(16)シーズン直前インタビュー 松原星(1)

 シーズン開幕目前。明大にはシニアデビューの選手がいるが、今季限りで引退という選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。一人一人の声をお届けする。


(このインタビューは9月15日に行われたものです)

 

第11回は松原星(商4=武蔵野学院)のインタビューです。

 

――昨シーズンを振り返っていかがですか。

 「だいぶ経ってしまって忘れてしまいましたが、曲かけ練習をあまりできないまま臨む試合が多くて不安な中臨むことが多かったかなと思うシーズンでした。ですが、だからこそ一つ一つの練習や曲かけを大事にするようになって、結果的に冬季国民体育大会(以下、国体)まで出ることができたので、自分の中では危機的な状況だったとは思うのですが結果的にはいい練習を積めるきっかけになったと思います」

 

――大学入学後から今までのモチベーションの変化について教えてください。 

 「大学1年生の時、入学して早々ケガをして、両方の足首を捻挫してしまいました。スタートダッシュとしては関東学生選手権(以下、春関)でかなり良くて、その時はケガをしてなくてそれが終わってケガをしてしまって、東京選手権に間に合うか間に合わないかの状態でした。その年はぎりぎりで、ずっと痛くて練習もままならない状態でしたが、高校生でやってきた練習の貯金があったのか、納得のいく練習ができない状態の中でも、トレーニングなどをして何とか乗り切ることができて。全日本選手権(以下、全日本)も全日本学生氷上選手権(以下、インカレ)も国体も全部出させてもらえたシーズンで自分でもびっくりなのですが、そんな感じの一年でした。

 2年生は何をしていたんだろう(笑)。(1年生の時の)捻挫の印象が強すぎて。2年生はジャンプが跳べなくなった年ですね。これまで高校生くらいからケガをすることがあって、大学1年生でもケガをしたせいで、いつ跳べなくなったのかよく分からなくて。2年生はどこもケガをしていなくて元気なのに跳べなくて『跳べなくなってしまったのだな』ということに気が付いた年でした。ジャンプを直すために先生と一から見直したり名古屋まで教わりに行ったり、いろいろなことをしてきて何とか間に合わせてシーズンを乗り切りました。大会はインカレがコロナの影響でなくなって、国体は出られなかったですが、全日本には出ました。その後は就活が忙しかった3年生後半〜4年生始まりといった感じで。1年生の時の捻挫が『人生終わりだわ』というくらい人生一のショックを受けたケガだったという記憶しかないです」

 

――1年次の捻挫はそれほど大きかったのですか。

 「初めて捻挫をしたのですが、まず左足を捻挫してしまいました。東京選手権の1カ月半前くらいになってしまい、アクセルを跳ぶ時などは本当に痛くて、1カ月しっかり休んでも痛くて、でももうやるしかないからという状態でやっていました。その後、東日本学生選手権直前になってもまとまらなくて焦っていると、スケートリンクの上で右足首を捻挫してしまい両足首を捻挫をしている状態になりました。右足首の捻挫はフリップとルッツに響く感じで、着氷すると何度も何度も捻挫を繰り返してしまって。それが恐怖で、フリップもルッツも練習できなくなってしまって、たまにできたと思ったらまた捻挫してしまって、それを繰り返して、ジャンプ恐怖症になり、やりたいのにできない、そういう状態で。シーズンが終わって病院に行ったら『これ治らないんじゃない? 捻挫繰り返し過ぎて。完治するのは無理だと思う』みたいなことを言われて人生一のショックでした。結果的にリハビリなどして今は大丈夫になりました。治らないのは本当に嫌だったので集中的にリハビリしていました」

 

――そのときは気持ちの面でもかなりきていたのですか。

 「そうですね、これまでケガはしてきたけど、治らないで練習している状態で、まだ大学1年生でこの先もあるのにスケートしていけるのかなという不安がとてもあってショックを受けました」

 

――2年生になってもリハビリを続けていたのですか。

 「これまであまりトレーニングをしっかりやっていなくて氷上練習ばかりしていたので、あまり陸上トレーニングをやる癖がありませんでした。その時に教わったものは基本的なことだったので今でも続けているトレーニングが多くて、体幹トレーニングはその時期とてもやっていたのですが今も続けています」

 

――試合前に行っているウォーミングアップはルーティンになっているのですか。

 「何をやろうと考えていたら時間がなくなってしまうので、かなり昔から試合前のアップでやることは同じです。その方が考えなくていいから楽なんですよね(笑)。中学生くらいから内容は変わっていないと思います。柔軟してストレッチをして走って回転練習して……という感じですね。家を出る前にもストレッチをしていて、ストレッチを多めにしています」

 

――モチベーションが下がってしまっているときはどのように対処していますか。

 「モチベーションが下がることがあまりなくて。確かに今年は全然成績も出ないですが、それはジャンプを変えているし、今でもまだまだ完璧に習得したとは言えなくて、モチベーションが下がっている場合ではないし、東京選手権はもう始まってしまうし、調子を上げなくてはならないので。あまりモチベーションが下がることがないのはあります」

 

――常に燃えているのですか。

 「いや、燃えてはいなくて。燃えてないから燃え尽きることはないです。一定の水準を保っています。毎年、東日本選手権が一番緊張するし一番大事な大会で、そこに向けてすごく集中して頑張るので、その後は気が抜けているというか、気が抜けてだめな時期ではないので、ある程度気が抜けてまた全日本に向けていって丁度いい期間があるからこそ苦労していないかなという感じですね」

 

――現在の練習内容について教えてください。

 「これまでは貸し切りと言ったら曲かけの練習が普通だったのですが、MFアカデミーに来て、曲かけだけではなく、貸し切りの前半はみんなでステップしたりスピンしたり、リンク全体を使って練習しています。スケーティングの部分に力を入れているリンクだと捉えていて、今はシーズンに入っているのでそんなには行なっていませんが、日曜の朝練は2つあって両方ともほぼスケーティングの貸し切りなので、スケーティングの部分を少しでも強化できるようにはなっているかなと思います」

 

――練習にあたってお手本にしている選手はいますか。

 「お手本しかいないですね。自分が今一番下だからこそなのですが、倫果ちゃん(渡辺倫果・法大)、マリアちゃん(江川マリア・政経1=香椎)もとても上手ですし、祐奈ちゃん(青木祐奈・日大)も見習うところが多いですし、すごく勉強になる貸し切りを滑っています。休憩時間はそれほど長くないのでぼーっと見ていることはありませんが、休憩の時に見たりふとした瞬間に上手な選手が目に入ったりするのはすごくありがたいです。これまでみんなが蓄積してきた部分、無意識でやっている部分などを間近で見ることができて、それが自分に追加されていっているかと言われたら微妙なところですが、まずは自分がやるべきことをこなさなければいけないと思うので、人の演技を見て吸収するにはもう少し時間が必要なのかなと思います」

 

――SP(ショートプログラム)は昨シーズンから継続ということで、その理由を教えてください。

 「特に理由があるわけではなくて、最後の年に2つ変えるのは負担がかかることなのかなと思ってどちらかは継続したいと思っていました。去年『Hallelujah』という自分の中でいい曲だなと思えるものを見つけられたし、引退っぽさもあって、衣装もとても気に入っているので継続にしたという感じです」

 

――今シーズンはどんな『Hallelujah』にしたいですか。

 「喜怒哀楽全てがあって、感謝を伝えられる曲だと思っているので、気持ちを込めて踊ることかなと思います。ジャンプがまだまだ安定していないからこそジャンプに集中してしまうことがあると思いますが、これまで以上に、振り付けの中で気を付ける部分をすごく指導してもらっているので、そこが少しでも伝わればいいな、見ている人にそれが伝わっていいプログラムに仕上がっていると捉えてもらいたいなと思います」

 

――振り付けで特に見せたい部分はありますか。

 「ジャッジの方にアピールする部分、ゆっくりとした曲でせかせか動くのではなく長くとるポーズが多いので、一つ一つのポーズがきれいにできたらなと思っています。これまで何となくしてきたポーズも、どう見せればもう少しきれいに、簡単に言えば写真で撮られたときに不細工な格好だと思われないように、振り付けてもらっている一つ一つのポーズにしっかりと意識を持ってポーズをとるように気を付けているので、そこは見てもらいたい部分かなと思います」

 

――今シーズンの仕上がりはいかがですか。

 「正直、全然ですね。完璧主義過ぎるところがあって、だからこそ少し跳べていても全然だめという表現を使う人なので伝わるか分からないのですが。自分の中ではこのまま大会に臨んでノーミスできる自信はなくて、時間が迫っているからこそ頑張らなければ、頑張らないとと言ってどうにかなる問題でもありませんが、意地でも仕上げて大会に臨みたいと思っているので、今は、結局頑張るという表現しかありませんが頑張ります」 

 

――本番で出し切れないのかそれとも根本的に何かが課題としてあるのか、どのような状況ですか。

 「出し切れないという表現は違って、練習で99.9パーセントくらい跳べないと自信を持てない人なので、サルコートウを本当にここまで決めることができているのは練習でほとんど失敗しないものだからこそずっと成功させられています。そういうジャンプに仕上げるというのは難しいことですが、どんなコンディションであっても気を付けるところを気を付けて集中して跳べば跳べるという状態にもっていくのが課題です。考えて跳べなかった時にどうして跳べなかったのか悩んでしまう部分がまだまだあるのがとても嫌なので、今1回跳べなくても『ここを気を付けてなかったからだ』とここに気を付ければ跳べるという、失敗を失敗と捉えなくても済むような状態にもっていかないと自信は全然つかないので早くその状態にもっていきたいです」

 

[守屋沙弥香]

(2)に続きます。