
(17)シーズン直前インタビュー 山隈太一朗(1)
シーズン開幕目前。明大にはシニアデビューの選手がいるが、今季限りで引退という選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。一人一人の声をお届けする。
(このインタビューは9月22日に行われたものです)
第12回は山隈太一朗(営4=芦屋国際)のインタビューです。
――昨シーズンを振り返っていかがでしたか。
「去年はうまくいかないところから始まって、一歩ずつ良くなっていけたかな、成長できたかなと思える年でした。スタートの夏の2試合が全然良くなくて、そこからどうするかというのをすごく考えました。練習に向けての態度であったり練習の内容であったりというところを変えて、それでも結果が出たり出なかったり。それでも毎試合毎試合一歩前に進めているなという感覚がすごくあって。それを最後まで上げ続けることができたというのがとても良かったし、自分の中で一つトラウマだった全日本選手権(以下、全日本)SP(ショートプログラム)落ちというのを克服もできたし、ユニバーシアードもなかったですが代表に選ばれることができましたし。自分の中ですごく得るものが多かったシーズンだったと思います」
――東京夏季大会(以下、夏季フィギュア)から1カ月ほど経ちましたがご自身の中で変わった点などはございますか。
「夏季フィギュアは自分の中で得るものと失ったものがあって。今年はとてもいい状態で夏の期間を過ごせたのですが、SPはまだなんとか良かったのですが、FS(フリースケーティング)が自分の中で嫌な印象をつけてしまうプログラムになってしまいました。ただ周りの人たちや長年僕を見てくれている人たちには『まだ夏だしそんなに悲観視することはないよ』と言ってもらえるのですが、うまくいかないなあというもがきが続いていて。自分の中でいろいろな物事が上向きにならないうまくいかない状況が続いているので、夏季フィギュアの良くなかったところを引きずってしまっている印象はあります。それまでがすごく状態が良くて自信があったので、それがうまく出せなかったというところから自信を失っているなと。
反対に得たものとしてはやはり、SPとFS両方でしっかりとアクセルを降りられたことですかね。1本目というのはファーストインプレッションだし、そこが決まるとその後の流れをいい方向に持っていきやすくなるすごく重要な要素の一つなので、そこをしっかりSPもFSも成功させたというのはすごく大事なことだなと思います」
――夏季フィギュアのFSでは昔の衣装を着用していて驚きました。失礼な言い方だったら申し訳ないのですが、大学生活で筋肉もついたと思いますがまだ入るのですね。
「スケート選手は細くなっていくことが多いんですよ(笑)。高校生の頃の筋肉は大きくて、筋肉がすごくついていたしそれ以外もついていたのが、大学生になってどんどん余分なものが削り落とされていって。僕の場合はむしろ線が細くなりました。イメージとしては膨らんでいた筋肉がきゅっと引き締まると言ったら分かりやすいですかね。筋肉を大きくする方ではなくそういう鍛え方をします。スケートはそこら辺が難しくて、鍛えればいいのかと思ったら、体は細くて小さくて軽くてどうにか跳びやすい方向にシフトするのが今の時代なので。でかくても細くあるべきだし。ある意味僕の体型って時代遅れなんですよね(笑)、ただ僕は見た目のインパクトも重要視しているのでこれ以上細くなると弱々しく見えてしまうし、今の自分の体はすごく動きやすいし。僕は軽い人間ではないので動かすには筋肉がいるし、筋肉も細いわけではないので、今の体型がベストかなと思っています。これを維持することが大事かなって」
――山隈選手はいつも淡々としている印象がありますが、夏季フィギュアの際は自分の心を落ち着けようと意識していた印象があります。
「夏季フィギュアの時は準備不足で気持ちで押し切らなければという部分がありました。100パーセント準備できるタイミングはいつくるか全く予想不可能だし、準備ができていなかったとしてそのまま諦めるのか。そういうわけにもいかないので気持ちを盛り上げなければ、だからといって盛り上がりすぎて適当な動きをしてはいけないし、といった均衡をとらないと、という意識はあります。基本的に試合の時にあまり落ち着けようとはしないですね。そこでバランスを見失っているという側面が夏の試合は特に強かったと思います。
僕の場合は一つ一つの試合を無駄にする時間は全くなくて、夏の試合だしという気持ちはゼロで。夏の試合でも冬の試合でもいつの試合でも試合は試合なので全力で臨みますし、全力でいいパフォーマンスを出そうとするし。全力でぶつかったからこそ見える課題もあると思うので、そこは大事だなと思います」
――夏季フィギュア後「かみ合わない、調子が悪い」といったお話もありました。
「調子が悪いという話を僕はたまにするのですが、あまりしない方がいいと思っていて。かみ合わないといった方が表現的にはいいのかな。体の調子自体はとても良く動きますし調子は悪くないのですが、体のリズム、ジャンプのタイミングであったりプログラムのリズムがすごくかみ合っていないのを感じていて。そこがなかなか合わなくて苦労しています」
――以前自炊をしているとおっしゃっていましたが、最近はいかがですか。
「今はもう作ってないですよ(笑)。最近はお昼だけ作ったり、ほとんど家の近くの定食屋に行っています」
――自炊に関しての成長エピソードなどがあれば教えてください。
「一人暮らしをするまで一切自炊をしたことはなかったのですが、手際が良くなったと思います。味は最初からまずくなかったし、やはり自分の作るものはおいしく感じるじゃないですか。だから実際どうかはわからないけど……結構おいしかったです。成長を感じる点かは分からないのですが、俺もそこそこ料理できるなとは思いましたよ(笑)」
――先日行われた合宿ではどのようなことを行いましたか。
「基本的に部の練習と同じで曲かけがメインで、あとはみんなでリレーをしたりとか。そこら辺は合宿ならではですよね」
――合宿の中で一番楽しかった思い出を教えてください。
「リレーですかね。二つのチームに分かれてガチで走るのが毎年恒例で、僕の中ではそれが一番楽しいです(陸上競技が好きということですか?)いや単純にリレーは楽しいじゃないですか。みんなで応援する団体競技という側面もあるし、みんなで応援して走るというのはスケートをしているとなかなかないことなのでそれが好きですね(ちなみに速いのは誰ですか?)俺と駿(佐藤駿・政経1=埼玉栄)が速かったです。義正(堀義正・商3=新渡戸文化)も速かったですよ。僕はもう今年で終わりですが、来年からは駿がいろいろな意味でエースになるのではないですかね」
[向井瑠風]
(2)に続きます。
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