(18)シーズン直前インタビュー 松原星(2)

 シーズン開幕目前。明大にはシニアデビューの選手がいるが、今季限りで引退という選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。一人一人の声をお届けする。

(このインタビューは9月15日に行われたものです)

 

第11回は松原星(商4=武蔵野学院)のインタビューです。(1)の続きとなります。

 

――FS(フリースケーティング)に『フォレスト・ガンプ』を選んだ理由を教えてください。

 「どの曲を使おうかなとなった時にぱっと思いついたものがこの曲でした。母がこの曲を好きなことは以前から聞いたことがあったので自分の中で『フォレスト・ガンプ』というフレーズが残っていたのかもしれないです。本当にそれが理由です(笑)。普通なら『引退でこの曲を使いたい』みたいなのがあると思うのですが、私の場合一曲そういう曲がありましたがそれは以前使っていた曲でした。過去と比べられてしまうのもあって前に使っていた曲を戻すのはあまり……となってどうしようかなと思った時に思いついたのが『フォレスト・ガンプ』でした。自分っぽいなというのもありますし、宮本賢二先生に振り付けをしてもらっていた時に『スケート人生を表せる曲ではないか』と言われていいなと思った記憶があります」

 

――『フォレスト・ガンプ』でスケート人生を表せるというのは、ご自身で演技していて実感されていますか。

 「演技というよりは曲調ですね。最初のほうは高い音でスケートを始めたての頃で、ループの直前に固い駒みたいな振り付けがあって、その部分の曲の音はスケート人生においての苦悩や壁などを表現できる音ではないかとなって、それを過ぎて晴れて『新未来開ける! 』みたいな盛り上がっていくところが引退やラストに向けてみたいな感じです。ストーリー性のもある、意外と単調に見えて少しずつ違うので、そこを変えていけたらいいというのを賢二先生に言っていただいたのは覚えています」

 

――引退を感じさせるような曲だったのですね。

 「狙ったわけではないですが意外とそうでした」

 

――衣装の好きな部分や見てもらいたいところはありますか。

 「テーマや色は結婚式などのお色直しみたいなもので、デザインもそういうイメージがあります。次の舞台に向けて華やかな印象を与えられる衣装というテーマにしました。お色直しは賑やかな部分だと思うので、盛り上がるような印象で作りました」

 

――FSにはどのような思いがありますか。

 「『ここ最近フリップが……』というのを何年言い続けているのかというくらい言い続けているのですが、ジャンプをほぼ変えてました。フリップももちろん変えていて、入り方も変わっているのでラストシーズンは決められるようにしたいです。前半いつも失敗して後半立て直すというのが自分の定番みたいになっているのが少し悔しいので、前半を決めた上で気持ち良く後半にいきたいという思いが強くあります」

 

――明治合宿はいかがでしたか。

 「最高に楽しかったです。毎年楽しみにしていて、なんと私だけ皆勤で参加していて(笑)。4年生で参加するのが一番楽しいと思いますし、特に同期も6人いるのでそこも楽しい部分かなと思っていて、大学2年目くらいでスポーツ推薦でない子たちともどんどん打ち解けていって仲良くなっていきました。3泊4日でわりと長くて、リレーをしたり夜練習後にアイスを食べたり。夜練習後のアイスを楽しみに1日を頑張るみたいな(笑)すごく楽しかったです」

 

――皆さんの楽しそうな雰囲気がとても伝わってきます。

 「練習時間がたくさんあったわけではないですが、永遠と6人で曲かけをリピートするという、私としてはとても充実していたし、OBの方々が話し掛けてくださったり盛り上げてくださったりするので、楽しく練習できます。練習で楽しいというのはあまりないことですが合宿では楽しく練習できて、リンクから降りても楽しかったです。やるときはしっかりやって、リンクの上でも楽しく頑張るような感じでした」

 

――合宿の時は監督が指導してくださるのですか。

 「そうですね、監督は基本的に常にリンクに乗っているので、曲かけが終わって監督のところに行ってアドバイスをもらっての繰り返しをしていました。とてもいい練習になりました(他に指導してくださる方はいたのですか)他にもジャッジで入っている方も来て下さっていました。『演技のここでもう少し足を伸ばしたほうが見栄えがいいよ』など美しさを教えてくださったり、レベルを確認してくださったりなど、リンクの上で全体的に見ていただけたかなと思います」

 

――日本学生氷上競技選手権(以下、インカレ)出場についてはいかがですか。

 「もちろん自分が出たいですし、明大の総合優勝、女子の優勝に自分が出て貢献したいです。今年はインカレへの出場条件みたいなのが変わって、これまでは全日本選手権(以下、全日本)一本で決めていましたが、東京選手権(以下、東京ブロック)から全日本までポイント制にするという風に新しくなったので、しっかり東京ブロックから頑張って出場枠を勝ち取れたらなと思います。一つ一つの大会でベストを尽くしていくのみかなと思います」

 

――今年度のフィギュア部門の雰囲気はいかがですか。

 「特に毎年変わりないかなとは思っていますが、今の時代に沿った感じになっているなと思います。昔の方が上の代の先輩と関わる機会がたくさんあって緩い部分がありましたが、最近だと元々東京にはいなかった子も入ってくるようになって、最初の頃に敬語を使ってくれたりするのですが、スケートはあまりそういうのがなくて。そういうところも良さだと思うので、春関もなく堅さのあるまま合宿に突入したのが少し悔しかったかなと思います。もっとフラットに話せる関係になるために大会などがほしかったなとは思いますが、みんな仲良くできているかなと思います」

 

――大学1年次から今までの学生生活についてお話を聞かせてください。

 「1年生の時しかしっかりとした対面授業がなく悲しい学生生活を送ったなという印象はありますが、一年あっただけ良かったなとも振り返って思います。大学での思い出は1年生の時のことしかなくて、楽しかったし毎日忙しくて『大学生ってこんなに毎日忙しいの?』と思っていました。朝から夜遅くまで学校にいて、合間の時間に友だちとタピオカを飲みに行って、みたいな若干大学生めいたことはしているけど基本的には大学にいました。ただただ真面目過ぎたのかもしれないです(笑)。一緒にいた友だちはスポーツをしている子たちでしたが、自分も含めてと言ったら何ですが真面目で、この間会った時も『真面目過ぎたよね私たち』と話していましたね。2〜4年生はオンライン授業が多くて、オンラインが始まったばかりの時は対面だった時よりも大変で、課題や調べ物をたくさんしていて学生の本分である勉強をしまくりました。友だちも1年生の時に仲良くなった子たちでスポーツをしていて、すごくいい出会いだったかなと思います」

 

――プライベートやオフのときはどのように過ごしていましたか。

 「家に閉じこもっているのがあまり好きではないので、オフは基本的に誰かしらと予定を立てています。ですがコロナ禍になって、一人で行動することが多くなった気がします。美容院に行くついでにどこかに寄ったりして、駅と駅の間をかなりの距離があっても歩いてみたり。電車に乗らずに歩いて汗だくだくになってというのが、大学生になって身に付けてしまって趣味みたいなものになりました。普段、階段を登ったりするのは好きではないのですが、目的があってどこどこのお店から次のお店に行くところを歩いてみたりしました。基本的には食べ物が目的です(笑)。友達との約束の前も、どこかの駅から歩いていこうと決めて歩いて汗だくで会うという失敗を何度もしています(笑)。学ばないんですよね(笑)」

 

――食べ物のお店はどのように見つけるのですか。

 「基本はインスタグラムで見つけています。話題のお店で話題のものを食べるというド定番のことが好きで。『話題になっているものは本当においしいのか』を探るのが好きで(笑)。裏メニューを見つけるみたいなことはせず、有名なお店の有名なものを食べてなぜ有名になっているのかを知るのが好きです」

 

――今シーズンの目標について教えてください。

 「一つ目は、全日本のSP(ショートプログラム)とFSでベストを出すというものです。『ノーミスという表現は違うんだよ』というのをMFアカデミーで言われたのを覚えていて、ジャンプだけではないし、スケーティングなども含めてノーミスというのは相当難しいことだからと言われました。私の中でこれまで、ノーミスはジャンプを全て決めることだったのですが、このリンクに来てそれだけではないというのを教えてもらっているのでベストを尽くすという表現をしました。二つ目は、インカレで女子総合優勝することです。前回は中京大に負けてしまって悔しかったので今年自分が出場して優勝したいですし、明大スケート部の総合優勝にも貢献できる成績を残せたらなと思います」

 

――スケートのファンの方々に向けてメッセージをお願いします。

 「いつも応援ありがとうございます。東京ブロックも近づいてきて、いよいよラストシーズンが始まってしまうなと思っています。一つ一つの大会でもう見られなくなってしまうのかと思ってもらえるような演技、少しでもいいものを見たなと思っていただけるように頑張っていきたいなと思います」

 

――ありがとうございました。

 

[守屋沙弥香]