(34)シーズン後インタビュー 堀義正

 思いを込めた演技で氷上を彩り、見る者の心を躍らせてくれた選手たち。シーズンを通してそれぞれが味わった思いはさまざまである。新型コロナウイルスの影響にも負けず戦い抜いた今シーズン。その振り返りのインタビューをお届けする。

 

(この取材は1月31日に行われたものです)

 

第5回は堀義正(商2=新渡戸文化)のインタビューです。

 

――最近大学ではテスト期間でしたがいかがでしたか。

 「普通ですかね。でも一つだけ英語が危なくて、評価対象が70点以上だったのですが、僕は76点で『危なっ』て思いました(笑)」

 

――今シーズンは堀選手にとってどんなシーズンでしたか。

 「やれる所までやれればいいなと思って始まったシーズンだったので、全日本選手権(以下、全日本)に行けたという意味では上々なんじゃないかなと。ですが(全日本に)出る以上は練習通りの演技がしたかったという思いが残ってしまうので、そういうのができなかったということで改善点が見つかる良いシーズンになったと思います」

 

――シーズン開幕前のインタビューで『全日本出場・日本学生氷上選手権(以下、インカレ)に代表選手として出場』という目標を挙げていました。大会結果がご自身で納得いくものだったかはさておき、両方達成できた要因はなんでしょうか。

 「要因としては、ちゃんとした練習方法を守ってけがをせずに地道に毎日を大切にしてきたから出場できたのではないかなと思います。目標にしていたことを実現するための練習方法というのをやっていたつもりで、ただ目標を達成することだけの練習しかやってこなかったので、だから目標だけで止まってしまったのかなと思うのですが(目標を達成するための練習とはけがをしないような練習?)そうですね。僕は毎年けがをしていたタイプで、けがをしなかったシーズンというのはジュニアから見ても初めてなんじゃないかなと思うくらい(笑)まともなシーズンでした」

 

――ジャンプの跳び方が変わったことは、けがが無かったことにつながりますか。

 「自分の気持ち次第なところがあったと思っています。少し前もお話しましたが僕は跳べないと熱くなってしまうタイプで。跳べなかったら跳べるまで練習をやめない、というのを改善した自分の気持ちの変化だと思います。大人になりました(笑)」

 

――全日本での選考の場で良い成績を出せたり、インカレでシーズン最高得点を出したり、今シーズンはペース配分がとても上手だったという印象があります。そこを上手にできた秘訣などはありますか。

 「うーん、なんだろう…今思ってみれば、波をそこまで大きく作らなかったことですかね。というのも、練習はやはり波が大きくなってしまうものなんですよ。たとえばいつも跳べていなかったジャンプが急に跳べなくなってしまったり、逆にものすごくうまく跳べてしまったり、スケートって波がすごく大きいと思うんです。そういう波を極力小さくするように心掛けていたら、いつもベストなパフォーマンスができるのではないかと思っていた時期があって。それが頭の中にずっと残っていたのか、もちろん全然駄目だった試合もありますが、そういうのを頭の片隅に置いていたら意外と全部の試合でまぁまぁ良い演技ができたなと思える試合が多かったです」

 

――跳び方を変えてジャンプの種類が戻らないというお話もありましたが、それは来シーズンの開幕に向けて仕上げていっているのでしょうか。

 「今戻っていないのはアクセルとループなのですが、全日本が終わったタイミングから僕の中で良い熱が生まれたというか。昔から一緒に試合に出ていた子たちと全日本という大きな舞台で再会して、ものすごい演技を見せられて燃えるというか熱くなって、調子がみるみる上がってきてその状態をキープできているので、多分来シーズンには元の実力以上のジャンプになれるんじゃないかなと思っています。今の段階でそう思えているのは良い兆候だと思います」

 

――今シーズンで一番印象に残っている試合はなんですか。

 「全日本です。小学校の頃から一緒に試合に出続けてきた子とかが全日本には出ていました。そういう選手の中、上を見ると羽生選手(羽生結弦・ANA)とか宇野選手(宇野昌磨・トヨタ自動車)とかトップレベルの選手がいてそれも勉強になったんですけど、小さい頃から一緒に試合に出続けてきた子がここまで成長しているんだというのを肌で感じてそれがすごく熱に変わっています(どの選手が特に印象に残ったとかはありますか?)三宅星南(関西大学)とか、すごく、本当に上手になったなと思いましたし、森口澄士(木下アカデミー)とか、全日本では少し調子が悪かったのですが木科雄登(関西大学)とかも。その3選手は昔から結構仲が良くて。他にも影響された選手は沢山いて、明治大学で言うと大島光翔(政経1・立教新座)とかも昔から試合に出ていたのでみんなうまくなっていてものすごく影響されました」

 

――一番悔しかった試合はなんですか。

 「都民大会ですかね。都民大会は多分SP(ショートプログラム)全部ジャンプ失敗して締めすらしてなかった気がします(笑)」

 

――そうなってしまった理由などはありますか。

 「全日本の2、3週間くらい前の大会だったのですが、今だから言えますが燃え尽き症候群みたいな…(笑)。もう大舞台を前にどうしようみたいな感じだったんだと思います」

 

――昨シーズンより成長を感じた点はありますか。

 「二つあって。さっき言ったように気持ちの面でも成長しましたし、ジャンプという面でもやっとけがをしにくいジャンプを作れたかなという思いがあります。気持ちと直結する部分はあるのですが、やはり気持ちの面ではいい意味で熱が入らない練習ができるようになりました。ジャンプの面で言うと、力強さだけで跳ぶのではなく力強さの中にしなやかさであったり、加点につながるような要素を組み込みながらジャンプを組み立てていくことができるようになったところです(どのような加点の取り方が得意ですか?)比べるとまだまだなのですが、トランジションとGOEの要素の一つである流れるようなジャンプですかね。ただ上に上がるだけではなく流れるようなジャンプを意識して跳べるようになったというのと、トランジションが少しずつできるようになってきた感じかな。余裕ができました」

 

――逆に見つかった課題などはありますか。

 「やはり体力面とか。ものすごく体力強化はしてきたつもりでしたが全然足りなかったです。試合になった時の疲労感と練習の時の疲労感は全く違うのですが、そんな中でトップ選手たちはそういうのを計算して体力づくりをしているのではないかなと思わせられる演技を全日本ではたくさん見たので、そこが自分の課題なんじゃないかなと真っ先に思いました(疲労というのは肉体疲労のみ?)今お話したのは肉体疲労なのですが、精神疲労もあると思います。トップ選手はグランプリファイナル出場したりなどで休みのスパンが結構短いのですが、僕は1ヶ月半空いているのにも関わらず都民大会のような演技をしてしまうので、そういうところが切り替えが遅いなと思います」

 

――今シーズンから新しいプログラムでしたが、シーズン通して滑ってみていかがでしたか。

 「まずSPは自分に合わないなあと思って始めたのですが、シーズンが終わってみたら自分に合っていたなと思います。あとFS(フリースケーティング)は自分の大好きな曲で、大好きなパートを詰め込んで編集した思い入れのある音楽ではあるのですが、実際は音楽に負けていた部分があるのではと思います。野獣っぽい荒くれ感を表現できていなかったし、王子っぽい紳士さも表現し切れていなかったなと。やはりもう少しできたのではないかなと思ってしまいますね(それは来シーズンまでの課題ですか?)FSはもう変えようと思っているのでやらないのですが(笑)、明法オンアイスの場などで演技できることがあれば、美女と野獣をやろうかなと思っています」

 

――今シーズン応援し続けてくださったファンの方々にコメントをお願いします。

 「まず今シーズン応援してくれて本当にありがとうございます。今シーズンはジュニアの頃に比べるとジャンプの種類も少なくて、演技という面では見応えが少し薄かったかなと思いますが、昔から応援してくれている人と新しく応援してくれる人が応援してくれたおかげで、全日本までたどり着くことができました。また全日本で不甲斐ない演技をしたにも関わらず、ものすごい数のダイレクトメッセージを送ってくださったり、励ましのコメントやお手紙、プレゼントを連盟の方に送ってくださったり。自分の家にたくさん届きましたし、そういうあたたかい気持ちのおかげですごく落ち着いて演技ができましたし『来年も頑張ってください』の一言だけで今も頑張れているので、いつもいつも感謝の心でいっぱいです。ありがとうございます」

 

――ありがとうございました。

 

[向井瑠風]