(14)シーズン直前インタビュー 佐藤伊吹

 シーズン開幕目前。明大にはシニアデビューの選手がいるが、今季限りで引退という選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。一人一人の声をお届けする。

(このインタビューは9月17日に行われたものです)


第9回は佐藤伊吹(政経4=駒場学園)のインタビューです。


――最近の練習状況はいかがですか。

 「昨年度はリンクが閉まってしまったのですが、今年度はここまで何もなくいつものホームリンクで練習してくることができました。夏に試合が二つあったので、それを踏まえて今は東京選手権に向けて練習しています。問題なく練習できていると思います」


――昨シーズンを振り返っていかがですか。

 「昨シーズンは全日本選手権(以下、全日本)で自分の力を出し切ることができたので、そこはすごく満足しています。その後全日本学生選手権(インカレ)と冬季国民体育大会(国体)にも出て、少し全日本からは調子が落ちてしまうような演技になってしまった部分もありました。全体的にはとても満足のいくシーズンだったのですが、それ以上のことが今シーズンできればいいなと思います」


――昨シーズンの調子が落ちた原因としてご自分ではどのようにお考えですか。

 「リンクが閉まってしまったことで、毎年やっていたような曲をかける練習を積み重ねることができませんでした。それが試合本番でも自信のなさにつながってしまっていた部分はあったと思います。私は練習でできたということが自信になって試合でもうまくいくタイプだと思うので、そこの積み重ねが少し足りなかったかなと思っています」


――今の調子はいかがですか。

 「8月に2試合出て、1試合目は割と良かったのですが、この前の東京夏季大会ではあまり出来が良くありませんでした。そこで改めて自分の演技をビデオで見て、直した方がいいところがすごくたくさん出てきたので、そこを今直している途中という状況です。でも去年の今頃に比べたら、調子は上がっているかなと思います」


――今シーズンのSP(ショートプログラム)について教えてください。

 「SPは『風と共に去りぬ』の曲です。最後のシーズンということで、ボーカルが入った明るい曲で終わりたいなと思って先生に選んでいただきました。ただ明るいだけじゃなくて、その中にも強さがある曲です。ステップの途中の飛ぶところなど振付の面でもただテンポのいい明るいだけじゃない、深さとか強さを出せればいいなと思っています」


――SPでこだわったところや見どころは何ですか。

 「曲を決めるときには、まず明るめの曲で女性ボーカルというのが私の中ではラストシーズンのSPで外せないなと思っていた部分です。先ほども言ったようにステップのところですごく盛り上がる部分があって、そこに合わせた強さを意識した大きく動くような振付があります。そういったところを曲と合わせて動くのを見てほしいなと思います」


――次にFS(フリースケーティング)について教えてください。

 「『小雀に捧げる歌』という曲です。FSはなかなか曲が決まらなくて、昨シーズンの曲でもいいかなと思っていたこともありました。全日本でいい演技ができたので、あれ以上のものを見せることは難しいのかなということと、昨シーズンの印象で終わるのではなくて、今年またラストシーズンのために新しく作ったものを見せたいなという思いがあったので、やはり変えようと決めました。その時期がかなり遅かったんです。ただ明るいだけじゃない少し暗い部分など大人っぽい部分も入ったこの曲で、これまでスケートが楽しいだけじゃなく大変だったことも含めて、ラストシーズンだからこそ滑ることができるような表現ができたらなと思います」


――FSでこだわったところや見どころは何ですか。

 「最後の1分ぐらいが聞いたことがある人も多い曲なのかなと思っています。その部分に合わせてコレオシークエンスを持ってきています。そこのスパイラルだったり盛り上がりの部分を、うまく自分の気持ちを込めて表現できたらなと思っています。そしてやはり最初のアクセルとトーループの連続ジャンプは昨シーズンから自信を持って飛んでいるジャンプなので、最初の1発目のそこも見てほしいなと思います」


――練習で苦労したところはありますか。

 「SPに関しては、最初に3回転+3回転を入れているのですが、そこの確率があまりよくありませんでした。曲を変えた時に、その曲の中で3回転+3回転を跳ぶタイミングがなかなか合わないことが最初は続いていました。プログラム的にというよりも、まずジャンプを入れるのに苦労しているかなという印象があります。FSに関しては作ってから間もなく試合をすることになってしまいました。その1ヶ月くらいの中でいかに回数を滑りこなして、体力的にもですし、体の動きを曲に合わせるかということにまず苦労しました。どうしてもジャンプに集中してしまって、短い期間でも振付とか表情とかに気を配れるようにするのが大変でした」


――今シーズンのご自身の強みを教えてください。

 「ジャンプだけでなく、プログラムを滑っている中で、何か自分の思いが伝わるような演技がしたいなと思っています。表情や動きの一つ一つを丁寧にやるということをジャンプと並行して頑張っている状況なので、そこが強みになればいいなと思っています」


――夏休みはどのように過ごしましたか。

 「いつもだったら3月とかにプログラムができているのが今年はすごく遅かったので、そのプログラムに慣れるのに必死になっていたのはあるのかなと思っています。この技を重点的に練習したというよりも、プログラムを慣らす、その中でジャンプをいれて表現面もこなすというのに力を注いでいたかなと思います。練習以外に関しては、基本的に練習しかしていなかったので、そんなにないです(笑)」


――スケート漬けでほかの時間はあまり取れなかった感じですか。

 「でも友達とご飯に行ったり、会ったりということはしていました」


――大学生最後の合宿はいかがでしたか。

 「小さい時から行っていた場所になじみのメンバーと合宿に行ったのですが、こういうことをするのも本当にこれが最後なんだなと思うとかなり寂しい部分も大きかったです。もうこんなことをすることは今後ないだろうからこそ頑張らなければいけないと思ったので、力を入れて頑張れたかなと思っています」


――ラストシーズンを前にして今の心境を教えてください。

 「今できる全力のことをやって悔いなく終わりたいなというのがすごく大きいです。スケートをこれだけ頑張れるのは今しかないと思っています。17年という長い時間やってきたからこそ、最後自分が納得いく形で終わりたいと思っています。なのでそれに向けてやることを全部やり切るだけかなと思います」


――大学4年間を振り返ってみていかがですか。

 「高校を卒業する段階でもっとスケートがしたいなと思って明大のスケート部に入りました。スケート漬けの毎日になると思っていたのですが、それだけではありませんでした。新しい友達や自分が今まで出会ってこなかったような人に出会ったことで、考え方がすごく広がったなと思う部分がたくさんあります。スケートを続けてきたことにプラスして、明大に入っていろいろな人に出会ったことがすごく自分にとっていいことだったし、楽しくて充実した4年間だったなと振り返ってみて思います」


――今シーズンの目標と意気込みをお願いします。

 「成績に関しては、全日本で昨シーズンの順位を上回る自己最高順位を取るということが目標です。演技面に関しては、これまでいろんな人に支えられてここまできたという感謝の気持ちだったり、自分がこれまでスケートをやってきて楽しかったり大変だったりしたさまざまな気持ちを込めた演技をしたいなと思っています」


――ファンの方々に向けてメッセージをお願いします。

 「いつも演技を見て応援してくださってありがとうございます。今シーズンが私のラストシーズンになるのですが、これまでと変わらず、全力でSPとFSノーミスして全日本で最高順位を取るということを目標に、全力で練習して、皆さんに良い演技をお見せできるように頑張っていきます。ラストシーズン悔いなく終われるように頑張るので、今シーズンもよろしくお願いします」


――ありがとうございました。


[増田杏]