キロ
ラグビー部随一のアニメ、漫画好きの葛西。ワンピースで一番好きな章は『エニエスロビー編』という。「仲間1人のために全世界を敵に回すコンセプトと、ロビンが『生きたい!』というシーンの麦わらの一味の立ち姿含めかっこいいです」。
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