
(19)シーズン直前インタビュー 山隈太一朗(2)
シーズン開幕目前。明大にはシニアデビューの選手がいるが、今季限りで引退という選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。一人一人の声をお届けする。
(このインタビューは9月22日に行われたものです)
第11回は山隈太一朗(営4=芦屋国際)のインタビューです。(1)の続きとなります。
――ご自身のプログラムについて調子はいかがですか。
「SP(ショートプログラム)はすごくかみ合っていて、自分の中でも自信が大きい方です。どちらも大事ですがFS(フリースケーティング)の方が正直言って自分の中で思い入れが強いので、そっちをもっと仕上がったものにしたいのですが、なかなか今シーズンはそちらの方にかみ合わなさがあります」
――FSへの思い入れについて教えてください。
「やはり自分の中で最後に踊る、競技者として演じる最後のプログラムで、小さい頃から引退の時はこの曲にしようと決めていました。なぜその曲にしようと思っていたかというと、母親がずっと小さい頃から『いつかエキシビションでもいいからこの曲を使ってほしい』と言っていたので、それを母親から聞いた時にすぐに『引退はこの曲にしよう』と決めていました。そういう曲そのものに思い入れ、おのずと自分の最後のプログラムと決めてきた積年の思いがあります。それに海外の先生、サロメ・ブルナーというすごく素晴らしい方に振り付けをしてもらって、とても楽しくて。もっと早くこの人と組みたかった、もっといろいろな作品をこの人と作りたい、と心から思うくらい素晴らしい出会いもこのプログラムのおかげであったので、そういうプログラムの背景にある僕にとって大切なものがプログラムにあるので。それをしっかりと完成させて終わりたいという思いが強いですね」
――昨シーズンはSPよりFSの方が自分には合っている、といったお話がありましたが、SPの方を継続にした理由はなんですか。
「正直どちらも変えたくて変えようかなと思っていたのですが、現実問題として使いたい曲が一曲しかなく、もう一曲は探してもなかなかしっくりくるものがなくて。そこでプログラムに対する皆さんの評価を見てみたところ、昨年度は特にSPの評価が高くて。一曲しか変えられずどちらかは残すことになりそうだとなったとき、SPかなとなりました。ただ、今の曲は映画のサウンドトラックなのですが、あまり使えそうなバリエーションがなく、4分間のFSにしたときに単調になってしまわないかという不安がありました。けれどそこはサロメがとてもうまく編集してくれたので、FSは新しい曲、SPは継続で、というように決まりました」
――先生に関しては山隈選手がご指名したのですか。
「2、3年前に海外の先生にお願いしたくて渡航する予定もあったのですが、その時ステファン(ステファン・ランビエール)が日程的に合わなくて。その際にステファンが『サロメを紹介してあげようか』と。それでサロメにアプローチできたのですが、そこから2年間コロナで海外に行けなくなってしまって。今年は少しだけ制限が緩まって、自分も最後の年だし行くなら今しかないということでお願いしました」
――日本の先生と海外の先生で違う点などありますか。
「日本の振り付けの先生も海外の振り付けの先生もやはり人それぞれ違いはありますが、海外の先生はスケートの文化が違うので、僕らが基本的だと思っていたターンの組み合わせから根本的に違ったりしています。ここでこんなものを入れるのか、みたいな奇想天外ではないですが普通に日本でやっていたら思いつかないようなターンの連続性だったり、プログラムの構成だったりはすごく新鮮です。本当に人それぞれで海外の先生と日本の先生と大きく分けられはしないですが、サロメの場合はすごく体の使い方がシンプルでしたね。そんなにたくさん動きをつけるのではなく、ワンポーズでしっかりと結構僕の間の使い方などの表現の自由度が高いプログラムにしてくれました」
――東京選手権(以下、東京ブロック)からはFSは新しい衣装になりますか。
「そうですね。本当は夏の試合辺りから変更する予定だったのですが、いろいろと合わないことがあったので。何とか東京ブロックでは新しい衣装が出せるかなと思います」
――どのような衣装になるのでしょうか。
「映画の主人公をモチーフにしていて、少し前の時代のスーツですね。ジャケットではなくベストの衣装です(『ゴッドファーザー』から印象的にはあまり変わらない?)いや、『ゴッドファーザー』は黒でダークな印象でしたが、それよりはもう少し明るい感じですね。同じシャツの衣装ですが、イメージとしては真逆かなと思います。明るいイメージかな」
――昨年度のシーズン直前インタビューでは大島光翔(政経2=立教新座)選手がノリノリだとおっしゃっていましたが、今年の佐藤駿(政経1=埼玉栄)選手はどのような感じですか。
「駿はノリノリ(笑)ではないですが、面白いやつですね。光翔とずっと一緒にいて、光翔が『うわああああ!』と叫んだ時に、隣で笑っているイメージです。彼は大学もスケートもどちらも頑張っていて、かなり優秀なのではないですか(山隈選手2世みたいな?)いや、俺よりまずスケートはいいので(笑)。うまく単位もとっているので、このままいってくれればいいですね」
――大学1年次から今までを振り返ってみていかがですか。
「すごく成績が出なくて自分が思い描いていた成長曲線は描けなかったけど、スケートをとても深い所まで考えることができたし、自分自身に何回も向き合うことができたし。成績は出なかったけど、すごくたくさんのものを得られた大学3年間の競技人生だったなと思います。それをしっかり4年生である今年に生かして、今まで得てきたものをパフォーマンスにして表現していくことが今年の目標ですし、大学の、そして僕の競技人生としては良い幕切れになると思います。とにかく得たものをパフォーマンスとして出す、それが今年の目標です。文字にするならそうだなあ……完璧ですかね(最後に完璧を目指すのがストイックな山隈選手らしいです)有終の美などはあまり考えていないので(笑)。最後だからどうというモチベーションがあまりない人なので、最後だから頑張ろうとかではなく……いや有終の美は飾りたいですけど(笑)。そううまくいかないのが人生じゃないですか。とにかく完璧を目指してやっていけばおのずとね、完璧であれば有終の美ですし。一石二鳥みたいな感じではないですけど」
――ファンの皆さんへコメントをお願いします。
「いつも応援してくれてありがとうございます。今シーズンは僕のラストということで、競技人生に悔いがないように、しっかり最後までやり切って最高のパフォーマンスをお見せしたいと思います。これからもどうぞ応援よろしくお願いします」
――ありがとうございました。
[向井瑠風]
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