(81)「(早稲田は)永遠のライバル」神鳥裕之監督 明早戦事前インタビュー

2021.12.01

 明早戦まで残り4日。今回は今年6月より明大ラグビー部の監督に就任した神鳥裕之監督(平9営卒)のインタビューをお送りする。監督に就任しての思いや明早戦での思い出について振り返っていただいた。(この取材は11月12日に行いました)

 

――これまでの監督業振り返っていかがですか。

 「長いようであっという間です。環境の変化、大学ラグビーの生活、リズムに適応してきたと感じています。楽しさを日々のこの生活の中でタイムリーに実感することはなく、どちらかというと難しさが多いです。明治大学ラグビー部という注目されたチームにいることによる、特有の注目度もありますし、日々学生と向き合うことで学生たちに物事を伝えるときに、いろいろ創意工夫したりするような時間がとにかく毎日毎日が刺激で、やりがいにつながっています」

 

――就任時におっしゃっていた自主性の浸透度はいかがでしょうか。

 「大学ラグビーで他のチームをあまり見たことはないですが、明治の選手は非常に成熟していると感じています。僕の価値観だけではなく、ラグビーのコーチたちも同じような価値観を持っています。今も学生スタッフが帝京大戦のレビューをしていますし、この前の試合もレビューや選手たちにプレゼンをさせました。選手たちにいろいろ考えさせることを僕だけでなくコーチ陣も考えています。浸透しているかどうかを感じているのは選手たちですが、我々としては仕掛けはやってきていると思います」

 

――チームの完成度はいかがでしょうか。

 「まだまだ伸びると思います。まだ70、80%くらいなので、残り20、30%レベルアップできると思います。当然今の能力で満足している選手もいないですし、いい形で向かってきているのかなと思います」

 

――対抗戦最初の3試合の精度はどう感じていましたか。

 「たしかにパフォーマンスに関しては満足していませんでした。ただそうなるべくした取り組みでもありました、ネガティブな意味ではなく、ゲームに向けての完全なる準備をしていたわけではなく、その先を見据えたトレーニングをしていました。相手の分析を細かくするわけではなく、試合に向けてのコンディジョン管理をしたわけではなく、シーズンの終盤にターゲットを置いた強化トレーニングをしていたので、チームの完成度の準備がないまま試合に向かっていました。そういった状況の中で、結果に結び付かないのは必然なことですが、個人的にはもう少しやれるかなと思っていました。そこのギャップに関しては僕も初めてのシーズンでしたので、多少の不安もなかったかというと嘘になります。ここはコーチ陣ですよね、長く明治に関わっている2人のコーチ陣の存在は大きかったです。こういう風なパフォーマンスになることも想定していて、レポート、報告をしてもらえてありがたかったです。コーチ陣とのコミュニケーション、価値観を分かり合える時間にもなったとも思います」

 

――目指すチーム像を教えてください。

 「ラグビーのフィロソフィーではないですが、ひたむきに一人一人が与えられた時間の中でベストを尽くし切る、ボールを持っている時間も持っていない時間も、スイッチオンして戦いたいです。ボールを持っていない時間も多いので、立ち上がるまでの時間、ボールの周辺だけでなく遠くにいる人間の動き出し、次の準備を予測して早く立ち上がってセットする。そういった小さい努力の積み重ねが、ありたいラグビー、クイックテンポ、強いスクラム、相手のディフェンスを置き去りにします。そういった細かいことがラグビーにつながると思っています」

 

――思い入れのある明早戦はありますか。

 「自分が出ていた試合もそうですし、雪の明早戦は好きですね。あの年は僕がラグビーを始めた年でした。ラグビーを始めた年に初めて見た明早戦だったので、テレビにかじりついて見たことも印象的です。また初めて生で見たことも印象です。トライがなかった試合で、高校3年生の時に受験に明治で来て、チケットをもらってその試合を見ました。ペナルティーゴールだけの試合で、そこで生での国立の迫力は覚えています」

 

――早大はどういった存在でしょうか。

 「やはり特別なライバルじゃないですか。それ以上でもそれ以下でもないです。この二つが強くないと、大学ラグビー盛り上がらないでしょうというのが個人的な思いです。いろいろなチームが強化して、せめぎ合う面白さはありますが、その中でも明治と早稲田が中心にいる、そういったチームでいたいです。早稲田のことはコントロールできませんので、我々明治はそういった思いです」

 

――今と昔の早大の違いを感じていますか。

 「当然変わってはきています。選手の質もそうですし、洗練されてきている感じがします。昔はもっと明治がエリート集団で、がつがつ縦に行って、早稲田は一般で入ってきた人を受け入れながらひたすら努力して横に展開する。チームスタイルが全く違う両校でしたが、いまは極端なラグビースタイルの違いはないと思います。早稲田も以前ほど一般学生が出ることは減り、名前の売れている選手が増えてきた印象です。お互いのコントラストは昔ほどはなくなってしまいましたが、大学同士のぶつかり合いや周りの皆さんの期待や盛り上がりのおかげで選手たちがパワーみなぎって、メンタル的な部分で、お互い接戦になっていると思います」

 

――注目選手はいらっしゃいますか。

 「やはりキャプテンの長田くん。これまでも彼の存在感は感じましたし、また経験値のある河瀬くん、1年生のスクラムハーフの宮尾くん、佐藤くんも元気がよくて、躍動している選手だと思います。ラグビーでよくいう背骨と呼ばれる、センターラインがしっかりしています」

 

――意気込みをお願いします。

 「やはり永遠のライバルです。明治のOBは明早戦に勝ったか負けたかが卒業後も話題になります。みんなで確認をするくらい肝となるゲームなので、そこに勝つことでその先続く大学選手権に大きな自信や勢いを与えてくれることは間違いないのです。必ず勝利して対抗戦3連覇はもちろんですが、大学選手権優勝に向けた弾みをつけたいです。4年生たちが何10年後にあの年勝った代だよねと言えるような試合にしたいです」

 

――ありがとうございました。

 

[田中佑太]

 

◆神鳥 裕之(かみとり・ひろゆき)平9営卒

 2013年度より、リコーブラックラムズの監督に就任し8年間指揮を執る。2021年6月1日より明大ラグビー部の監督に就任。大学時代にはナンバーエイトとして活躍し、大学1、3、4年次に全国大学選手権優勝に貢献した。監督に就任して驚いたことは全体ミーティング。「学生93人の圧がすごかったです(笑)」