(31)シーズン後インタビュー 大島光翔

 思いを込めた演技で氷上を彩り、見る者の心を躍らせてくれた選手たち。シーズンを通してそれぞれが味わった思いはさまざまである。新型コロナウイルスの影響にも負けず戦い抜いた今シーズン。その振り返りのインタビューをお届けする。

(この取材は1月31日に行われたものです)


第2回は大島光翔(政経1=立教新座)のインタビューです。

 

――年始には日本学生氷上選手権(以下、インカレ)がありましたが、いかがでしたか。
  「大学の名前を背負って試合に出るため、大きな緊張とプレッシャーがありました。それでも一緒に滑る大学の先輩たちにメンタル面で助けていただき、心強い支えがあったおかげで最後まで気持ちよく滑れたかなと思います。団体として明大を表彰台に乗せるという目標があって、自分の滑走順が1番だったので、自分の演技次第で後に滑る先輩方の演技の内容にも関わってくると思ったので、ここはしっかり自分がいい演技をして先輩たちにつなげられるような演技ができたらなと思っていました」

 ――帯広での試合でしたが、いかがでしたか。
  「寒すぎて『まずいっ』といった感じでした。あれほど寒いリンクで滑ったのは久々で、練習している地元のリンクは0度くらいで、帯広のリンクはもっと寒くて一度転んでしまったら手の感覚がなくなってしまうくらいのところだったので、慣れていないところでの試合はやはり怖いなと思いました」

 

――インカレと冬季国民体育大会(以下、国体)で徐々に結果を出していますがどのように思いますか。

 「自分の中ではまだまだやれると思っているので、このまま止まらずに上に行きたいと思います」

 

――明大フィギュア部門の雰囲気はいかがですか。
  「とても楽しいです。みんないい人ばかりで、支えられて本当に楽しくやらせてもらっています。インカレのときは、男子4人で四六時中一緒にいたのではないかなと思います。ホテルにサウナがあったので、みんなでサウナに入ったり、食事も一緒にしたりして、ずっと一緒にいた気がします。女子の選手も含めてみんなで切磋琢磨(せっさたくま)して高いレベルで練習を積めていると思うので、そういう環境で言えば圧倒的に明治大学が一番いいと思います。たくさん刺激をもらっていい練習ができたかなと思います」

 

――ご自身はフィギュア部門の中でどんな位置付けの存在ですか。
  「先輩が本当にかっこいいので、自分は先輩に付いていっている感じです。いつかは胸を張って先輩だと言えるような先輩になりたいです」
 

――大学1年生としてのこの1年を振り返ってみていかがですか。
  「入学するまでは実感が湧かなくて、一貫校にいたので他の学校に通うのがとても新鮮でドキドキもありましたが、友達もたくさんできて先輩や同級生の仲間にもスポーツをやっている人たちがたくさんいるので、趣味や話も合って、楽しくてあっという間に過ぎた1年だったなと思います」

 

――今シーズンで一番印象に残っている試合はどの試合ですか。
 
 「今シーズンは全日本ジュニア選手権(以下、全日本ジュニア)で表彰台に乗れなかったことが自分の心残りです。いいコンディションで臨めていて、自分ならもっといい結果を残せたはずなのにという悔しさが大きかったです。競技人生で一番悔しい思いをした試合でしたが、そこからまた頑張ろうと思えました」

 

――悔しさとはどのように向き合いますか。
 「外には悔しさを見せないですし、悔しさを引きずるタイプでもないと思っていますが、自分は悔しいという感情をすごく持つ方ではあるので、試合が終わってひそかに燃えているパターンなのかなと思います」

――今シーズンの良かったところはありますか。
 「今シーズンの全日本選手権(以下、全日本)に出場できて、同年代の選手も上位に食い込んでいて、そういうのを見てすごいなと思って、やはり大舞台でいい演技をできる人がかっこいいなと思って、憧れではないですけど『かっこよくなりたいな』みたいに思って。目立ちたいので、そのためには結果を残さないといけないので、今後も注目してもらえるようにというのもあって、常に上に行きたいというモチベーションがあったシーズンだと思います」

――既に演技するだけでかっこいいと言われることがあると思いますが…。
 「そうですね、よく言われます(笑)。ですが、踊っているだけではもういけないので結果を残したいです。一希くん(友野一希・セントラルスポーツ)は、自分なんかよりも数十倍も踊ることができて数十倍スケートもジャンプもうまくて、それでいて全日本であの高いレベルの中で5位といういい成績を収めていて、僕のなりたい姿はこういうものなのかなという風に全日本で感じました」

――今シーズンの中で転換点を挙げるとしたらいつですか。
 「全日本ジュニアと全日本は自分にとって大きな転換点だったと思います。悔しい思いをしたのと、いつも練習しているメンバーが本番に強くてどれだけうまいのかを改めて実感して、試合で力を出せる人が本当に強いので、そういった意味では彼らの方が何十倍も強いなと感じたので、自分が恥ずかしくなったというか、負けたくない気持ちが強くなりました」

――どのように点数を伸ばしていきたいですか。
 「ジャンプももちろん大事ですが、スケーティングの点においても、スピンやステップは全体的に上位にいる選手たちよりも1段も2段も下なので、全てをレベルアップしていかないと勝てないと思っています。ジャンプだけではなくて、表現の部分においてもレベルアップしていきたいです」

――今シーズンは何が原動力になっていましたか。
 「今シーズンは全日本が地元の埼玉で開催されるのが自分の中ではすごく大きくて、そのために頑張ってきた1年という感じがあります。さいたまスーパーアリーナは、とても大きな会場ですし、地元だと普段練習しているリンクのメンバーや身内が見にこられるので、そういうところでかっこいい姿を見せて恩返ししたいなと思っていました。全日本ジュニアは絶対に表彰台という覚悟で臨んでいて、全日本に出たいというのは去年までの目標で、全日本に出られて当たり前くらいのレベルにいなければいけないと思っていました。全日本でいい演技をすることを目標の一つにしていました」

――試合を重ねていく中で気持ちの変化などはありましたか。
 「ジュニアとして最後のシーズンになって、周りの子たちは全員年下で、自分も年を取ったなというか、どちらかというと自分は先輩方によくしてもらって生きてきた人なので、いざ後輩だけとなると、どれだけ先輩が大変だったか分かりましたし、そういう部分で自分の気持ちの面で成長できたと思います。先輩方は優しい方が多いので、自分たちは上下関係が厳しい中で育っていなくて、先輩がかわいがってくれた分、自分たちも後輩をかわいがる気になるというか、かわいがりたくなるのはあって、これはスケート界特有のものだと思っていて、スケートをやっていてよかったなと思います」

――今シーズンで成長したところはどこだと思いますか。
 「成長したというよりも今シーズンは停滞していたという言葉の方が自分的には合っていると思っていて、これといって成長したとはっきり言えるものがなかったので、成長したところは無かったというのが答えになるかなと思います。今シーズンの全日本ジュニア、全日本までには絶対に4回転を完成させたいと思って練習していたので、それがクリアできなかったのは心残りです。これからは4回転がないと試合では戦えないので、まず4回転を習得してみんなと戦える位置までいかないとやっていても面白くないと思うので、そこは最低限の目標だと思っています」

――4回転のジャンプの中でも、ルッツから始めたのはなぜですか。
  「自分が一番得意なのがルッツで、得意なものからやっていこうと思って、苦手なことはとことんやらないで逃げ続けてきたので、4回転も得意なものから習得することにして、珍しいですがルッツからやっています」


――お客さんを魅了する演技が印象的ですが、その心構えを貫ける理由はありますか。
 「お客さんに見ていただいている試合は来ていただいたお客さんが楽しめる演技ができればいいなと心掛けています。自分もスケートをやっていて、試合やアイスショーを何回も見ていて、人の心に残る演技とノーミスする演技は別物だと思うようになりました。父親が魅せるのがすごく上手な人で、今はもうやっていないですがアイスショーで全国を回っていて、自分も見にいっていたので、父親の影響もあって自分はお客さんを魅了することができるスケーターになりたいと思いました」
 

――ジュニア時代を振り返ってみていかがですか。

 「ジュニア1年目から何年間か落ちこぼれみたいな成績だったので、それを見てみたら本当によくここまできたな、頑張ったのではないかなと思います。中学2年生からジュニアをやっていて、中学2年生の東日本ジュニア選手権(以下、東日本ジュニア)で予選落ちを経験して、その時の思い出は今でも頭に残っていて、でもそれがあったおかげで強くなれたと思います」

 ――その時のお話を聞かせてください。
  「ジュニアの1個下のカテゴリーのノービスでやっていたときは一度も予選落ちを経験したことがなく、どちらかというと上の方で戦えていたので、自分が予選落ちをするのは本当に思ってもみなかったことでした。ジュニアに上がって高校生や大学生の人たちと戦うようになって、改めて世界の広さを知ったというか、まだまだだなと感じました。中学2年生の東日本ジュニアで僕がぎりぎりで落ちてしまって、そのときに2個上で通過したのが鍵山優真(星槎国際横浜)で、ノービスのころは同じレベルで戦っていた優真が頭一つ抜けて、そこからは差が開く一方でした。周りの選手が先に活躍するという経験を自分は多くしてきて、同い年の壷井達也(神戸大)が全日本ジュニアで優勝したり、1個下の佐藤駿(埼玉栄)がジュニアグランプリファイナルで優勝したり、同年代の活躍を見て必死にしがみついていた感じでした。ようやく去年追い付いたと思ったら今年も抜かれていて、彼らや同年代の選手の強さを痛感しています。でも同時に自分も最低限ですが付いていけているとは思っているので、早く抜かしたいと思います」
 

――予選落ちを経験した後はいかがでしたか。

 「中学3年、高校1年のときも全然いい成績を残せていなくて、全日本ジュニアでSP(ショートプログラム)を通過できるかできないか、全日本ジュニアでも20番代か10何番くらいが自分の居場所というか定位置みたいになってしまっていたので、今では5番にいられるのが本当に自分でも信じられなくて、頑張れば上に行けるのだなという風に思いました」

 

――成績が伸びたのはいつごろですか。

 「見たら面白いのではないかというくらい高校2年の後半あたりから成績がぐんと伸びています。高2の春に自分が練習しているリンクに佐藤駿が入ってきて、そこからがらりと成績が変わったので、彼の存在は自分の中で本当に大きいです。彼が来る前は3回転ジャンプを全種類は跳べていなかったくらいで、それで自分のゴールというのを、決めつけていたわけではないのですが、自分の中のイメージで勝手に3回転ジャンプを全種類跳ぶのがゴールみたいになっていたところがあって。でも彼が入ってきてから、彼は3回転ジャンプだけではなく4回転ジャンプもたくさん跳ぶし『違うな』という風にそこで思って、その日をきっかけに高いレベルを目指して練習するようになりました。今は3回転ジャンプでは全く納得できていませんし、3回転半、4回転をやっていかなければいけないと身をもって実感しました。上手な子とリンクで一緒になったことがそれまでなかったので、どんな練習をしているのかも分からなくて、彼ほどうまい人が自分よりも練習していて、それなら自分はもっと練習しなければいけないなとそのとき思いました。(リンクでお話することはありますか)彼とはとても仲がいいので、ずっと一緒にいる感じです。彼はとても優しいので、僕がどんなに変な絡みをしてもにこにこしながら聞いてくれています(笑)」

 

――練習の中で、先生から掛けられた言葉で特に印象に残っている言葉はありますか。

 「普段の練習では技術的なアドバイスをたくさんしてくるわけでもなく、どちらかというと自分が練習しているのを見守ってくれているので、そういう意味では自分は誰よりも自由に練習ができていると思っています。言動ではないですが、そうやって毎日毎日練習を見守ってくれているのが自分の中ではかなりありがたいことだなと思っています。厳しく言うタイプではなくて、本当に優しくずっと見守ってくれているので、それに助けられる部分もあります」

 

――最後の全日本ジュニアや初めてのインカレなど、特別なシーズンだったと思います。今シーズンの感想をお願いします。
  「あっという間に過ぎたシーズンでした。喜怒哀楽全ての感情が交錯したシーズンで、気持ち的に大変なときもありました。大学に入学してからの1シーズン、本当にあっという間に終わってしまって、これがあと何年かしかないと思ったときに、自分の中で時間がないなと焦り始めたシーズンでもあるので、一日一日を大事にしていかないといけない、来シーズンはもっと突き詰めていかなければいけないと実感しました」

 

――来シーズンはシニアですが、率直にどんなことを思っていますか。

 「シニアになってもこれといって変わることはないと思うので、高いレベルで戦えるように、まずは4回転の習得を一番に考えてやっていかなければいけないなと思っています」

 

――今シーズンを終えて、ファンの方に向けてメッセージをお願いします。

 「自分の中では今シーズンはいいところなしの1年だったと思っていて、去年まではとても成長できていたので、今シーズンはどちらかというと停滞してしまった感じで、ファンの皆さんや応援してくださっている皆さんには、正直がっかりされた方の方が多いと思います。来シーズンは今年の分までレベルアップした自分が見せられるように、なおかつ皆さんが楽しめる演技を目指していきたいと思っているので、これからも応援よろしくお願いします」

 

――今シーズンを一言で表すと、どんなシーズンと言うことができますか。

 「七転八起です。正直、今シーズンはうまくいかないことが多かった中で、シーズン最後の国体で自分の今までの人生で一番いい演技ができたかなと思うので、めげずに頑張ってきたのが国体でうまく出せたのが自分の中でよかったなと思っているので、それを踏まえて七転八起を選びました」


 ――来シーズンに向けての意気込みをお願いします。
  「来シーズンはシニア1年目で、もう結果を残さないと自分が引退するまであと少しになってきたので、やはり結果を残していかないといけない、結果を求めて勝負していかないといけないと思っています。いつまでも中堅ではいられないと思っているので、全日本で8位以内という具体的な目標に向かって全力で頑張りたいです」
 

――ありがとうございました。

 

[守屋沙弥香]