
(32)シーズン後インタビュー 松井努夢
思いを込めた演技で氷上を彩り、見る者の心を躍らせてくれた選手たち。シーズンを通してそれぞれが味わった思いはさまざまである。新型コロナウイルスの影響にも負けず戦い抜いた今シーズン。その振り返りのインタビューをお届けする。
(この取材は1月31日に行われたものです)
第3回は松井努夢(政経2=関西)のインタビューです。
――髪の毛染めましたか?
「染めました。水色です」
――どのくらいの期間で染めるのですか。
「髪が伸びるのが早いから毎月切っているのですが、そのタイミングで。毎月その時の気分で入れています。やばいです、痛みます(笑)」
――今シーズンを振り返っていかがですか。
「前のシーズンよりはいい成績を残せたと思います。でも自分の中では全く満足していないし、去年よりは良かったけれど、でも駄目だったと思うし、やはり練習量が足りなかったのかなと思うところがあったし、この1年は先生が代わったことなどいろいろあって。新しい環境というか、新たな気持ちで競技していたという感じです。ただ気持ち的にもスケート的にも調子が上がってはいるから、このままもっと自分を追い詰めてしっかり成績に残せるようにもっと練習しなければいけないなと思いました」
――前と比べてどのような心境の変化があったのですか。
「置いていかれているなと改めて焦りました。やはり後輩もどんどん強い子が来るだろうし、1年生の光翔(大島光翔・政経1=立教新座)もとても上手いし、光翔がインカレにもメンバーで選ばれて、成績も全く違うし、そういったところで改めて『やばいな自分』って。今のままでは駄目だなと思ったり、この練習でいいのかなと思ったり。それはコーチを代えた時にも思ったし、コーチを代えたことは今のところ良かったなと思っていますが、せっかくコーチまで代えて心機一転しようとしていたからこのチャンスを逃さないように、ここから波に乗っていけたらいいかなと。そのためにももっと自分を追い詰めて練習していかないとなと思っています」
――今年のいつ頃からそう思っていたのですか。
「ずっと『まだまだやな』とか『駄目やなあ』とか思っていたのですが、強く思ったのは東日本(東日本選手権、以下東日本)が終わった時です。東インカレ(東日本学生選手権、以下、東インカレ)で一応自分の中で割とよくできて『あー波に乗っているなあ』と思ったけれど、東日本で落ちてしまった感じです。あと明大のメンバーの中でも一番下だったし、結果それでインカレ(日本学生氷上選手権大会、以下インカレ)も選ばれなくて。でも東日本が終わった時に、『あーこれインカレ選ばれないな』と思ったんです。その時に、『あーやばいな』って。インカレに出ることが目標だったのにそこで落ちてしまったから。『ブロック(東京選手権大会、以下ブロック)とか東インカレの成績が東日本で出せていたら行けていたのに』と悔しく思います。けれどその時はその時だし、どの試合でもそのくらいの成績を出せなかったら意味がないので、練習不足だったのだなと思いました。昨年度のシーズンよりは気持ちもコントロールができたかなと思うから、昨年度よりは完璧だったわけではないですが、モチベーションも保てていたかなと。でもやはり練習がもっと必要だと思います」
――その練習は質と量だとどちらでしょうか。
「量ですね。地元の岡山にいる時は、1日6時間くらい滑っていました。東京はリンクもたくさんあるけれどその分人もいるし、時間も限られています。最初東京に出てきた時は『こんなに練習が少ないんだ』と思いました。少ない時は1時間とかで、多くても2時間か3時間みたいな感じだったから、地元にいた時の方がもっと滑っていたし、高校生の時の練習の動画や試合の動画を見返しても、滑っている量が違うからキレが違っていて。スケート自体、技術自体はよくなっているかなと思ったけれど、滑りや勢いみたいなものはたくさん滑っていた時の方があったなと思いました」
――それは時間的に仕方ないのでしょうか。
「仕方ないと言えば仕方ないのですが、時間は作ろうと思えば作れるかなと。ただ、東伏見や千葉、新横浜とか行けるけれどその分時間もかかるので。でもそれくらいやらなければ勝てないなとは思います」
――逆に良かった点はありますか。
「気持ちのコントロールが前より少しずつですができるようになってきたことと、成績も不本意ですが上がってきていることです。でもやはり今の調子だったら、絶対に大学の間で自分の目標は成し遂げられないし。というのも、たくさん選手はいるからそんなにのんきに『少しずつ上に行けたらいいや』と思っていたらこれからも負けてしまうと思っています。でも別に下がっているというわけではないからまだいい。もっと勢いを上げていけたらいいかなと思います」
――大学での目標とは何ですか。
「まずは全日本とインカレです。まずはというか大きい目標です。(全日本は雰囲気が全く違いますよね)全日本は全く違います。日本代表の選手、国際大会やグランプリシリーズに出ていたりする選手でも全日本は全日本にしかない緊張感があるという話もよく聞くので。そうだろうなと思いながら、そこに自分も出たいなと思います。出たいです。頑張ります」
――今年アイスダンスを始めたきっかけは何でしたか。
「高校生の時くらいからずっと『アイスダンスを始めたら?』とか『背高いしアイスダンス向いていると思うよ』と言われたり誘われたりしていて、それで高校生の時にアイスダンスをしようかなとコーチに本気で相談したりしたこともありました。でもシングルがおろそかになるからと言ってずっとやってなくて。今回アイスダンスすることになったのは監督と話したというのもあるし、詩織ちゃん(岩永詩織・営3=明大中野八王子)がアイスダンスのパートナーを探していたというのもあってタイミングが重なって『やるか』となりました。でもあまりアイスダンスのことは聞かないでほしいです(笑)。あまり練習もコロナで厳しい状況で、あまり答えられないので(笑)。でもアイスダンスも来シーズンは全日本やインカレを目標にしています。今回インカレでアイスダンスはなくなってしまったので、その分も来シーズンは出られたらいいなと思っています」
――息は合っていますか。
「うーん、合っていると思います、恐らく(笑)。どうだろう、別に仲はとてもいいし何もないけれど、それぞれ課題があるという感じです。筋力だったり柔軟性だったり、練習量も全然足りないし。まだまだ試合も出られないような感じだからかなりやばいです。もっと頑張らなければいけないです」
――来年は3年生ですが就活など考えていらっしゃいますか。
「就活するという学年になるか分からないけれど、何も考えていないです。本当にどうしよう、何しようという感じです。(スケートは大学で辞められるのですか。)今のところは。3年とか4年になって何かの縁でスケート関係の仕事に就くことがあるかもしれないけれど、今のところは大学でスケートから離れるつもりです。したい仕事がパッと出てこないから、自分でも『大学を出たらどうするんだろう』という感じです。何するのかなあ(笑)。でも、サラリーマンは嫌ですね。そういうのは自分は向いていないと思っています。だから自分のわがままだけれど、全く違うことをしたいなとは思っていますね。でも最初は結局どこかに入ってサラリーマンをするんですかね。いいところには入りたいですよね、大手。先輩たちもみんないいところに入っているし。保険会社とか証券会社とか。でもまだ何するかも決まっていないしどうなるか分からないです。周りの話を聞いても、『大学生の時はこれやるって思っていたけど今は全く違うことしている』とか『美容系に興味はなかったけれどアパレルで働いている』という友達もいるし。自分は、美容系とか好きなのでありかなと思っています。でも今のところ何がしたいということは決まっていないです」
――オフシーズンはどのように過ごしていますか。
「練習、練習、練習です。練習しかすることはないです。あとは合宿とか。今のところは合宿のことは聞いてはいなくて、コロナもあるので分からないのですが、もしやるとしても数人で野辺山に行くくらいだと思います。野辺山と言ったらノービスの新人発掘合宿という、毎年夏に前のシーズンのノービスの試合の成績によって出られるか出られないかが決まる、だから出られたら有望な選手だという合宿があります。それはみんな割と行っているし、明大の合宿も毎年野辺山でやっているので。自分の今の樋口先生もよく野辺山に行っているんですよ。アイスダンスは樋口チームで週末に野辺山に行って練習したりしています。だからそういう練習は多いかもしれないです。長野に行って、東京に帰ってきて、みたいな。他の県外行ったりもするかもしれないです」
――趣味のカフェ巡りはいかがですか。
「友達とカフェ巡りします。1人でふらっと行くこともありますが、自分は行きたいなと思うところは誰かについてきてもらって、写真を撮ったり、撮ってもらったりしています。甘いものは好きだけど大好物というわけではなく、カフェ自体が好きです。映える写真を撮りたい、みたいな。インスタグラマーになりたいではないけれど、そういう感じです(笑)。写真撮るためにカフェ行ったらケーキを頼んで、飲み物は甘いのとか好きだから飲みますね。撮るだけ撮って食べないとか(笑)。友達にあげたりします(笑)」
――今年の明大フィギュア部門についてはいかがでしたか。
「まず、明大男子はみんなとても仲が良くて、お互い励まし合いながらライバル視もできるいい関係です。切磋琢磨(せっさたくま)という感じです。太一朗君(山隈太一朗・営3=芦屋国際)も先輩で光翔も後輩だけど変な上下関係みたいなのがなくて、みんなフレンドリーで気楽に話せる関係です。メンバーもとてもいいなと思うし、明大に入って良かったなと思います。明大の女子も仲良いと思います。伊吹ちゃん(佐藤伊吹・政経3=駒場学園)とかは練習場所も前のコーチも一緒だったから、助けてくれたりよく面倒を見てくれたりして。先輩にも恵まれたなと思います」
――インカレで堀義正選手(商2=新渡戸文化)の靴ひもが切れてしまった時補欠で呼ばれていましたよね。
「あの時呼ばれたのは、『今がお前の出番だ!』みたいに押されて『えええええ』みたいになって、とりあえず『大丈夫か!』と声を掛けに行きました。でもあれはかなり焦りましたね。最初は足痛めたのかなと思ったけれど、靴ひもが切れたって。義正もトラブル起きたらすぐレフェリーのところ行ってすぐに止めてもらわなければいけないのに行かなかったから、監督たちと見ていたけど、とても焦りました。でもあれは仕方ないと思います。靴ひもも数日前に換えたと言っていたし、本当に仕方なかったと思います。本人はすごく『ごめんなさい、ごめんなさい』と泣いて謝っていたけれど、本当に良かったと思う。『めっちゃ頑張ったと思うよ』と励ましたけれど、あれは仕方ないです。一つの経験ですよね」
――今シーズンを振り返ってファンの方へメッセージをお願いします。
「今シーズンは昨シーズンより成績を上げることができましたが、目標の全日本とインカレに出場することができなくてとても悔しかったです。来シーズンでは目標を達成できるよう頑張りたいと思っていますので、応援よろしくお願いします」
――来シーズンはどのような演技を予定していますか。
「シングルはSP(ショートプログラム)もFS(フリースケーティング)も曲を変えます。SPはボーカルが入っている曲です。それは自分が選びました。コーチと自分と振付の先生と提案しながら決めました。FSはクラシックな曲調です。誰でも知っているような有名な曲です。某有名な映画の曲です。有名な曲とヴァイオリン系の曲を組み合わせています。ヴァイオリン系の曲は今シーズンもある選手が使っている、普通に有名な選手が使っている曲です。SPは、普通に歌です。韓国のドラマの曲です。これは、Netflixで観ていたドラマが面白くて、有名かどうか分からないけれど知っている人は知っているかも。オープニングとエンディングがとても良くて、『え、いいじゃん!』となって(コーチに)言ったら、『いいんじゃない?』となりました。アイスダンスは、今はまだリズムダンスしか作っていないのですが、リズムダンスは、フリーダンスもそうですが、ワルツみたいなダンスに合うテンポの曲でないと滑りづらいのですが『ありがちじゃない曲がいいよね』と話していました。でも結局ありがちな曲になってしまいました(笑)。アイスダンスは『眠れる森の美女』です。振り付けも完成したけれどとても時間がかかります。1人でシングルの振り付けをするのと女の子と合わせながら振り付けするのはかかる時間も全く違うし覚えるのも大変だし。なんとか完成したのですが、全く慣れていないし曲をかけながら滑るのもできていないからこれから練習していくという感じです。練習していて『重い』とか言っています(笑)。毎回怒られます(笑)。『お前の筋力がないんだよ』と言われて『それはそうだ』となっています(笑)」
――来シーズン挑戦したいことはありますか。
「目標は4種類トリプル(ジャンプ)を入れることです。今サルコーとトーループは毎回入れていて、ループも入ったり入らなかったりですが、フリップも曲に入れたいなと思っています。一応跳べなくはないけど成功率が高くなくて曲に入れるほどの成功率でもないので、それをできるようにしたいです。でないと全日本に行けないしインカレも選ばれないしという感じです」
――来シーズンの目標を教えてください。
「全日本とインカレ出場、変わらずです」
――今シーズンを表す一言を「熟慮」にした理由は何ですか。
「今年は、改めて考える年でした。コーチが代わったり、いろんな意味で追い込まれている状況になったりで、改めていろんなことを考えた年だったからです」
――ありがとうございました。
[新村百華]
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