
(10)シーズン直前インタビュー 大島光翔
シーズン開幕目前。明大にはシニアデビューの選手がいるが、今季限りで引退という選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。一人一人の声をお届けする。
(このインタビューは9月16日に行われたものです)
第5回は大島光翔(政経2=立教新座)のインタビューです。
――昨シーズンを振り返ってみていかがですか。
「昨シーズンは大事な試合でミスが目立ってしまい、どの試合も自分が思うような演技ができずに終わってしまった悔しいシーズンかなと思っています」
――シーズン後の春休みにはどのようなことをしていましたか。
「アメリカに2週間ほど練習に行って、トレーニングをして、ロサンゼルスのスケートリンクでセッションに入れてもらって、向こうの男の子たちと練習する機会をもらいました」
――どのようなことを学びましたか。
「普段の練習だと自分が一番身長が高くて周りに自分よりも身長の高い選手はなかなかいないのですが、向こうに行くと自分が一番身長が低くて、全員僕より大きくて180センチや190センチくらいあって、1歩の滑りやジャンプの幅やスピンの迫力など全てにおいて勝てるところが一つもないなと感じたので、そこへ行ってからは、自分の体をより大きく見せることだったり、自分の滑りのスケールを大きくしていかないとなと思いました」
――一緒に練習していたのは同年代の人たちですか。
「同年代もいましたし、一番上はおそらくカムデンくん(カムデン・プルキネン)で、自分より年下の子も年上の子も4回転ジャンプをたくさん跳んでいて、毎日いい刺激をもらっていました」
――4回転ジャンプ、トリプルアクセル、セカンドループなどはどのような調子ですか。
「まだ調子に波があるのが正直なところですが、初戦を迎えていない中で少しでも安定感を求めて練習していかないといけないなと思っています。ですが、どのジャンプも昨シーズンより質や確率が上がってきていると思っていて、着氷するだけでなくより質のいいものを求めて練習しています」
――4回転ジャンプはどのジャンプを練習していますか。
「今練習しているのはルッツとループです。ルッツは最近片足で立てるようになってきて、ループも同じくらい、まだ立ったことはないですが自分の中で跳べそうな感触があります」
――それらのジャンプを今シーズンのプログラムに組み込む予定はありますか。
「ループはまだ考えていませんが、4回転ルッツを試合でばしっと1本決めたいと強く思っています」
――新しく練習し始めたことはありますか。
「今シーズン、スピンのルールが変わったので、自分の中ではスピンの練習が一番大変かなと思っています。レベル4を取るために必要な要素が増えて、たとえば、三つのスピンがあるのですが、その全部に難しい入り、途中での加速だったり、チェンジエッジを入れなければいけないなど、いろいろな要素が一気に追加されたので対応しなければいけないことが多いです」
――オフシーズンにはアイスショーに出演されていました。出演して何か肌で感じたことはありますか。
「お客さんの前で滑る機会をたくさんいただけて、そこで改めて自分がたくさんのお客さんの前で滑ることの楽しさや幸せを実感できたのでそれが第一に大きかったのと、プロのスケーターの方々と近くで滑らせていただいて、技術のすごさはもちろんですが、普段の振る舞いなどから違うなと思いました。プロのスケーターの方々と滑らせていただいたことで、改めてこれが自分の目指したい姿だなというのを実感できたので目標を明確に持つことができました」
――リハーサルやショーの裏側を見る機会もあったと思いますが、いかがでしたか。
「選手の方々はオンとオフの切り替えがすごくて、どんな状況でも氷に乗ってオンになった瞬間は本当に顔色が変わって完璧な滑りをされるので、そういうところが自分にはまだないところなので見習っていかなければと思いました」
――大人数で氷上で踊る機会もあったかと思いますがそちらはいかがでしたか。
「第一に足を引っ張ってはいけないということで頭がいっぱいでしたが、周りの方々も優しく教えてくださって、自分も伸び伸びと演技することができました。シングルでやっているので群舞などを踊る機会はなかなかありませんが、そういうところでスケートの楽しさを実感して普段味わえない感覚を味わうことができました」
――アイスショーに出演したことを経て、アイスショーに対する印象に変化はありましたか。
「見ていたものの裏側には出演者たちの途方もない努力があるということに気付かされて、その努力を本番で100パーセント出せているプロの人たちのすごさに驚かされたというのが一番かもしれないです」
――共演した方々の中で特に印象に残っている方はいらっしゃいますか。
「髙橋大輔選手(関西大学KFSC)とご一緒させていただいた時に練習から全部見させていただいて、髙橋選手の動きのキレや余裕を見て、他の選手にはないかっこいいものがあるので、あのキレと余裕と動きの雰囲気は何回見ても感動しました」
――夏休みに行われた明大の合宿はいかがでしたか。
「普段月に1回くらいしか部で集まる機会がない中で、コロナ禍でも合宿を開催していただいたことには感謝しかないです。明治大学という一つのまとまりで練習などをして、みんなでポジティブにお互いを高め合って練習できていたのでいい経験をさせてもらったなと思います。1年生の勢いと元気が飛び抜けてすごくて『負けちゃう負けちゃうやらなきゃやらなきゃ』という気持ちになったので、そういう意味で競争が激しくなって、明大全体としてのレベルが上がるのではないかなと思います」
――さまざまな経験を経た上で、どんな選手になっていきたいと思っていますか。
「お客さんが見ていて『一番かっこいいな』『一番面白いな』と思ってもらえるような、本当にお客さんを笑顔にしたいのが一番にありますね」
――オフシーズンにたくさんの選手と会う機会があったのではないかと思いますが、思い出話はありますか。
「髙橋大輔選手と一緒に滑ることができる機会をいただいて、一秒一秒が僕にとっては夢のような時間だったので、全てが思い出みたいな感じです。自分の中で思っていることですが、アイスショーで宙返りをできたのは今シーズンの試合に向けてのメンタル的にも自信につながるものだったなと思います」
――バックフリップは最初から成功させることができたのですか。
「そうですね、そうしないと大ケガにつながってしまうので、やると決めた時は1回で回りました」
――回った時はどのような感覚になるのですか。
「正直なところ、回っている時の記憶はなくて気付いたら降りている感じですね。(怖さはなかったのですか)そうですね、最初は恐怖との戦いですが、1回やってしまえば大丈夫という感じでした」
――趣味のサウナについて、その魅力を教えていただけますか。
「春休みも夏休みもハードな練習が続いている中で、自分の一つのリセット方法としてサウナが役立っています。気持ちも体もリセットされるので、自分が疲れた時にはかなり助けられています」
――今シーズンのSP(ショートプログラム)について教えてください。
「昨シーズンから継続で『Real?』を踊ります。新しいSPをつくっていただいたのですが、自分が合わせ切れなかった部分がありました。昨シーズンのSPは自分の中でもお気に入りだったのですがノーミスの演技ができていなかったのでもう1年滑りたいということで、振り付けを少し変えてもらって継続という形になりました」
――FS(フリースケーティング)はどのようなプログラムですか。
「今年は『トップガン』で踊ります。元々『トップガン』が好きで、今年公開された『トップガン マーヴェリック』を観に行きました。そこでトム・クルーズのかっこよさに感銘を受けてこれにしようと決めました」
――どのような思いを込めて滑りたいですか。
「映画の中の曲を合わせて4曲使っているので、最初は静かに、2曲目は激しく、3曲目でしなやかに、最後の曲でびしっとかっこよく、4曲それぞれのトム・クルーズを演じたいと言いますか、一つの演技を見ているけど物語が完成されているというのを目指しています」
――今のところ、仕上がり具合はいかがですか。
「ブロック大会(東京選手権)が迫ってきているのでシーズンに入る準備はできています。完成に近いのではないかと思います。あとは本番をこなしていってシーズン後半にいかにいい演技をもっていけるかだと思っています」
――具体的な目標は決めていますか。
「スピンのルールなどが変わってどのような採点方法か、初戦を迎えていないこともあって理解し切れていない部分はありますが、昨シーズンに200点台を出せたので今シーズンは220点や230点を超えられるように頑張っていきたいです」
――技術面での今の課題はありますか。
「ルール変更に伴ったスピンの変更とステップもルール変更があって少し難しくなっているので、そこでの取りこぼしを最小限に抑えて滑っていかないとなと思っています。ジャンプでは一本一本の質を良くしてGOEでの加点をもらえるようなジャンプをしていかないといけないなと思います」
――今シーズンの目標を教えてください。
「初戦からノーミスの演技を目指し、シーズン後半の全日本選手権で12位以内、全日本学生氷上選手権(インカレ)で個人表彰台、団体優勝を目標に頑張ります」
――ファンの皆さんに向けてメッセージをお願いします。
「今シーズンもおそらく有観客の試合が少ない中で、もし僕の演技を生で見てくださる機会があったら、ぜひ競技ということを忘れて心から楽しんでいただきたいなと僕は思っています。少しでもいい思い出になるように、一生懸命楽しませられる演技をできるように心掛けるので今年も応援よろしくお願いします」
――ありがとうございました。
[守屋沙弥香]
(写真は本人提供)
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