(82)箱根駅伝直前インタビュー(番外編)③/植田雅弘主務

2021.12.19

 シード落ちの悔しさから1年。速さだけではない、勝ち切る強さを追い求めここまでやってきた。箱根駅伝予選会(以下、予選会)では圧巻のトップ通過。続く全日本大学駅伝(以下、全日本)では7位に入り、シード権を獲得するなどその実力は確かだ。昨年度の雪辱を果たし、強い明大を取り戻すために。思いを襷に込め、箱根路を駆け抜ける。

 

 第3回は明大競走部を陰で支える植田雅弘主務(理工4=愛知県私立愛知)のインタビューです。(この取材は12月7日に電話で行われたものです)

 

――マネジャーになったきっかけは何ですか。

 「3年生に上がる前に学年の中から1人マネジャーを出すという監督の方針がありました。僕は1、2年次はケガで選手として結果が出せなかったので、マネジャーになって、違う形で頑張れたらと思ってなりました」

――選手としても主務としても頑張るという選択は、どういった経緯でされたのですか。

 「主務になる時に、まだ走りたいという自分のわがままな気持ちがありまして。その気持ちを山本佑樹駅伝監督やチームメートが尊重してくれて、主務をやりながら走らせてもらうという形になりましたね。本当に周りに認めてもらえて、サポートしてもらいながらできました」

 

――両立はどのようにしていたのですか。

 「マネジャーは練習中、選手のタイムを取ったり、走っているところに水を渡したりするのですが、その仕事は他のマネジャーに任せて自分の練習に集中させてもらっていました。その分、事務的なことや練習以外の時間にできる仕事をしていました」

 

――今までの主務とは違うやり方だったのですか。

 「そうですね。今まで主務と選手を両立するという人はあまりいなかったので、変わったやり方をしていたかなと思います」

 

――他のマネジャーの方にも支えてもらったというお話でしたが、今年度のマネジャーの働きはいかがでしたか。

 「本当に今年度のマネジャーには助けられたというか、本来は僕が中心になってやっていかなくてはいけない仕事を他のマネジャーに任せたところもありました。みんな頼れる存在だったので本当に感謝しています」

 

――両立の中で大変だったことはありますか。

 「選手をやっていなければ練習時間も練習以外の時間もマネジャーの仕事ができるのが、両立しているとその時間が半分になってしまうので、時間的な制約が大きかったです。また、体力的にもやはり練習すると疲れてしまうので、そこから仕事に取り掛かるのは少し大変でした」

 

――選手としての目標は何でしたか。

 「やはり選手として走っている以上、箱根駅伝(以下、箱根)に出ることを目標にしていました」

 

――11月のMARCH対抗戦も箱根を見据えて出場したのですか。

 「MARCH対抗戦でいい結果を出すことも箱根のメンバーに入るには大事なポイントだったので、しっかり自分をアピールできればいいなと思って臨みました。レースの結果としては自己ベストも出ませんでしたし、いいアピールはできなかったのですが、最後まで諦めずに前を追って走れたのは本当に達成感もありましたし、良かったと思っています」

 

――主務と選手を両立したという経験は自身にとって大きいですか。

 「そうですね。両立する中で自己ベストも出せましたし、結果が出せたことは一つの自信になりましたね」

 

――サポートする立場を経験して得たものは何ですか。

 「合宿の準備や取材のやりとりなどの中で、選手が知らないところでも支えてくれている人たちがいることを主務になって実感できました。なので、走る時には感謝の気持ちを伝える走りや、周りが支えて良かったなと思えるような走りをしたいと考えるようになりました」

 

――植田主務が箱根で注目している選手はいますか。

 「特に注目しているといいますか、応援している選手の1人は4年生の橋本大輝(営4=須磨学園)です。彼は一般生で、最初はそこまで(速い)タイムを持っていませんでした。なので、1、2年生の時は自分と一緒に同じ練習をすることが多かったのですが、彼は本当に努力して、今は主力と呼ばれるようなポジションまで実力を付けています。一緒に下級生の時に苦しんだからこそ、やはり最後の箱根で輝いてほしいという気持ちがありますね」

 

――箱根当日は運営管理車に乗られるのですか。

 「はい、乗る予定です。今まで同じご飯を食べて、同じ練習をして過ごしてきた選手の晴れ舞台を近くで応援できることは、本当にうれしいです」

 

――今までを振り返っていかがですか。

 「4年間うまくいかないことや、悔しいことの方が多かったのですが、それでも箱根に出るという目標を曲げずにここまでやってこられたのは本当に良かったと思いますし、達成感を感じています」

 

――ありがとうございました。

 

[覺前日向子]

 

植田主務の記事は12月21日発行の明大スポーツ第516号(箱根駅伝特集号)にも掲載されています。ぜひご覧ください。

 

第98回箱根駅伝まであと、14日。