(68)短距離部門・渡邉高博コーチ特別インタビュー

2022.08.26

 明大競走部短距離部門の勢いがすさまじい。昨年9月に行われた日本学生対校選手権(以下、日本インカレ)にて、4×100メートルRで明大初の39秒台となる39秒96をマーク。今年5月の関東学生対校選手権(以下、関東インカレ)では39秒51とさらに明大記録を更新した。個人レベルでも100メートル、200メートルの木村稜(政経3=乙訓)や三段跳びの鈴木憲伸(営4=明大中野八王子)など、現役での明大記録保持者が2人も。秋シーズンでもさらなる活躍が期待される短距離部門。そこで、今回は短距離部門の指導にあたっている渡邉高博コーチにお話を伺った。(この取材は7月2日に行ったものです)

 

 

――春シーズンを振り返っていかがですか。

 「3年前に関東インカレという陸上競技をやっていたら一つ核となる春の大会で、2部落ちしています。昨年度1部昇格をかなえて、今年度は初めて1部に上がってきた年でした。1部で勝負ができないで2部落ちするチームは結構多いんですよ。なので1部の器で勝負することを目標に1年間やってきました。それが結果的には以前のように1部でびびって戦うのではなく、1部で確実に勝負ができる位置に持ってこられたのは現在のうちの状況としては、非常によく仕上がったと思います。それは短距離種目に関わらず、長距離とか競歩とか全体としてかなった結果だと思います。4×100メートルRで明大記録が出るなど、これをきっかけにもう一つ上を狙えるような手応えを感じているので、そういう意味では春は上出来だと思います」

 

――関東インカレでは、ピーキングがしっかりとはまっていたと感じたのですが、関東インカレに向けての準備はどのようにされていましたか。

 「本来だと陸上は年間の大会スケジュールが大体決まっているのですが、東京五輪が1年ずれて開催されたことに代表されるように、今年度はどれもこれも、がちゃがちゃでした。その中でもこの状況に振り回されずに、逆に『今がチャンスだよ』と彼らにずっと伝えていました。いろいろな制限や制約を受けている中で明大競走部は大学側の理解も得て良い環境でできています。この時だからこそより一層力を出しましょうと言い続けていました。今年度だと、なくなっちゃいましたけど、ユニバーシアード(ワールドユニバーシティゲームズ)を目指してやっていました。そのために逆算すると選考があり得ないシーズンインのタイミングで入ってくるので、前倒しをして、無理を言って沖縄で合宿をさせてもらって、仕上げてきました。以前は学生の感覚で言うと、山がぴっとあってぴっと落ちるんですけど、それでは間に合わないので、今回は冬からずっと高いピークで入って早めに上げといてそれをなんとか長く引っ張る。その長く引っ張る終わりが関東インカレくらいの時で。今までやったことがなかったですが、それがなんとかかなってそこまでこられました」

 

――ここ数年での短距離部門での変化はどのように感じていますか。

 「僕がコーチに就任して6年になります。僕の専門が短距離なので、当初から短距離で一つ結果を出すために4×100メートルRと4×400メートルRのこの二つを日本一にしたいという思いで選手を勧誘してきました。それがこつこつと実を結んで個人の力が付いてきたものが、やっと出てきました。本来ですと僕の専門の4×400メートルRの方からくると思っていたのですが、逆に今年はこの秋4×100メートルRの方が一気にもしかしたら戦えるのかなというところまで、選手層も厚くなってきました。そういう意味ではこの強化を認めてくれているチームに感謝したいです。本来ならトラックアンドフィールドを総合的に強化したいと皆さん思うのでしょうけれど、僕の100、200、400メートルのみでやりたいということをかなえていただいて、やっとそれが6年という年数と共に結んできたという感じです」

 

――短距離部門の短期的な目標と長期的なビジョンを教えていただきたいです。

 「まずはやはり個人の能力を高めていくというプロセスで今までやってきました。そもそも取っている選手も少ないので、その中でできるだけ取りこぼしなくやってきました。いろいろなチームと比較して人数が少ないですけれど、だからこそまずはそれぞれが高校時代の自己記録を更新するという目標があります。少し先のところで言うと、日本一ですね。これは常にみんなの頭に置いています。日本一になればその先は、日本代表に送り込んでいくというプロセスになっていくのかなと思います」

 

――明大競走部短距離部門の強みやアピールポイントは何ですか。

 「陸上競技選手として大学4年間を過ごしてそのまま終わったのではつまらないと思っています。僕は大人としても先輩ですし、彼らも4年を経て大人への仲間入りをします。子供扱いされていた高校時代から社会人の入口になってきて、4年を経て社会に溶け込んでいく彼らに対しては、できるだけ対等でいたいと思っています。対等ということは、部活動のように上から落とすのではなくて、どちらかというと彼らが発起で、こっちは支える側に徹するような感じです。自発的に行動を起こして、それに対して足りないところをコーチに求めてくるというスタイルで。これを4年間かけて定着させていけば社会に出て行く時に、陸上競技以外の活動を起こすとしてもそれなりに社会に受け入れてもらえるスタンスでいけるのかなと思います。そこは僕も長くコーチ業を行っていてすごく感じているところです。それが結果的に競技として結び付いてくれると安定感などの向上に結び付いてくれるのかなと思っています」

 

――直近では日本インカレと日本選手権リレーがあると思います。そこに向けての目標はいかがですか。

 「こんなことを言うと彼らも変に緊張するかもしれないですが、僕の中ではもう4×100メートルRは勝てるチームだと思っています。なのでリレーに関しては、勝てる時に勝っておきたいと思うので、日本インカレや日本選手権リレーで優勝を狙いたいと思っています」

 

――そこに向けてこの夏はどのように取り組みますか。

 「夏の間は極力涼しいところで、自発的にしっかり追い込んでもらおうと思います。もう一度、お互いに共有する目的意識みたいなものをみんなで一体化しておきたいです。どんな時もみんながぶれないようにしたいと思っています」

 

――ありがとうございました。

 

[大橋直輝]