
(83)箱根駅伝直前インタビュー(番外編)④/園原健弘総合監督
シード落ちの悔しさから1年。速さだけではない、勝ち切る強さを追い求めここまでやってきた。箱根駅伝予選会(以下、予選会)では圧巻のトップ通過。続く全日本大学駅伝(以下、全日本)では7位に入り、シード権を獲得するなどその実力は確かだ。昨年度の雪辱を果たし、強い明大を取り戻すために。思いを襷に込め、箱根路を駆け抜ける。
第4回は園原健弘総合監督のインタビューです。(この取材は12月12日に行われたものです)
――現在のチームの状況はいかがですか。
「いいと思います。少し懸念していた櫛田(佳希・政経3=学校法人石川)や昨年度出られなかった金橋(佳佑・政経4=札幌山の手)が16人のエントリーの中に入ってきました。ほぼベストメンバーが組めたという状況だと思います。今の段階では順調ですが、昨年度はここから金橋がケガしているので、残り3週間で何があるかまだ分からないです。最後まで気を引き締めて頑張るところですね」
――練習は例年通り進めていますか。
「練習は例年通りです。鈴木(聖人・政経4=水城)も今年度初めからずっと言っているように勝負強さということが大事です。やはりトラックの良い記録だけあっても同じ土俵で戦ってなんぼです。そういった意味で今年度はロードの方の走り込みの距離や時間を長くしました。ロードにもしっかり対応できる力を付けるようなトレーニング内容に変化をしています」
――今のところ予選会と全日本と続き、結果もおおむね目標通りということできています。
「駅伝は昨年度も自信を持って臨んで、流れが悪くなると昨年度のような結果になってしまいます。不安が100%ないわけではないですが、失敗をしないような準備をしっかりしたり、組み立てをしっかりして臨むということが大事だと思います。今はよその大学の状況を見ても、どこがシード落ちしてもおかしくないし、どこが優勝してもおかしくないくらい実力が拮抗(きっこう)しています。我々にもチャンスはあるし、失敗してしまうと昨年度みたいな結果にもなると思います。危機感と楽観的な部分、両方持ちながら臨むことが大事だと思います」
――明大が陸上部ではなく、競走部という名前にしている理由は何ですか。
「明大競走部の歴史は、今年度で115年ぐらいになります。115年前創部した時には陸上競技という言葉がありませんでした。それで競走という言葉を使っています。競走部を名乗っているのは早稲田と慶應と明治だけです。ここまでの歴史の中で陸上競技部に変えることもできました。しかし、我々は古い歴史を持って脈々とつないでいるということを誇りに感じていたい。先人たちがつくり上げてくれた栄光の歴史をまた復活させたいという思いが強く残っています。今の我々があるのは、現在のチームのみんなが頑張っているだけではなく、過去からの積み上げ、それが今現在になっているという思いを根強く持っています。過去の中には、うまくいくときばかりではないですし、もう戦火で箱根駅伝が中止になったり。競走部自体も部員が集まらなかったり、内部分裂を起こしたり。いろんなドラマがありました。そういうことを乗り越えた先輩たちのご苦労というか、いろんな困難はあったと思いますが、それを乗り越えてきたというのが競走部という名前にあります。コロナ禍もそうですが、大変な事態があっても、過去の先人ももっと大変なことを乗り越えてきたわけです。競走部という名前から勇気をもらうし、先輩たちも頑張ってきたのだから我々ももっと頑張れるはずだという力になっている言葉でもある。それをこの後もずっと残していきたいです」
――陸上界を取り巻く状況も大きく変わっていますよね。
「そうですね。ここ2、3年で大きく変わってきたのは、大学スポーツのあり方自体も非常に問われています。大学スポーツだけでなく、今年度オリンピックを開いたこともあって、スポーツがどうあるべきか、大学スポーツがどうあるべきかというのは非常に我々も言われていました。『コロナ禍で教育より優先して体育会活動が先行して解除されるのは何でだ』というようなお声も非常に頂いたりしました。そういった中で、何で俺は競走部に入って競技をやっているんだということをそれぞれ真剣に考えたと思います。そうするといろんな価値観の中から俺は陸上を選んでいるというような見方になってくるともっと頑張れると思います。それから大学は勉強するところです。ぜひ皆さんにお伝えしたいのはアスリートとしても頑張っていますが、学生としても彼らはすごく頑張っています。その両方を頑張っている彼らをぜひ応援してほしいです」
――今取り巻く課題というのは。
「課題はやはり箱根駅伝など大学駅伝で頂点に立つというのを目標としているので、そこに近づくための課題です。STAFF面の強化やフィジカル、メディカルのところのサポートが非常に少ないので、そこのところをもっとしっかりしないと。強くなるのと故障するのは紙一重のところなので。やはり故障をさせないチームづくり、それから故障から素早く復帰させるチームづくり。そこの体制を早めにつくりたいと思います」
――関東学生対校選手権での1部最速復帰なども含めて濃い1年でした。
「私がチームに求めることは、交流会や父母会の皆さんもそうだと思いますが、人生は思うようにいかないことが多いわけです。やはり山あり谷ありで、苦境に陥ってもうまくいかないときにこそ態度が問われるから、それを人のせいにしたり環境のせいにしたり、周りのせいにしたら、応援してくれる人が応援してくれなくなってしまう。そんな逃げてばかりの人生だと成功はつかめないから。やはりそこをしっかり向き合って、これからも失敗があるとは思いますが、失敗したことは挑戦していることだから。だからそういう強さを彼らは身に付けているし、佑樹監督(山本駅伝監督)もそういうところをきちんと指導してくれるから、とてもいいチームだと思います。これからも、凸凹のないように頑張るつもりですが、ぜひそんな思いで頑張っているということを、長い歴史の中から学んだし、どんな困難があっても負けないで頑張ります」
――ありがとうございました。
[金内英大]
園原総合監督へのインタビュー記事は12月21日発行の明大スポーツ第516号(箱根駅伝特集号)にも掲載されています。ぜひご覧ください。
第98回箱根駅伝まで、あと14日。
関連記事
RELATED ENTRIES