(8)シーズン直前インタビュー 住吉りをん
シーズン開幕目前。明大にはシニアデビューの選手がいるが、今季限りで引退という選手もいる。新たなシーズンの始まりを前に何を思うのか。一人一人の声をお届けする。
(このインタビューは9月19日に行われたものです)
第3回は住吉りをん(商1=駒場学園)のインタビューです。
――夏休み中、合宿などには行かれましたか。
「長野の野辺山に行きました。プログラムを通しでかけるという練習を何度もしたのですが、高地でそれだけプログラムを通すのは本当にきつくて、かなり体にきました(笑)」
――合宿で新たな発見はありましたか。
「オフシーズンでそれだけきついことをした方がシーズンに向けて体力もつくので、いいトレーニングになったと思います」
――個人でも合宿などはされましたか。
「習っているコーチとチームとしての合宿があって、盛岡でやりました」
――先日の東京夏季大会はご自身にとってどのような大会でしたか。
「夏休みに3回試合に出場しましたがその中で一番収穫があった試合だと思います。試合の中で練習と同じ力を出すというのが最近の自分の課題としてあります。それがS P(ショートプログラム)でどうしてできなかったのかなというのを考えて、F S(フリースケーティング)で4回転は失敗してしまいましたが、そこでしっかり切り替えることができたのが収穫かなと思います。夏の間にそれができたことがシーズンに向けていい一歩になったかなと思っていて、自分の中では結果がどうとかではなくて気持ちの面で良かったなと思います」
――現在、4回転トーループをプログラムに組み込んでいますが、他の4回転には取り組まれていますか。
「練習ではトリプルアクセルと4回転サルコー、4回転ループに取り組んでいて、日によって調子の良しあしはありますが、将来的には全部(プログラムに)入れられるようにしたいなと思います。トーループ以外はまだ準備段階というところです」
――4回転に対する恐怖心などはありますか。
「日によりますが怖い時は怖いです。勢いよくいける時もありますが気持ちや体が疲れている時は怖さに出てくることもありますし、疲れているから気持ちが上がらずに怖いなと思うこともあります。体も心もベストな状態に持っていかないとなかなか練習できないです」
――今までで一番緊張した大会を教えてください。
「前回の全日本選手権(以下、全日本)のS Pの時です。最初のポーズを取った瞬間に足が震えてしまいましたが、動き出したらそれが集中に変わり、結果ノーミスで終わることができて良かったです」
――大勢の観客の中で演技する際はどのような気持ちで挑まれていますか。
「観客が多ければ多いほど、試合会場が広ければ広いほど、気持ちが乗ります。それだけの人数が自分のために時間を割いてくれるわけで、私のために来てくれている。その4分間は自分以外見ないじゃないですか(笑)。すごい状況だと思います。今までは緊張とかもありましたが、そうやって考えるようになってからうれしいなと思えるようになりました」
――演技前に音楽を聴いたりしますか。
「あまり聴かないです。集中したい時は歌詞が入ってこないように洋楽を聴いたりします。周りの音をふさぐためだけに聴く感じです」
――何かルーティンはありますか。
「靴は絶対左から履きます。昔、右足を怪我した時に右足に靴を履く時間を短くしようとしたのがきっかけで、それから左から履かないと気持ち悪くなってしまいます(笑)。靴を置いておくときも左が上になるようにしています。スケート靴が立てて置けないので」
――今年はどんなプログラムで挑みますか。
「S Pは『White Flowers Take Their Bath』という曲です。ストーリー性がある曲ではないのでどんなことを伝えたいとかは特にありませんが、情景として水の中をきれいな花が浮かんで流れる様子で、水の流れでも速かったり遅かったりなどいろいろあるので、緩急ある水の流れを想像してもらえるようなプログラムになっていると思います。F Sは『Enchantress』と言って和訳すると魔術師という曲です。その曲名の意味とは異なりますがアメリカに滞在して話し合っていくうちにストーリーが出来上がってきました。飛べない鳥が試練や困難に対して、自分の声を信じてそういうものを乗り越えて羽ばたいていくような成長の物語を表したいと振付師の方と話していて、そのプログラムを見て観客の方を勇気づけられたらなと思います」
――見所はどこですか。
「S Pはところどころに水の流れを思わせる手の動きがあるのでそこに注目してもらいたいのと、ステップのところから曲調が変わるのでそこで盛り上がりを見せられたらなと思います。F Sは困難みたいなものを表すのがステップで、自分の中でかなりきついくらいに詰まったステップなので、そこで激しさみたいなのを見てもらえたらなと思います」
――衣装のイメージを教えてください。
「S Pは今作り直していて新しい衣装を今度の東京選手権から着るのですが、水の流れを連想させる衣装にしています。シュワシュワしたものが斜めに入っているのでその感じから水のイメージをしてもらえる衣装にしようと思っています。F Sは自然というテーマなので、色は薄い緑から青で、羽がついていたりして自然の中で鳥が羽ばたくような様子をイメージした衣装になっています」
――完成度はいかがですか。
「まだまだですね。それぞれのプログラムでブラッシュアップと言って1回作ったものを何度も直していくのですが、まだそれをしている段階です。ブラッシュアップしてもらったものを自分の中に取り込んで完成形にしなくてはならないので、40%と言ったところです」
――東京選手権までには上げていけそうですか。
「60%でもいいと思っていて、全日本までには100%にしたいと思っているのでそこに向けて少しずつ上げていけたらなと思います」
――ご自身の持ち味を教えてください。
「スケーティングが滑ると言っていただくのが自分にとってとても嬉しいです。スケーティングが滑る分、リンクの中で大きく見えるので、そこの部分は基礎的なスケーティングの練習をすごく大事にしていることの成果だと思います。あと手が長いらしくて会った人によく言われます(笑)。手の使い方をよくすればもっと(点数が)入ると思うので、そこを重点的に練習しています。長い分少しでも変なふうに動かすと汚く見えてしまうので、汚く見えてしまうところを粗探しみたいな感じで潰していく作業をしています」
――今シーズンへの意気込みをお願いします。
「最大の目標は全日本で表彰台に乗ることですが、そこに向けてG Pシリーズも2戦出場する機会があるので、両方の試合で結果を残してタイトルを目指したいです。一つ一つの試合を丁寧にこなすのが一番大事かなと思います。もちろん4回転を試合中に決めることも絶対に叶えたいです」
――ファンの方に一言お願いします。
「シニア1年目ということで怖がることは何もなく、チャレンジ精神という感じで頑張るので私のチャレンジを見守っていただけたらなと思います。よろしくお願いします」
――ありがとうございました。
[冨川航平]
(写真は本人提供)
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