(12)シーズン直前インタビュー 堀義正

 シーズン開幕目前。明大にはシニアデビューの選手がいるが、今季限りで引退という選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。一人一人の声をお届けする。

(このインタビューは9月23日に行われたものです)

 

第7回は堀義正(商3=新渡戸文化)のインタビューです。

 

――昨シーズンを振り返っていかがでしたか。

 「全日本選手権(以下、全日本)に出場できたのは個人的には収穫になりました。しかしそこにいくまでの過程の東京選手権(以下、東京ブロック)や東日本選手権などの大会では、演技の難易度を下げたにもかかわらずスピンを取りこぼしたりと、反省点しか残らなかったと思っています」

 

――オフシーズンの間はどのような練習を行っていましたか。

 「オフシーズンの間はリンク側が選手に貸し切りで用意してくださったりするので、そこでセッションに参加したりします。また、試合が当面ない時はトレーニングを1日2回に増やしたり、練習量を増やしたり、シーズン中は全て満遍なく練習するところを一つのジャンプだけ練習する日を作ったりしました。簡単に言うと技術の底上げをしていました」

 

――昨シーズンは体力面を課題として挙げていましたが、そこは改善できましたか。

「トレーニングを毎年やっていた方からするとまだまだと言われてしまうかもしれませんが、自分の中ではちょっとましになったかと思います」

 

――反省点のスピンや、昨シーズンにはジャンプの種類が戻らないという話もありましたが、その点はいかがですか。

 「一応改善というか戻すところまでは戻せたかなと思います。ただ100パーセント戻せたわけではなく、いまだにジャンプが壊れてしまうことなどもあります。今日の朝練でもすごく調子が悪くて跳べる日と跳べない日との差が大きいので、そこを埋めていかないとまだ戻ったとは言えないのかなと思います。体の調子が悪くても跳べる日は跳べるのですが、決定的な違いは気持ちの入りようだと思うんですよね。『跳べる!』と思えば跳べるのですが、失敗が少し続いたりすると負の連鎖で跳び方がだんだん分からなくなりその日は跳べなくなってしまったり。気持ちの切り替えを早くしないと差は埋めていけないのかなと思います」

 

――気持ちの切り替えについては、昨年の全日本の後の全日本学生選手権でも燃え尽き症候群といった話もありましたが今回も同様の状況ということでしょうか。

 「今回はそれとはまた違います。似たような感覚だとは思いますが、ジャンプが得意だった分完璧主義になっているところがあって。このジャンプはこの技術レベルまで跳ばなければいけないと自分の中に思っている節があります。だからこそ完璧主義のようなものが働いてどんどんずれていくというか、完璧に跳ぼうとすればするほど跳べなくなっていく。それが負の連鎖となってジャンプが壊れていくと自覚はしているのですが、なかなか行動に移せなくてそれが跳べる日と跳べない日の原因かなと思います」

 

――負の連鎖でジャンプが壊れるというのは、昨シーズンも跳べていたジャンプもということでしょうか。それとも新たに戻している最中のジャンプのみですか。

「前者です…実は僕今4日間くらいジャンプをまともに降りられていないんですよ。状況としては一番やばいです(笑)」

 

――気持ちの面はさておき、体調面などはいかがでしょうか。腕に湿布が見られますが。

 「これは今朝の練習で調子が悪すぎるせいで180度横になって左半身から落ちてしまって。とても痛いし湿布だらけという状況です。ですが今の体調はとても良いですし、不調の予感も特にないです。ただ飯塚杯(飯塚アイスパレス杯争奪大会)の辺りでコロナウイルスに感染していて、熱が39.8度まで上がってしまったので8日間くらい動けませんでした。後遺症は、無気力感などはありませんでしたが頭痛と、味覚嗅覚がつい1週間ほど前まで戻りませんでした。3週間ほど味がしなかったのがつらかったですが、食べられない分痩せたのでうれしいです(笑)」

 

――痩せてしまうと体力も落ちてしまう印象がありますがそうではないのですね。

 「うーん…僕高校生の時1か月で8キロ落としたことがあって。その時は東京選手権の直前にトリプルアクセルを跳ぶのに重すぎるということで落としたのですが、そのおかげかそのシーズンはまあまあ調子が良かったんですよ。だから今回も軽い気持ちで痩せたのですが、なんなら体力が増えた気がします。痩せたから体が軽くなってそう感じているだけなのかな?」

 

――FS(フリースケーティング)は昨シーズンから変更されました。

 「曲から先生と相談して変えました。『Mozart, the opera rock』という映画の曲で、昨シーズン同様自分が演じたことの無いジャンルだと思います。少し表現することが難しそうな、ちょっとした色気のようなものを表現する曲です(昨シーズンから大人路線を目指しているのでしょうか)振り付けをまだ変えるか変えないか決めているのですが、大人路線になると思います(笑)」

 

――昨シーズンはご自身で編曲などを行っていましたが今シーズンはいかがですか。

 「編曲などは今回はやっていませんが、3秒ここを延ばしてほしいなど注文はしました(細かいですね)僕の曲の場合はスピンの後に3秒延ばせば一つレベルが上がるようなことがあって。今シーズンから(ルール改正で)スピンが終わったあとに少し難しい動きをすればレベルが上がるようになったんですよ。簡単にいうとバリエーションが広がったので、僕はその3秒を使ってレベルを上げられるような工夫をしています(今シーズンからルール改正が行われていたのですね)若干ジャンプの配点が変わっていたり、クラスターステップも少し複雑にルール変更されたりしているので、ステップを作り直すことになりました。そのおかげで秒数も細かく調整することができて結果オーライの面もありますが、僕にとって今シーズン、ステップはレベルを取ることが少しだけ難しくなりました。スピンも全部変更したので、頑張らなければいけないですね」

 

――東京ブロックに向けてさらに強化したい点はどこですか。

 「最初もお話した通り、自分はジャンプが得意だという自負があったので、自信を持ってジャンプが得意ですと言えるようになりたいです」

 

――今シーズンの目標をお願いします。

 「今シーズンも全日本出場を目標に、そして実際出場が決まってからのことはその時考えたいです」

 

――ファンの皆さんにコメントをお願いします。

 「昨シーズンもシーズンを通して応援していただきありがとうございました。今シーズンは昨シーズンとはまた違ったジャンルの曲に新しくチャレンジするので、そこに少しでも大人の色気を感じてもらえるとうれしいです。また新しい僕堀義正を見ていただいて楽しんでいただければうれしいので、ぜひ今後とも応援よろしくお願いいたします」

 

――ありがとうございました。

 

[向井瑠風]